金色に魅せられて
私は、金色が好きだ。
幼少期から私は、母を困らせた。折り紙は、金色しか使いたくないと駄々をこね、銀色は嫌だと言う。何故あんなにも、金色にこだわったのかは分からない。ただ、魅せられたのだと思う。
「あんたは、いつもそうだったのよ」
母の最近の口癖はこうだ。ふとした瞬間に、幼少期の大変さを思い出すらしい。それもそうだ。普段着から、寝巻きまで。何とかなだめる為に、母は工夫を凝らした。
折り紙の金メダル。これは、私の宝物。保育園にもこれを持っていき、友達に盗られてボロボロになった時は泣いた。私が持つ古い記憶はこれで、思わずクスッと笑いが漏れてしまう
きっと、トランペットを吹きたかったのは、その性だ。
金ぴかで、綺麗な音が出て、キラリと光るその姿が。
私の求めていた物であったのだ。
私は今日、この大舞台で吹く。心配はあるけど、お腹の中は金ぴかだ。湧き上がるドキドキと勇気が、私の胸を膨らませる。吹くのだ。私は、ここで。
高らかに、金ぴかは鳴った。




