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目的はキャリア

入ってきたのは健治。

異様なことに、自然体で入ってきている。

まるでそれが当然であるかのように。

バロスは一瞬、何が起きたか分からなかった。

このフロアは手下の傭兵が固めている。

騒動1つも無くここに到る事は、難しいはずである。

そんな兆候は全く無く、なぜかここに見知らぬ若造がいる。

何が起きているのだ? と。


「あんたはここで死んだ。こいつはあんたを再生処理も間に合わないくらいには、一瞬で破壊できる」

と健治はいつになく饒舌に、腰のガンベルトに挿したコミュニストに手で触れる。

「なんだテメーらぁっ!」

遅れてバロスは反応する。


現実の戦場以外での死傷者が出る銃撃戦の大半は、5m以内で起きているというデータがある。

つまり、その距離ならどんなヘタクソでも人体に当てられる確率があるということである。

いわゆる必中距離だ。


バロスもこれを理解していた。腿ベルトに挿したアンゴルモア(大型自動拳銃)に手を伸ばそうとする。

「おっとっと。そいつは上手くないぜぇ」

バロスの背後から秀治の声が届く。

秀治は銃でなくナイフを持っていたが、バロスには確認しようが無い。

カリンは突然の闖入者が起こす事態の変化に頭が追いつかず、裸身を隠すこともできない。


「あんたは今疑問だらけだろう。だから答えをこっちから提示するよ」

と秀治はバロスにナイフを持ったまま近づく。

バロスは動けない。動いた瞬間どちらかを倒す事はできるだろうが、残った方に()られる。

なので、

「答えだぁ?」

と凄むのがバロスの精一杯であった。

「そ。答え。この状況になっちまったあんたの面子が保たれるようにするから、その対価にキャリアを1輌譲渡してもらう」

と秀治は絶好の位置につき、答えを提示する。

バロスは全く酔ってない頭をフル回転する。

結論はすぐに出た。

そうでなければ、資源輸送隊の頭は張れない。

「テメーらはどうやってオレの面子を保つってんだ?」

とバロス。即物的に即断するのが経営者に必要な資質であり、感情による配慮は抑制しなければならない。経営者の資質を持つ者とは、ある種の残虐性を持つとも言える。

「そこの女に全部被ってもらう。そういうタマなんだろ? 見れば分かるさ」

と健治。

「あんたのヘンタイ趣味についてはともかく、その女だって善良ってわけじゃないしな」

と秀治。

「それで?」

とバロス。

「その女はあんたをハメるために傭兵の一部を抱き込んであんたを()ろうとした。あんたはその事を見越して、俺たちを予め雇っていた。あんたの先見は、バカな連中の想定を超えていた。結果的にあんたは生き延び、バカな連中は始末された」

と秀治。

「という筋書きでどうだ?」

と健治。

バロスとカリンの関係を知らない割に、意外と有り得そうな筋書きが提示される。

そのことにバロスは多少興味を持つ。

筋書きも悪くない。

実際、傭兵の一部がカリンに籠絡されている気配はあった。

今日全部を始末して『リストラ・効率化する』という機会にこいつらがやってきて、『最後まで部下と娘を信じようとした情けのある頭』という嘘を事実にすることができる。

バロスは乗ってもいいと思い始めていた。

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