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氷魔法の弓騎士 ~パン屋の息子は騎士になる~  作者: もっちゃれら
第一章 訓練生編
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第10話 初授業3

ついに氷魔法の番が来た。

オレは、この属性が騎士としての活躍にしっかり貢献してくれるモノであることを願いながら、コンラッド教官の声に耳を傾けた。


「氷魔法は、まあ言ってしまえば土と同じ()()だな。土よりは攻撃的な属性と言ってもいいかもしれん」


曰く、氷魔法は魔力を冷却し、空気中の()()と共に氷を生成する。

魔法で生成した氷は通常の氷と違い強度が高く、また規模によっては生成するときに周囲の気温を下げることからより溶けにくくなる。

ただし、氷魔法は高い強度を持つとはいえ物体としての氷を生成するに過ぎないので、一度生成すれば魔力で操るなどはできない。

戦闘においては、即席で武器や防具を生成する、広範囲の地面を凍らせる、気温を大きく下げて氷魔法の持続時間を延長するなど、攻守において多彩であり、非常に強力な属性である。


「・・・であるから、氷魔法は非常に強力で使い勝手のいい属性なんだ。しかし、一つ欠点がある。高温に弱いことだ。当たり前だが溶けてしまう。例えば、この大陸の南の方なんかはこの地域よりも温暖な気候なんだ。だから単純に氷魔法の持続時間が短くなり、持続させようと普段よりも冷やせば魔力の燃費も悪くなる。といった感じでほかの属性よりも一長一短な印象だな。ただ強力なのは間違いない、辺り一面凍らせる程の適性者がいたなんて伝説もあるしな。戦いでは近接戦闘、遠距離攻撃に支援と、適宜必要な役割を担ってもらっている。」


思っていたより扱いが難しそうな印象だ。生かすも殺すも使い手次第ってところか・・・。

ならば使い熟すまでだ!騎士になるために必要なことは何でもやってやるさ!



「最後に、水魔法と雷魔法だな」



そうだ、その二つがあった。

あの二人は・・・いた。紫髪は一番右列一番後ろ。碧髪の男はオレの左後ろだ。

あ、碧髪と目が合ってしまった。


「よろしく」


さわやかな笑顔で頷くように挨拶してきた。


「ああ、よろしくな。ルーカスだ」


「僕はロイ」


全体的に短めの碧髪で、前髪の毛先が眉に少しかかっている。

ラウンドした眉と、丸く優しい目元。

鼻は少し低く小さい。

口も小さく、女性的な印象を与える。

体格も小柄で、癒しと治癒をもたらす水魔法使い然とした雰囲気だ。


上体を捻り後ろを向き、右手で握手する。

思っていたより小柄な奴だ。

流れでトーマスとユーゴとも握手を交わしていた。


曰く、雷魔法は魔力によって電気を生み出す魔法である。

電気の速度は他属性の魔法と一線を画し、発動させればほぼ必中である。

ただし、一度発動させるとその場で放電しすぐに消えてしまうため持続性はなく、放電の方向を完全に制御することはできない為、味方が傍にいる場合に被害を被ることがある。

雷魔法は、適性者が持つ金属武器に通電させて敵を感電させることが出来る。

雷魔法の熟練者は雷の力によって、金属を引き寄せる、弾くなどができるが適性者が少ない為他属性と比べ、詳細なことは解っていない。

適性者が自らの体に微弱な電流を流すことで身体能力の向上を狙えるなど、基本的に非常に攻撃的な属性である。

戦いにおいては、味方との連携が容易ではない為、主に各戦線の遊撃や隠密部隊に配属されることがほとんどである。



「・・・であるから、まあ、一対一の戦いに限定するなら最強候補の属性だな。反面、連携が難しい属性でもあるが、不可能ってわけじゃない。この強力な属性を活かすように動ければ、集団戦においても活躍できることは間違いない。」


最強候補か。

説明を聞いた限りじゃ火魔法も相当強力だが、属性の相性というのもありそうだ・・。


「そして水魔法は・・・」


曰く、水魔法は魔力によって水を操る魔法である。

水魔法は他の属性にはできない、『治癒』ができるため治癒魔法とも呼ばれる。

裂傷・挫傷・骨折・火傷などの傷を、魔力で操作した水で患部を覆うことで治療する。

傷の程度が大きいほど必要な魔力量は増え、より精密な魔法操作が必要になる。

精神が原因の病などは治せない。

濁ったエーテルを浄化することはできない。

戦いにおいては、水で顔を覆い窒息させるなどの攻撃方法があるが、戦闘向きの属性とは言えない。

そして戦場では必須の属性であるため、適性者は魔力管理を徹底する必要がある。

適性者が少ない為、最優先で戦力に組み込まれる属性である。


「・・・であるから、水魔法は基本属性の中で、最も重要視される属性だ。最優先で教育を施される他、人体に関する知識を叩き込まれるから訓練中も、戦場に出てからも一番忙しい属性だな。」


唯一の治療ができる属性か、水の適性者が居るかいないかで立てる戦術も生存率も大きく変わるとなると、それは重宝されてしかるべきだろう。


「属性に関する基本的な解説は以上だ!何か質問があるやつは手をあげてくれ。」

コンラッド教官の言葉に早速手をあげたやつがいた、貴族組の女だ。


青みがかった白い髪を二つ結びにおさげにして、長い前髪は目にかからないよう流している。

少し釣り上がったラウンド型の眉に、アーモンドのような目元。

瞳は綺麗な青で、まつげが外側に少し下がっているのが印象的だ。

通った鼻筋に、小さな口元。背丈は多分エレナと同じくらいか。

全体的にエレナと似ているがこちらは凛とした美人だ。


教官が名前を呼び、質問を促す。シエラという名前らしい。

「私は氷の適性者なのですが、第二試験のときに巨大な氷が地面から生えてきたのを見ました。氷は一度生成すれば操れないと聞きましたが、あれは違うのですか?」


もしかしなくてもオレのやつだろう。

言われてみれば確かに、あれは操っているようにしか思えない。あの美人試験官はどうやっていたのだろう?


「あれか。確かに操っているように見えるかもな。原理があるんだ、これから氷の適性者は教わることになるが、反作用を利用したものだ。地面から生やしたのではなく、地面をつかって勢いよく押し出したんだ。先に氷の切っ先を生成した後から一気に氷の柱を生成する。正直あのでかさの氷槍は見たことはないが。」


氷槍というのか、あの魔法は。

確かに槍っぽかったな。

しかし戦場の第一線で活躍していた教官が見たことがないとは、どういうことだろう?

オレの潜在能力か?そうであってくれ。



支給された昼食を終えた後は、施設案内や騎士の教訓などのイベントを消化した。


初授業が終わり、王都内に暮らす者は家路につき、外から来た者は今日から寮生活になる。

騎士団の夕飯がどんなものか楽しみだとトーマスが瞳を輝かせていたが、その表情は少し作っているようにも見えた。

あの魔物の話を聞いた後じゃ無理もないだろう。

ユーゴとエレナ、ライラと四人で魔法についてのあれこれを話しながら歩き、それぞれの帰り道に分かれる。

夕暮れの町は、温かい灯りと夕食の香りに包まれていた。


鳴る腹を抑えながら、オレは実家のパン屋へと急いだ。

やっと説明会が終了です!

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