第五章 露見(3)
目を覚ました私は勢いよく飛び起きた。
辺りを見渡す。
自分の部屋にいたはずの私は、見慣れない部屋のベッドに寝かされていた。
部屋の広さは五メートル四方程度。ベッドは私が使っているものと遜色ないほど高級なものだ。
扉は一つだけで、窓はない。
ここは何処だ。
私の部屋で、催眠効果のある香が焚かれたのは間違いない。
そして意識を失った私を、誰かが連れ去ったのだ。
そんなこと、一体誰が。
疑問に思うと同時に、ふと違和感を覚えて布団を捲る。
「っ!」
左足首に枷がつけられており、鎖でベッドのフレームに繋がれていた。
愕然としたが、人の気配を感じて顔を上げる。
同時に、扉が開いて入ってきた人物を見て言葉を失った。
「サーシャ? え、ちょっと待って、どういうこと?」
無表情で入ってきたのは、私の専属メイドのサーシャだったのだ。
「お嬢様、ご気分はいかがでしょうか」
「……気分は最悪よ。眠らされたと思ったら連れ去られて鎖で繋がれて……これは一体どういうこと? サーシャ、貴方は私を裏切ったの?」
「お嬢様を裏切った訳ではございません」
相変わらず淡々とした口調で答えるメイドに、私は眉を顰める。
「じゃあどういうこと? 助けに来てくれたようには見えないけど」
「とある方の依頼です。もうすぐいらっしゃいますので、暫しお待ちください」
「サーシャが私以外の命令を聞くって……」
メルクリア家に忠誠を誓っているサーシャが、金のためだとしても簡単に私を裏切るとは思えない。
つまり相手は、想像を絶するほどとんでもない額の報酬でも積んだということか、または……。
「まさかとは思うけど、その依頼人ってお兄様?」
同じメルクリア家の人間の命令ならば、裏切った訳ではないという彼女の言い分も理解できる。
私の指摘に、サーシャは答えなかったが、それが答えな気がした。
沈黙が部屋を包む。
その直後、部屋の扉がノックされた。




