第十二章 黒幕(2)
私とジーク王子を除けば、魔術師はルイス王子、セイン、シルヴィだけ。
その中で、私とジーク王子を殺す動機のある人物とは。
「まさか、ルイス王子殿下ですか?」
私が尋ねると、ジーク王子は首を横に振った。
「いや。アイツがここまでするとは考え難い。俺が考えているのは……」
言いかけた瞬間、突如足元に魔法陣が顕現した。
「っ! レリア!」
王子が私の腕を掴む。
「お嬢様!」
サーシャが駆け寄って来る姿が見えたが、直後、視界が闇に覆われた。
「何、どういうこと……?」
戸惑う私を、王子が警戒した様子で抱き寄せる。
暗闇だからといって距離が近すぎやしないかと抗議しようかと思ったが、緊急事態には違いないのでとりあえずそのままにしておく。
「転移魔術だ。どこかに飛ばされたらしい」
「どこかって……?」
辺りを見渡してみるが、真っ暗で何も見えない。
空気が冷たい。まるで洞窟の奥にでもいるかのようだ。
「光明魔術!」
王子が唱えた瞬間、王子の右手に光の球が現れた。
柔らかな光に照らさらて、周囲の様子が明らかになる。
「ここは……」
「どこかの地下牢か……」
その言葉通り、石畳に囲まれた部屋で、四辺の壁の一つが鉄格子になっている。
その向こうには廊下が伸びているようだ。
「何で私達を……?」
「あの魔法陣はレリアの足元に現れていた。俺達二人じゃなく、お前だけを転移させるつもりだったんだろう」
「私を? 何のために?」
「俺への脅迫材料にするつもりだったか、お前を抹殺する必要があると判断したか、どちらかだと思う」
不穏な言葉に絶句する。
王子は鉄格子に歩み寄り、そっと手を翳した。
「……やっぱり、この檻は魔石でできている。破ることは難しそうだ」
眉を顰める王子。
魔石とは、その名の通り魔力を含む石のことで、魔具の材料にもなる。
また、加工次第では如何なる魔術も無効にすることもできるので、罪を犯した魔術師を投獄する際の檻に用いられる。
魔石の檻は魔術を無効にするので、浄化魔術であっても解錠はできない。
しかも鉄以上の硬度を誇るため、物理的にも破壊することは困難である。
私が会得している暗殺術の応用で鍵開けもあるが、初見の魔石の檻の鍵を開けるにはかなりの時間がかかるだろう。他に術がない以上、挑戦する価値はあるだろうが、果たして猶予がどれだけあるか。
「……どうするの?」
戸惑いながら尋ねると、王子は腕組みをして瞑目した。
と、その時、こつこつと檻の向こうから足音が響いてきた。
気付いた王子が私を庇うようにして立つ。
徐々に足音が大きくなる。
そして現れた人物に、私は目を瞠った。
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