第十三章 決着(3)
目を覚ますと、見知らぬ天井と、心配そうに覗き込んでくるジーク王子の顔が目の前にあった。
「良かった! 気が付いた!」
心の底から安堵した様子で息を吐く王子に、私は目を瞬いた。
ああそうか、ベルフェール公爵邸の地下牢に飛ばされ、襲って来た男達を返り討ちにして、黒幕であったエリザを引き摺り出し、叩きのめしたところで気を失ったんだった。
「どこか痛むところはないか? 違和感は?」
「大丈夫よ……それより、私、どれくらい寝てた?」
「丸一日半ってとこだな。今は昼間だ。メルクリア侯爵には、お前のメイドを通じて知らせてあるから安心しろ」
それを聞きながら上体を起こし、自分が寝ていた部屋を見てぎょっとする。
「ちょっと待って! ここは何処?」
答えを聞くまでもない。
この世界では見るのも初めてだが、ゲームではジーク王子攻略の際に見ている。
「王城の俺の部屋だ」
やっぱり。
ディアス以外のキャラクターも一周はプレイしていたのでわかっていたが、できれば違うと言って欲しかった。
「ってことは、殿下の部屋で一晩過ごしちゃったってことっ?」
「そうだが、何もしてないぞ? 意識のない女に手を出すほど飢えてないからな」
ドヤ顔で返して来たが、論点はそこではない。
「そういう問題じゃないわよ! 婚約者候補でしかない私が、王子の部屋に一泊しちゃったこと自体がマズいのよ!」
その一晩の間に何があったかは問題ではない。
相手が王族である以上、一晩同じ部屋にいたというだけで、立派な既成事実になってしまうのだ。
婚約者候補でしかなかった侯爵令嬢が、突然そんなことになったら、もう結婚までまっしぐらになりかねない。
「何が問題なんだ? 少なくともお前は俺の婚約者候補なんだ。誰も反対なんてしないぞ」
「反対されないからマズいのよ」
私が何に困っているか、彼は本気で解せない様子だ。
こうなれば家を捨てて逃げるしかないか。
ベルフェール公爵が逆恨みして父に危害を加えかねないが、いっそ公爵にもエリザ同様に浄化魔術を掛ければ、思考も浄化されてそんなことなど考えないかもしれない。
そこまで考えた瞬間、ふと思い出す。
「……そうだ、あの後ってどうなったの?」
「ああ、エリザは捕らえて、魔術師用の牢獄へ入れた。今ベルフェール公爵とクリフが事情聴取を受けているが、爵位剥奪及び、国外追放は決定的だ」
「そう……」
国外追放となると、筆頭魔術師であるセインによって『国内に足を踏み入れたら死ぬ』という魔術を掛けられることになるはずだ。
メルクリア家に対する逆恨みの報復行為については、ほぼ心配しなくて良いだろう。
私は胸を撫で下ろした。
それから、一番気になっていたことを口にする。
「……メルクリアとベルフェールの関係については?」
その質問に、王子は苦虫を噛み潰したような顔をした。
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