0歳 3221 g → 16歳 61.2 kg
この国の経済は歴史上類を見ない発展を遂げた。16年前と比較して経済指標は約15倍にまで上昇。かつてないほどの好景気に国民は潤い、他国からは羨望のまなざしを向けられることとなる。
あるときは枯渇したと思われていたガス田が突然再噴出した。またあるときは新開発デバイスの必須金属がこの国にしか存在せず、貿易加工で多大な利益を得た。降って湧いたような幸運が国の経済を潤わせたのだ。
しかし、ここ数年順調だった経済成長に陰りが見え始めた。プラス成長を維持してはいるものの、経済が上昇し始めた16年前の勢いとは雲泥の差。好景気はこのまま泡沫のように消えてしまうのではないか。そんな不安が国全体を覆っている。
経済学者がさまざまな施策を提案し実行するものの、どうにも効果がない。この国の経済はもはやだれにもコントロールできない何かが操っているのだと、そう声高々に宣言する者まで現れ始めた。
それは半分当たっていて、半分外れているというのが正解だろう。実はこの国の経済指標は俺の体重推移と連動しているのだ。
――決して冗談ではない。
最初に聞いたときはずいぶんばかげたジョークだと鼻で笑った。だが、示されたデータからはアノマリー、つまり「理論で説明できない現象」を超えるほど不自然な一致が見られた。
すなわち、出生体重3221 g の俺がすくすくと成長した結果、国の経済は1年で3倍以上伸び、5歳になることには5倍、12歳では15倍と伸びていった。一方で15歳にもなると体重の変化は微々たるものとなり、それが国の経済停滞を招いたということになる。
連動はどうやらリアルタイムらしく、試しに1日だけ断食をしてみたところ市場全体で株価が全面安の大パニック。慌てて胃にモノを詰め込む羽目になった。
この現象を誰かに伝えるべきか。いや、決してそれを伝えてはならない。
国に知られれば、きっと徹底的に管理された食事によって肥え太らされることになるだろう。その末路に何が待っているのかは想像もしたくない。
他国ならばさらに悲惨だ。死んだときの検証はしていないのでどうなるかはわからないが、少なくとも愉快な強制ダイエット生活が待っているに違いない。
ということで、俺たちはこの秘密を明かさないことに決めた。誰かに言いふらしさえしなければ、たった一人の人間の体重推移が経済と連動しているだなんて思いつきもしないだろう。
「我が国の経済は俺の体重と連動している」ことを知っているのは、俺自身とこの現象を発見した我が家の専属メイド明華葵だけだ。
軽快なノック音とともに甘ったるい高い声が響く。
「ご主人さま~!3時のおやつをお持ちしました!一緒にホールケーキ食べましょうね~」
もしかすると彼女に知られているのが、一番の問題かもしれない。
6/8 経済"指数"→経済"指標"に変更
6/8 専属"現役JK"メイド→専属メイドに変更
6/9 経済指標は約"20"倍にまで上昇。→経済指標は約"15"倍にまで上昇。に調整