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【コミカライズ決定】悪役令嬢に転生したら正体がまさかの殺し屋でした  作者: 結月 香
1部 はじまり

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第十二章 黒幕(5)

 私の魔力の渦に呑まれ、男二人がその場に凍りつく。


「っ! これは……!」


 ジーク王子とルイス王子が目を瞠る。

 魔術を使うつもりはなかったが、私の怒りに反応して魔力が一気に膨れ上がる。


「黒幕を今すぐここへ連れて来い!」


 怒鳴りつけると、男達の肩がびくっと震えた。


「そ、そんなことできる訳が……」


 口では強気に言い返そうとしてきたが、男が怯えているのは目を見ればわかる。


 私は右手を前に突き出した。


「じゃあアンタ達に用はないわ」


 魔力が揺らぎ、私の動きに応じて彼らを覆う。


 殺すつもりはないが、半殺しくらいにはするつもりでぐっと拳を握ると、彼らは息を詰めた。

 そのまま、気を失って倒れ込む。

 

 私は彼らに絡み付いた僅かな魔力を感じ取り、それを手繰り寄せるイメージで、魔力を引っ張った。


捕獲魔術キャプチャー!」


 捉えた。

 手応えを感じて、手に力を込める。


 全ての黒幕、お前を見えない場所から引き摺り出してやる。


 しかし、感じていた手応えが、突然ぷつりと途絶えた。


「えっ?」


 驚いて手元に視線を落とした、その時。


「まさか魔力を辿って私まで手を伸ばすなんて……メルクリアの人間だからとみくびり過ぎたわねぇ」


 間延びした声が響いた。あまり聞き慣れないが、聞いたことはある声だ。

 その声のした方を見ると、部屋の入り口にいつの間にか一人の女性が立っていた。


「……貴方は……!」


 見事な金髪と翠の瞳、毒々しいまでの美貌。

 豪奢な赤いドレスを纏い、手にした紫の扇で口元を隠しているが、誰であるかはすぐにわかった。


 同時に、男二人から感じた魔力の主が、彼女であることも確信する。


 ルイス王子の母君にして、この国の側妃であるエリザ殿下。

 彼女は私とジーク王子に向けて言い放つ。


「お前達、いい加減目障りよ。ここで消えてもらうわ」


 ルイス王子と同じ翠の瞳に、揺るぎない殺意が燃えている。


「やっぱり、お前だったか」


 ジーク王子は訳知り顔で吐き捨てる。その隣で、ルイス王子が少し悲しげに目を伏せた。

 どうやらジーク王子の言っていた黒幕とは、彼女のことだったらしい。


 彼女は不愉快そうに眉を顰めた。


「お前? 私は未来の女王よ。口の利き方には気をつけなさい」

「女王? 王家の血を引いていない貴様が、世迷言を……」


 ジーク王子が眉を顰める。


 実際、エリザ殿下は国王の側妃ではあるが、外から嫁入りしただけで王家の血筋ではないので、当然だが王位継承権を有していない。


 正論を返された彼女は、ジーク王子を忌々しげに睨みつけた。


「だからお前には消えてもらうのよ。お前と、あの憎たらしいマーサが死ねば、私は正妃になれる。その後で国王含めた王族全員が死ねば私が女王だ!」

「そんなことのために、王妃を呪い、私達を襲ったの?」

「ええそうよ! ベルフェールの現当主に『魔王の眼』と『主従の指輪』を渡し、お前達抹殺のためにクリフを操ったのも、全ては私が女王になるため!」

「そのために王族全員を殺すつもりか?」


 そう問いかけた瞬間、ジーク王子は何かに気付いたようにルイス王子を一瞥した。

 彼は、心底傷付いたような表情で、唇を歪めている。


「王は私一人で良い。私の息子といえど、邪魔するものは排除するのみ」

「正気か?」


 実の息子でさえ殺すと言っているのと同義だ。

 最早正気の沙汰ではないだろう。


 嫌悪感で吐き気がする。


 彼女がそう思っているということを、彼女の実の息子であるルイス王子も知っているのだ。


 母親エリザから排除すると言われる子供ルイスの気持ちを考えると涙が出そうになる。


「……許さない」


 呟きと同時に、私の魔力が爆発した。

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― 新着の感想 ―
いきなりそれまで名前もなかったしょぼい側妃がしゃしゃり出てきた感覚……
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