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始まりの夜。
「はぁ、はっ…」
振り返らず、一心不乱に走った。
前だけを見て。早く、早く。
『1歩でも1秒でもいいから、早く、森の外に。』
大好きな人の、最後の言葉になるとも知らず。
遠くで声がする。大好きな、みんなの、悲しい声。
1面は火の海。頰をかすめた風が熱い。
上手く呼吸が出来ない。苦しい。
でも止まってはいけない。止まってしまえば…。
あれ?どうして止まっちゃいけないんだっけ。
ど、うして、わたし、は、走っ、て…。
…。
あれ、お兄は、何処…。
み、んな、何処に行っちゃった…?
ねぇ、誰か、返事をして。
置いて、いかないで。