第14話 試合3 準決勝
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準決勝。
オレとトーマスは向かい合う。フェイスオフだ。
入団試験では頼りにしていた。騎士にならなければいけない理由も知っている。
立派な男だと尊敬もしている。
だからこそ、ここで超える。
「負けねえぞ」
トーマスの刺すような見下ろす眼を、正面から受け止める。相変わらず、デカい身体だ。
「オレが勝つ」
眼で射殺すつもりで決意をぶつける。
「両者、所定の位置へ」
オレとトーマスは振り返り、一歩ずつ進む。十メートルの距離を空けて向き直る。
表情を崩さず、大地を踏み締めるように立っている。その姿からは、地面そのものと繋がっているような、揺るぎない自信が感じられる。
奴の得物は大柄のメイス。土魔法使いは打撃重視らしい。
「準備はいいな・・・始め!!!」
コンラッド教官の合図で、同時に魔力を拡張する。
まずはエーテルの奪り合い。奴の魔力を広範囲に感知するが・・・薄い。
魔力操作はオレに分がある。
前面に魔力を集中させ、奴の背後のエーテルまで支配した。
「よし」
奪られたことを察知するや否や、トーマスは舌打ちをしながら岩壁を生成した。
直ぐに守りを固めることは賢明だな。
直ぐに魔法を使うことでエーテルを消費し切り戻ってくるエーテルを再度支配して足りない分を補う算段らしい。
ならば。
早速切り札を使ってしまおう。
魔力を岩壁の向こうへ集中させ始めたその時、真下に魔力を感知した。
これは無視できない。
急いで前方へ飛び込み、その場から離脱する。その瞬間、後方で何かが大地を突き破った音がした。危なかった。
集中する時間は無さそうだ。
直ぐに発動できる魔法をと、オレはトーマスの周囲の地面を凍らせ走り出す。
次いで左手を振り翳す。瞬間、冷たい霧が立ち上り氷剣が手に現れる。
先手を取るべくオレは直進する。目の前に生成した氷の台を使い岩壁を飛び越え、上からの攻撃を狙う。
同じタイミングで岩壁が勢いよく粉砕され、メイスが顔を出す。
目の前にオレがいないことに気付いたトーマスは、眼だけで周囲を見回したあと上を見上げた。
「オラァァ!!」
脳天目掛け大上段から剣を振り抜く。鋭い冷気が剣から漏れ出し、空気を切り裂く音が耳に届く。
だが、奴は冷静だった。
メイスを氷の刃と交差するように受け止める。その瞬間鈍い衝撃が腕を伝い、剣を通して全身に広がる。
「さすがに重いな・・・!」
剣を引き戻し、奴の胸元を蹴飛ばしてバック転で距離を取る。だが、トーマスはその隙を逃さない。
「逃がすかよ!」
今度はトーマスが、メイスを振り下ろす。
それを右に避けると、鈍い音と共に地面が抉れた。
すかさず振り上げてきたメイスは、岩塊を纏っていた。
一撃でも貰ったらやられる。
縦横無尽に振り回されるメイスを紙一重で回避し続ける。
攻め終わりを狙うが、トーマスの体力は尽きる気配がなく、避け続けるのはそろそろ限界だ。反撃に出るしかない。
「いい加減食らいやがれ!」
「上等だ!」
真上からの重撃に、全力で剣を振り上げ迎え撃つ。
そして当たった瞬間に少しだけ手首の力を抜く。岩鉄の塊が氷の刃を滑るように逸れてゆく。
そのまま、氷剣を振り抜く。
氷剣は、狙い違わずトーマスの顔面に吸い込まれ、無数の小さな氷片がオレとトーマスの目の前に舞い上がった。
斜めに斬り上げた剣は赤く染まり、トーマスの顔から鮮血が舞う。
確実に勝利がオレに傾いた。
だがトーマスは諦めなかった。
勢いのまま後ろに回り込み止めを刺そうとするも、見事な回し蹴りを頭に受け無様に吹っ飛ばされた。
何とか立ち上がるものの、視界がふら付く。
それはトーマスも同じで、激痛に顔を歪めている。
一瞬の静寂の後、オレとトーマスは同時に動いた。
明らかに集中を欠いたトーマスは、巨大なメイスを手に全力で突進を仕掛ける。
「ウオオオオッ!!」
――トーマス、氷魔法使いにそれは悪手だ。
魔法を発動し、奴の足元を凍らせる。
滑って勢いよく転倒したトーマスは、自らの武器に肩を打ち付ける。
痛みを堪え、立ち上がろうとするトーマスを前に、オレは氷剣を振り抜く。
剣先を彼の喉元に突きつけ、静かに言い放った。
「勝負ありだ」
トーマスは息を荒くしながらも、苦笑いを浮かべる。
「お前、強ぇな……参ったよ」
コンラッド教官の声が響く。
「勝者、ルーカス・フール!」
周りの歓声が耳をつんざく中、オレは剣を捨て手を差し伸べる。
「いい勝負だったな」
トーマスは少し照れくさそうにそれを掴んだ。
「楽しかったぜ」
「ああ、オレもだ」
「二人とも、お疲れ。いい勝負だったよ」
ロイと水魔法の教官が来てくれ、手当てをしてくれる。ロイが大きな水筒を開けるとフヨフヨと浮いてきてトーマスの顔を包む。
すると、トーマスの顔の傷が、みるみるうちに治っていく。
「ちょっと苦しいけど、すぐ終わるから我慢してね」
顔を水で覆われ、苦しそうにするトーマスが面白かった。
互いに笑顔を見せながら改めて握手を交わし、試合場から離れてそれぞれの属性の所へ戻る。
「お疲れ様。いい戦いだったじゃない」
「ありがとう。一つ違えば負けていたけどな」
次は、決勝だ。
ここまで来たら優勝したいものだ。




