第七章 覚醒(2)
現れたのは、小柄で童顔の青年だった。
セイン・プレヴリューズ。
設定上の彼の年齢を知っているから『青年』と言えるが、見た目は少年と呼んでも違和感がないほどに若い。
長い金髪は低い位置で一つに束ねられており、右目に嵌めたモノクルがトレードマークだ。
纏っているのは、深い紫色の上質なローブ。それは筆頭魔術師にのみ与えられるものだ。
「ジーク殿下、いかがなさいましたか?」
穏やかな笑みを浮かべて恭しく一礼したセインに、ジークはすぐに用件を告げる。
「母上を呪った犯人がわかり、魔具も回収した。今すぐ解呪する」
その言葉に、セインが目を見開く。
「犯人がわかったのですか? あれだけ感知魔術も追尾魔術も効かなかったのに、どうやって……」
「その話は後でする。今は母上の解呪が先だ」
「そうですね。急ぎましょう」
頷いたところで、セインが私を見て首を傾げた。
「レリア嬢もご一緒なのですか?」
「ああ、これが回収できたのもレリアのおかげだからな」
ふっと微笑み、ジークは私に一緒に来るよう促した。
「ちょっと待って、解呪するってことは、王妃殿下のお部屋よね? 流石に私は畏れ多いわ」
せめて正式な婚約者であれば良いが、今の状況はただの婚約者候補だ。流石に王妃の寝室に足を踏み入れるのは気が引ける。
しかし、そんなことを言えば、ジーク王子が「それなら今すぐ正式に婚約すれば良い」とか言い出しかねないので、そのことは敢えて黙っておく。
「いや、お前のおかげで解呪のきっかけが掴めたんだ。母上も咎める事はないだろう。心配するな」
そういう事じゃないんだけど。
しかしそれ以上の反論は藪蛇になりかねないので、仕方なく同行することにする。
王妃の広く荘厳とも呼べる私室に入り、ジークに促されるままに寝室へ足を踏み入れる。
寝室の窓は少し開いていて、常に新しい空気が入ってきているはずなのに、室内の空気は重く澱んでいた。
大きなベッドの中央に一人横たわる王妃は目を閉ざしており、その顔は青白くやつれている。
呼吸も浅く速い。見るからに苦しそうで、見ている方が辛くなる。
その王妃の傍らで、セインはジークに向き直った。
「では、殿下、魔具を拝見してしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、これだ」
差し出されたペンダントを受け取ったセインは、とんでもない物を見たように目を瞠った。
「これは! 世界三大魔具の一つ、『魔王の眼』です!」




