表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ決定】悪役令嬢に転生したら正体がまさかの殺し屋でした  作者: 結月 香
1部 はじまり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/94

第七章 覚醒(1)

 ジーク王子に連れられ、彼の自室に入った私は、すぐに魔具のペンダントを差し出した。


「ミルマが所有していた魔具……これで王妃殿下を呪っていたみたいなの」


 王子は眉を顰めてペンダントを受け取った。

 黒い宝石に手を翳し、小さく何かを唱える。


「……間違いなく、ミルマ・イユ・ベルフェールの魔力だな。そして、対象は母上だ」


 剣呑に呟き、ペンダントを握り締める。


「今すぐ父上に報告する。お前も証人として一緒に来てくれ」


 拒否する理由はないので頷くと、彼はすぐに玉座の間へ向かった。

 廊下を歩きながら、王子が私を見る。


「それにしても、よくミルマが犯人だと突き止めたな。しかも、証拠のペンダントまで押さえて来るなんて」

「実は、突き止めたのもペンダントを盗って来たのも私じゃないの。専属メイドのサーシャよ。御礼なら彼女に言って」

「専属メイド? 魔術師なのか?」

「ううん。魔術師ではないんだけど、鼻が利くのよ」


 実は、サーシャは普通の人間ではない。

 メルクリア家の人間のみが知っているサーシャの秘密。

 彼女の祖母は獣人だった。


 獣と人間の混血である獣人は、かつては迫害の対象だったという。

 今はそうでもないが、サーシャの祖母が若い頃はかなり獣人に対する扱いが酷かったらしく、彼女は追い詰められて心身ともにボロボロになっていたところを、当時の当主、私の曾祖父に拾われて、メイドになったらしい。


 彼女はその後、他の使用人の男性と結婚し、女の子を出産した。その子がサーシャの母親であり、今尚私の父に仕えている。

 そして彼女も人間の男と結婚し、サーシャが生まれた。


 サーシャは見た目こそ普通の人間だが、身体能力はずば抜けており、戦闘力も成人男性を軽く凌ぐ。

 そして鼻は犬並みに利く。探し物が得意な理由は、その優れた嗅覚にあったのだ。


「わかった。全て片付いたら、望む褒美を与えるよう、父上に進言しよう」


 ジーク王子がそう言った時、玉座の間に到着した。

 国王陛下は、日中城にいる際は基本的に玉座の間にいて、大臣達と政治や経済などの話をしているという。


 玉座の間はとても広く、天井も高い。

 正面の出入り口から玉座まで、真っ赤な絨毯が十メートルほど伸びている。


 私達が入ると、玉座の横に大きなテーブルが置かれ、一面に地図が広げられていた。どうやらこの国の地図らしい。


 先程まで話していたらしい大臣が三人、ジーク王子に一礼して退出する。

 この部屋には国王と私達、出入り口の両脇に控えている衛兵二人のみだ。


「父上、急にすみません」

「どうした? 何かあったか?」


 ジークが突然玉座までやってくることは稀なのだろう。

 国王は私達を見て訝りながらも、前に出ることを許してくれた。


「母上に呪いを掛けていた犯人がわかりました」

「何? それは本当か?」

「はい。レリアが……正確にはレリアの侍女が見つけました。この魔具のペンダントを使って、ミルマ・イユ・ベルフェールが呪いの魔術を行使していたようです」


 ジークの報告に、国王の顔色が変わる。


「ミルマ嬢が?」


 聞き返してはいるが、聡明な国王は、ミルマがどういうつもりだったのかまですべて悟ったようだった。


「ベルフェール公爵を呼べ! すぐにだ!」


 国王が声を上げた直後、控えていた衛兵の一人が飛び出して行った。


「父上、俺は母上の呪いを解くために一旦失礼します」

「そうだな。セインも連れて行け。執務室にいるはずだ」

「わかりました」


 王子は私を促して退出する。

 そのまま玉座の間のすぐ近くの部屋を訪ね、筆頭魔術師のセインを呼び出した。


 筆頭魔術師とは、この国で最も優れた魔術師の称号だ。

 ゲームのサブストーリーでは攻略対象にもなっているセイン・プレヴリューズは魔術師の家系に生まれた天才、という設定。

 金髪碧眼の童顔だが、年齢は攻略キャラの中では最年長の二十五歳。

 ルイス王子のように穏やかな笑みを浮かべているが、実は滅茶苦茶腹黒くてドSな性格、というキャラだ。


 この世界の人物は皆ゲームとは性格が違うようだが、彼はどうなっているのだろう。


 内心では若干わくわくしながら、セインが出てくるのを待った。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ