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音楽のような風-8

 理科室の片隅の水槽に学生が集まっていた。萌はその間から覗き込むと、そこにはモグラがいた。あっと思って見ていると、学生の一人がミミズを与えていた。

「わざわざありがとうな、おさむ君」

「んん。ボクが拾ってきたモグラだもん。ボクが世話しないと」

「ミミズ獲るのも大変だろ。最近は、ミミズも減ったから」

「何とかなるよ。頑張っていっぱい獲ってきたから」

もそもそと餌を食べているモグラが珍しくて萌は人垣の下から覗き込むように見つめた。

そんな萌を見て宏信は微笑んだ。

「モグラは、一日に自分と同じくらいの重さの餌が必要なんだ」

「へぇー、良く食べるのね」

「新鮮じゃないと食べないから、大変なんだ」

「そんなに集めるの大変でしょ」

「ん、朝と昼休みと放課後と、何回も獲りに行くんだ」

「おさむ君は、トラップまで作って、獲ってるんだ」

「モグラの飼育は難しいんだよ。すぐに体が冷えて死んじゃうんだ。すぐに餓死するし。でもね、五月先生が見てくれてるから、なんとかなってるんだ」

「ふーん」

「この水槽も五月先生が考えたんだよ。ほら、下に温水槽があってこの飼育水槽全体が温ったまるようになってるんだ」

「へぇー、そうなんだ」

「土の中にいると温度変化は小さいけど、こうして水槽の中だと気温の変化ですぐに温度が変わるからモグラが死んじゃうんだ」

「色々大変なのね」

「それより、日本のモグラの分布は面白いんだよ」

 おさむはモグラの講釈を続けた。それを聞きながら萌は、もそもそと餌を食べ続けるモグラに目を奪われていた。そんな萌を見て宏信は少しほっとしていた。



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