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砂に消えた砂漠王

時は3年ほど遡る。


ニューシャンハイから西に110km地点。

距離のイメージは、旧東京からグゥ魔境までの距離とだいたい一致する。


そこは各種敵対的気象と異様な適応生物とチャイナーというレイダー種族が混在する砂漠で、超危険地帯である。

今、ここに1人の少年が立ち上がる。


「ボクは、砂漠王になる!!」

少年の名はルモィ。

偶然にも特殊な適応植物の実を食し、チート能力が覚醒した上での暴挙であった。

彼のチート能力はドリルである。全身から大小長短の様々なドリルを生やす事が出来る。


「ボクのドリルは天を貫くっ!!」

と、襲ってきたのを捕まえたチャイナーの男の尻をドリルで掘りながら叫ぶルモィ。


ルモィの怪進撃が始まった。


***


ルモィの暴走は止まるところを知らず、いつしかルモンゴラ軍団という集団になり、やがて旧時代の大規模シェルターを発見して占領した。

軍団内には正体不明のテック(技術者)がいた。この世界では希少で、まず目にする事が無い存在である。

テックはいつのまにか軍団に混ざっていた。それに誰も疑問を持たなかった。

それどころか、テックの振る舞いにすら誰も疑問を持たなかった。

テックはルモィを巧みに操っていたのだが、それにも誰も疑問を持たなかった。


テックは、大規模シェルターの管理を一部掌握したと宣言し、自給自足体制を整えた。

そこで軍団はル・モイゴラ王国を建国。

その頃には、ルモィは既に表に姿を晒さなくなった。

その事にも、誰も疑問を持たなかった。

労働者を必要としない自動自給自足体制が整った大規模シェルターは、順調に人口を増やし過酷な気象や適応生物やレイダーの脅威を排除し続けた。

安全と食糧と水が自動的に出てくる社会を形成した王国内は、退廃を極めた。

いつのまにか、テックもその姿を消していた。


そして今に到る。


***


ル・モイゴラ王国勢力圏とチャイナーの『沼血而』団の勢力圏の間に比較的安全に通行できる砂漠の交易路がある。


今。

キャリアを連ね、傭兵の装甲中機動車(タルク)が10数輌護衛随伴する典型的な資源輸送隊が交易路を走る。

ル・モイゴラ王国は何も手出しをして来ない。彼らは退廃に夢中で、外に関心は無い。

沼血而は時々襲ってくるが、タルクとキャリアの火力の前には、何も出来ないで敗退する。

最も恐ろしいのは気象と適応生物である。その監視のため、キャリアの上部銃座は監視任務を主としている。


先頭を走る先導キャリアの上部銃座に座るカリンは、360度全周を24の枠に分割して順番に監視する基本通りの作業を行っていた。

彼女はこの資源輸送隊のリーダーであるバロスの娘で、同時にクルーであり、愛人でもある。

輸送しているのは西のガロー(武装採掘者)達から仕入れたマダカスカで、イドミウムやマダミウムの原鉱石とされる。

チェンジャーに『資源輸送者』認定をされれば、相場やリクエストに関係無く『一定額で一定量の指定物品の納品』を常時許可される。

故にこういった大規模業者は、チェンジャーに許可された物品をせっせとチェンジャーに運ぶのが生業となっている。

それがどのように使われるのかとか自分達が何をしているのかなどの当たり前の疑問は、関係無い。

目先の大量のチケット入手手段という煙幕の向こうを覗こうとする者など、まずいないのだ。


「今日も平和だねぇ」

とカリンはニトロマンの微細な振動を感じつつ、鼻歌交じりに呟く。

バロスの趣味で青とピンクの斑模様に染めたモホークカットの頭髪を指先でつまみながら、カリンは今日には到着するニューシャンハイでバロスにどう媚を売ろうかと考えていた。

上手くやれば、バロスを始末できるかもしれない。そうすれば、この資源輸送隊という財産は娘である自分の物である。

彼女はずっとそれを目指してきたが、未だに成功していない。

バロスのほうが何枚も上手であり、また彼女の想像以上に狡猾で残忍だからである。

カリンは失敗するたびに許しを請い、その都度バロスは彼女の体に1個の『奴隷の環』と名づけた金属の極小の環を埋め込む。

バロスはこの一連の流れを娯楽として愉しんでいる節がある。


バロスはル・モイゴラ王国の出身者である。

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