『あの子』 駅ですれ違う想い
駅のホームであの子は微笑み返してくれた。
僕は高校に入学し電車通学を始めていた。
同じ電車に乗るあの子に会うのが楽しみになっていた。
ウチの学校とは違う制服のあの子。
何度か声を掛けようとしたが勇気がなかった。
ただ遠くから見守るだけ。
夏休み入る前日に電車の中で声を掛けようと近づく。
彼女の様子がおかしかった。
顔を真っ赤にし何かに耐えていた。
後ろには彼女と同じ制服の男が密着していた。
彼女と目が合う。
僕は目をそむけ、その場を逃げ去った。
夏休みが終わり学校が始まる。
電車に乗り込む。
あの子にまた会えた。
いつもの笑顔は消えていた。
今は彼女ひとり。
周りに誰もいない。
それでも僕は声を掛けることが出来なかった。
次の日から彼女の姿が消えた。
10月の秋晴れの頃、駅のホームあの子を発見した。
あの笑顔は戻っていた。
今度こそ勇気を持って話しかける。
「こんにちは久しぶりだね。電車の時間変えたの?」
よし、声を掛けたぞ。胸の鼓動が高まる。
「?」
彼女は何も話してくれなかった。
「その、あの、突然ごめん。君と友達になりたいんだ」
「友達?」
彼女から発せられた声はか細く、透き通った物だった。
「そう友達」
「私をまだイジメるの?」
夏休み前の光景が思い出される。
アレは痴漢行為。
僕は彼女を助けれなかった。
「イジメない。今度こそ僕が君のこと守るよ」
「私と一緒にいたい?」
「うん。僕は君と一緒にいたい」
「じゃあ、一緒にいきましょうか」
僕は何かに引きずられるように、
走ってくる電車の前に飛び込んだ。
また怖くない物を書いてしまった。
9月1日 無理せずに