老若男女平等
「その報酬にキャリアを1輌か? ちょっと高く無いか?」
とバロス。『取引を買い叩く』のは、本能といえた。
「多少高かろうが、あんたは呑むしか無い。呑まなければ、別の筋書きが実行されてそれが『事実』になっちまう」
と秀治。
「ほう」
と目を細めるバロス。そうなるだろう。そうでなければこの取引自体が成り立たないからだ。
「別の筋書きについては、話すまでも無いだろ?」
と健治。
バロスとカリンが始末され、物盗りが多少のチケットや価値のある物を奪って逃亡した。行方は杳として知れない。そんな感じだろうとバロスは思った。
それは、バロスにとって全損を意味する。
面子が潰れる状況に持ち込まれ、命を握られている。
この状況でバロスが存続するためには、相手の譲歩を引き出しつつ相手の望みを叶えるしか無い。
三人の会話が途切れたところに、
「ちょっと待ってっ!」
とカリンが叫ぶ。
「なんだ?」
と秀治。カリンのほうに目も向けない。今の目的はバロスであり、ほぼ全裸の女に喜ぶ精神年齢でも無いのだ。
「アタシなら、キャリアにBPAR、その他のあんたらに必要な物資も提供できるよ」
とカリン。
「ふーん」
と健治。
「ソイツが死ねば娘であるアタシに資源輸送隊の資産が全部来るんだ。今すぐバロスを殺ってくれたら、報酬は必ず払うよ」
カリンは半笑いで必死になって言う。
「どうする?」
と秀治。
「決まってる」
と健治。
コミュニストを一瞬で抜き、健治はカリンの頭を吹き飛ばす。バロスは反応できなかった。
頭部に埋め込まれた極小の金属環が、血肉とともにいくつか天井に張り付いた。
バロスはカリンが死んだ事よりも、健治の早抜きと精度の高い射撃に譲歩を引き出す交渉の余地が消えたことを悟る。
「この場の主導権がテメーらにあるって理解して無かったようだな。横入りは仁義に反する。所詮は女の浅知恵か」
と頭部が無くなった血肉まみれのカリンだった物体を横目にバロスが呟く。
同時に、こいつらを出し抜こうなんてオッサンの浅知恵でもあったな。とバロスは内心で自嘲する。
だが、経営者として感情を抑制しているため、恐怖心に呑み込まれないのはさすが一団の頭を張っている者だと言える。
「そういうこった。さてどうするよ、バロスの旦那。こっちは筋を通したぜ」
と秀治。
「俺たちは筋を通す。男女差別はしないし、区別もしない。同列に処理するだけだ」
と健治。
秀治もウンウンと頷き、
「道に転がってる邪魔な石ころに、男も女もガキもジジババもねーもんな。全部同じだ。この場では平等に意味が無い」
と唇を歪める。
バロスは溜息をつき、両手を挙げる。
「しゃーねーか。テメーらの筋書きに乗ってやるよ。ここにいたオレの傭兵たちは皆殺しか?」
と訊くバロスに、秀治は「当然」と返す。
「半端なことはしない」
と健治。
とは言うものの、健治と秀治がやった事は充分綱渡りであり、しかもまだ安心できない。




