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損得は世界の巡りモノ

秀治と健治が準備を終えてニューシャンハイの外壁ゲートを潜って砂漠に出た頃。


チャイナーの安明戦団の一隊であるUSJ隊がニューシャンハイに接近しつつあった。

USJ隊とは、一隊のリーダーで安明戦団の中級部将であり、数日前の『4Q27水源地略奪戦』で勇名を馳せたアンクル・シドニー・ジョナサン、略してUSJに率いられている隊である。

勇名というのは、USJ隊が水源地にいた勇者を葬った事だ。

この世界では珍しくUSJは旧世界の戦術に多少詳しかった。遺跡でハードコピー(書物)を見つけたか、または『何者かに教わった』のかもしれない。

彼は砂漠戦での『火力と機動』の活かし方を知っており、手下にその調練を施していた。

調練の成果の半分を発揮したUSJ隊は勇者の反撃を許さず、一瞬で押し潰したのである。

理不尽なほど強力なチート能力も、それが活かされなければ無効化されるのをUSJは確信し、学習した。

結果USJの存在力は3倍になり、1260になった。安明戦団の中では上位に入る存在力である。


略奪の成果と勇者討伐によりUSJは安明戦団武漢六鶴楼の一人である上衝大将軍・申徳に表彰され、新装備と新たな任務を授かった。

常勝軍として期待と重圧を受けるUSJ隊は、新装備の慣熟も不十分なまま出動しなければならなかった。


今回はUSJ隊にとって辛い戦いである。

ここに到るまでに彼らは隠密行動で移動した。

そのため、いくつもの資源輸送隊の交通路を迂回して適応生物の巣にぶちあたった。

そこで多大な犠牲を払いつつも、何とか突破した。

そして今がある。

苦しんだ。

悲しんだ。

痛かった。

それも、ここまでだ。

USJ隊は今悲願を果たそうとしている。


「ヤるよ! ヤるヤるよ!」

一隊の指揮官であるUSJは隊内無線で突撃命令を下す。

悲願成就の号令である。

USJ隊はカノーネ・キャリア(LMC)1輌を中軸に、撃滅型機動車(シュトク)7輌で編成されていた。

今残存しているのは、カノーネ・キャリア1とシュトク3である。シュトクが4輌、尊い犠牲になったのだ。


命令に呼応して、全車輌のニトロマンが振動と唸りを大きくして加速し、砂漠の砂塵が4本の煙となって各車輌の後を追う。

機動力に優れるシュトクが前に出、危なげなく突撃隊形を取る。

カノーネ・キャリアは40mほど後を走ることになるが、射程があるので問題は無い。火力の集中は可能である。

慣熟は不十分だが、USJ隊は戦闘隊形を取れる程度には錬度が高い。


「今だ!! 王虎戦法(キングタイガー)だ!!」

USJが隊内無線に叫ぶ。

命令に呼応し、座乗するカノーネ・キャリアの上面に設けられた砲郭内の砲が直接照準を開始し、金属音を発てて軋む。

彼らの目標はニューシャンハイの外壁である。

無謀なのだが、彼らには勝算があった。

カノーネ・キャリアに搭載した旧世界の発掘兵器である88mm砲が、彼らの勝算である。

「タイガーっ!」

USJは、外壁まで目算距離800mで発砲命令を下す。

88mm砲の砲撃が実行される前に、暁闇の暗闇でニューシャンハイの外壁の数箇所が煌く。


一瞬でUSJ隊4輌15名は蒸発。

一帯には溶けきらなかった金属の残骸のみが散乱し、生命体は欠片も残らなかった。


勇者の弱点を偶然知ってしまった男は、この世界から自然な形で消滅した。


***


そんな日常茶飯事が繰り返された頃、じきに夜が明ける時間にバロスは傭兵団の仮設拠点にいた。

二号棟の一室を仮宿にし、TIETにデザート・ローニンの追跡と殲滅を命令する。

都市内でのアレコレ向きに訓練されているTIETは砂漠での戦闘任務に向かないので、TIET隊長は8931小隊から二個分隊出すという作戦をプレゼンする。

バロスは納得して作戦を了承。他の小隊には個人的な仕事は頼めない弱みもあった。

バロス自身が行くとは言わなかったので、TIET隊長は安堵した。

出撃時期だが、最新の気象情報を取って検討した結果、時間を置くことにした。

二個分隊には追跡パックを装備したBPARを支給し、野戦キャリア(FCC)とタルクを必要数配備した。潤沢にあるとはいえ、有限な装備を放出する。それだけデザート・ローニンを恐れているのだ。

銃は四等団員以上にのみパルコ10mm 戦争小銃(WSD)を保管庫から蔵出しする。

都市衛兵の小銃に比べると見劣りするが、寒暖差に左右され難い構造と5つの銃身から同時に放たれる10mmパルコ弾の弾幕は侮れないものである。有効射程距離も突撃小銃に優るので、総合して砂漠戦向きと言えた。

千発弾倉をBPAR着用の歩兵ならば4つ携行でき、環境保護服を着ただけの歩兵でも予備に1つ携行できる。


「バロス様からの特別な任務だ。果たせば、それだけ報酬もでかいぞ!」

三等団員が檄を飛ばし、召集された傭兵たちから喚声が上がる。

昨晩ハメを外しすぎて懐が寂しくなった者も少なくない。そこに仕事が舞い込んだので、渡りに船なのだろう。

士気は並の上といったところだろうか、と三等団員は思った。


便宜上、この二個分隊には『ハンターA』のタスクコードが付与された。

夜明けを待って、ハンターAは出撃する。

デザート・ローニンに遅れること、約5時間である。

砂漠の気温が最高度に上がる頃までに、運がよければ追いつけるかもしれないと見送るバロスは考えていた。

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