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音楽のような風-11

 昨日も音楽部に顔を出したときのことだった。待ち受けていたように後輩たちが萌を取り巻き、東京へ行くのか、音楽に打ち込むのか、と矢継ぎ早に質問を続けてきた。自分の気持ちを整理できないでいるままで質問を続けられることに疲れてしまい、今日はクラブをさぼってしまった。教室にいても、周りから同じような質問が投げかけられる。家へ帰ろうかと思ったが、ふと、父のいる準備室を思い出した。雑然としてはいるが静かな部屋にいた時間が恋しかった。ぼんやりとこうしてモグラを見ているのも楽しい。それに、そろそろ結論を出さなければならない。昨日溝口先生に、来週早々には返事が欲しいと西園寺先生から連絡があったと伝えられた。父にはあの日以来全く相談していない。家でも父は特に何も問い掛けてはこない。萌は次第に孤独になっていく気分だった。むしろ、このまま何もなかったことにしてしまいたいとすら、考えていた。

 モグラの餌やりが終わった頃に、一人の女子生徒が入ってきた。

「買ってきたわよ。餌」

「あ、賀津美ちゃん、ご苦労さん」

萌は二人のやり取りを覗き込みながら、

「モグラの餌?」と訊ねた。

「違うよ、これはメダカ」

「へぇ、メダカも飼ってるの?」

「うん。知ってる?メダカって、絶滅しそうなんだよ」

「へえ、知らなかった」

「外来種が増えたのと、環境汚染が原因でね、もともと日本にいた種類はほとんどいなくなったんだよ」

萌は楽しそうに餌を与えている二人を見ながら、水槽に近づき、覗き込んだ。水の中に落ちていく餌を素早くくわえるメダカの仕草に萌は嬌声を上げた。

「かわいいね」

「うん」

ひとり言のような萌の言葉におさむが答えた。


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