当て外れ
何はともあれ必要なものは新しいキャリアであり、それに付属するシステムである。
半年前の状態にできるかぎり戻さないと、行動を起こすにも限界が多すぎる。
二人は砂漠で活動する手段として軽機動車を選択するほどの『勇者』ではないのだ。
「しゃーない。チェンジャーで稼ぐか」
と秀治。
「芸が無いとは思うが、時間が惜しい。そうしよう」
と健治。
二人は支夷奴十四号街の路上にもそこら中にあるチェンジャーにアクセスし『求む』を検索する。
タイミングが悪いのか、採掘系は全く無かった。
あるのは駆除系のみである。
「イブリンしか無いな」
「ゲームに出てくるゴブリンみたいなやつだっけ? 見たことないが」
***
チェンジャー品種指定[イ3号819]:I-BLIN<駆除対象>
【解説】
第6次宇宙戦争時にクラトズ銀河ザンガ星系より侵入したしたとされる高知性固有種。
構造の大半がブリン対向粒子で構成された小型怪獣。
俊敏で知性を生かした多様な戦術を駆使する危険種である。
ブリン対向粒子の性質通り、地上環境が苦手なため主に地底に生存圏を形成する。
***
「Gの次の次がIだからイブリンとか、安直過ぎだよな。チェンジャーのこの嘘設定、なんなんだろうね。まったく」
秀治はつらつらと表示される真っ赤な嘘記述をうんざりしながら読み上げる。
「チェンジャーのウラは、中2病連中かもな」
と健治。
「ま。今はそこは置いといて、問題は」
「地下はまずい。アンダーダークがうじゃうじゃいる」
二本目の葉巻に拾ったナイフでカットをいれながら、健治は呟く。
アンダーダークへの自衛戦闘はチェンジャーから非推奨指定されており、やったら報酬が減る。
罰されるわけじゃないが、額次第では賠償しなければならなくなる。
そして、アンダーダークは自分達の生存圏に侵入した外者を攻撃する。
イブリンとアンダーダークも、常に戦闘状態である。
「ああ。地下ってのがやばいなぁ。いくら防御を固めても持たない」
「アンダーダークとは交渉不能。意思疎通すら怪しい。BPARを用意しても生還は無理だ」
「もちろん、BPARなんて持ってないんだけどな」
秀治は両手をひらひらさせ苦笑。
健治は、
「ブリン核の最小納品数は?」
と右手指に挟んだ葉巻をチェンジャーに向ける。
「5だな。んで、報酬が2千だ」とチェンジャーの画面を見ながら秀治。
「そうか」
健治は葉巻をくわえ思案モード。
「活動しているドワーフがとち狂って都市の地下を迷宮と勘違いして爆破してくれないかねぇ」
と秀治。そうそう滅多に無いことを望む時点で半分冗談である。イブリン駆除は諦めて他の方策に切り替えようとしているのだ。
空を見上げながら秀治は続けて、
「エルフでもいいぞ。ドラゴンでもいいぞ。ここのアンダーダークを殲滅してくれないかぁ? ハハ」
と苦笑し、チェンジャーから離れる。
健治は考えるのを止め、
「これはやめとこう。お手軽じゃない方で稼ぐべきだ」
とチェンジャーを見つめながら結論づける。
秀治も同意した。




