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音楽のような風-7

萌の戸惑いは宏信にもわかった。しかし、何も言うことはできなかった。昨日までは普通の一生徒だった萌に脚光が浴びたことに、父としては嬉しく、また相応の評価を受けたことも喜ばしかった。ただ、この子を、未知の、音楽の道に飛び込ませることには、不安があった。

「萌、おまえは、どうしたい?」

「……わかんない」

「ピアノは好きか?」

「……うん」

「もっと上手になりたいか?」

「……うん」

「……東京に、行くか?」

「……」

「…そうか……」

「……あのね」

「ん、…どうした」

「今日ね…、あの…西園寺先生の言う通り弾いたの、ピアノ。…そうしたら、何て言うのかな、…急に…上手になったような…そんな感じだったの」

「…そうか」

「……溝口先生がね…、ピアノ上手になりたいなら、それだけなら、今のままでも、大丈夫だって言ってくれたの。だけど、…もし、本当に上手になりたいなら、…ピアニストになりたいなら…、せっかくだから、東京に行けばいいって……」

「…そうか」

「……どうしたらいいんだろ」

「…そうだな……」

 何も言えない時間が静かに過ぎた。と、理科室に人が入ってきた気配が感じられた。そして一人が準備室に入ってきて宏信を呼んだ。

「五月先生、獲ってきたよ」

「あぁ、そうか、ありがとう」

宏信は立ち上がって返事をした。そして萌に、

「まぁ、よく考えよう」と言うと、「どうだ、ついでに見ていくか」と萌を誘った。萌は促されるままにふらりと立ち上がると宏信について行った。


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