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音楽のような風-最終話
雨上がりの緑地公園はひんやりとした空気が丘を包んでいた。こっちこっちとおさむが叫ぶ方に、萌は賀津美らと一緒に駆け寄った。おさむは、ほらと言いながら窪地を指さし、「あの辺はミミズが多いんだ」と言った。
おさむの指示にしたがって萌も土を掘った。嬌声を上げながらミミズをつまみ上げると、バケツに放り込んだ。三人ががりで頑張っても、おさむの半分も獲れなかった。
「すごいね、山口君」
「へへ、慣れてるから」
「でも、毎日大変ね」
「そう、ミミズの養殖の方法でも考えないと、おさむ君がダウンしたら、モグラもダウンしちゃう」
おさむはニコニコしながら、泥だらけの手で汗を拭った。顔中泥だらけにして、おさむはまだ笑っている。それを見てみんなから笑い声が漏れた。
風が一閃吹いた。振り返ると、それは、森の木々をざわめかせながら通り過ぎていった。その瞬間、萌は空を見上げた。森の上に広がる空には、雲ひとつ見当たらず、突き抜けるような青空が高くそびえていた。




