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ニューシャンハイ・サード青春ロード

「またおまえらか」

四十がらみの都市衛兵(シティガード)の門衛が、秀治の座る機関部座席によじのぼって呆れ顔。

「おっさん、ほれ通行証明。これで文句ねーだろうがよ」

秀治は秀治で、いつもの器用さはどこにいったのか。

「だからそうじゃねーだろ。何度言えば分かるんだクソガキが!」

「ああっ? クソジジイはてめーだろうがよ!!」


二人は下らない事で時間を浪費している。


そんなことを健治は脳裏に浮かべつつ、コンテナの上に寝そべって後続車両の不機嫌そうなクラクションを子守歌代わりにしつつあった。

せっかく命を拾ってニューシャンハイに到り着いたというのに、いつになったら一休みできるのだろうか? とも、健治は思っていた。


***


しばらくして。

そう、ちょうど時計の長針が半分回るくらいして、やっと門を通過できた。


「あのクソジジイ。いつか殺すかも」

秀治がブツブツ呟きながら、サードエリアに俺たちのキャリアを進める。

サードエリアは市民権が無い連中に開放された唯一の都市エリアである。

主に『輸送屋』や『傭兵』の需要を満たすエリアで『ギルド』に加入してれば誰でもすんなり利用できる。


「やっぱギルドを蹴ったのは、面倒事を増やすだけだったんじゃねーか?」

健治は寝転んだまま、コンテナが積まれたキャリアの荷台の上から秀治に無線で話しかける。


「いや。ギルドってのは大概クソだからな。せっかく完全自由世界に来たんだから、縛られるのは」


秀治はそこで切り、健治は寝転んだままニヤリと口元を歪め、


「「己の心が決めた掟のみ!!」」


とタンデムする。

そして二人は大声で笑う。

こんなに屈託無く笑える日が来るとは、転移前には想像も出来なかった二人である。


「まぁ、そうだよな。悪ぃ。ちょっとイラついて日和るところだったわ」

と健治。


「いつものことだ、気にすんな。依頼者に積荷渡したら、久々にジンジャーのところに繰り出そうぜ」

秀治も慣れた調子で鼻歌交じりに健治を誘う。


「そうだな。一杯やるのも悪くない」

と、健治は寝転んだまま目を瞑る。


「一杯だけかぁ?」

と、秀治はニヤニヤしながら天板で遮られて見えない戦友のほう見る。


「それは、決まり文句ってやつじゃないか。建前だよ、建前」

「違いない!」

二人は再度大声で笑った。下らない事で笑い合えることがこんなに気持ちがよいとは、転移前は想像もできなかった。

秀治と何の気遣いも無く話し、誰に遠慮する事も無く笑い合えることに、健治は心地よさを感じていた。

これも、転移前では考えられないことだった。


いつのまにか、健治のイラつきは雲散霧消していた。

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