最終日の晩餐
今晩の晩餐会はどうやら前回は居なかったプレモーネにある大店の店主なども招待され初日よりも豪華で賑やかな晩餐会となっていて、料理に関しては日本の食材に加えこの世界の食材を使って和食や洋食、中華風のメニューが並んでいます。
「マサト、すまんが酒を追加しておいてくれ」
グランバルさんが晩餐会の挨拶前にそう言って来たので晩餐が始まる前に各種お酒類を追加しておきます。
そして晩餐の前に使節団の実質団長的な外務卿のロ二ストさんが挨拶をした後、グランバルさんが挨拶をします。
「今宵はバイルエ王国よりお越しいただいた使節団が明日このプレモーネを出立し帰路につくことになるが、今回の会談でバイルエ王国との間にある森を切り開き道を作って交易を大々的に開始する事になり、その他も実りある会談となった。これによりバイルエ王国とドグレニム領共に手を取り合い栄え発展していく事になると思う、今日はその祝いとお越しくださった使節団への感謝の晩餐となりますので、皆様、心ゆくまで料理と酒を楽しみ、お互いの親睦を図ってもらいたい。では乾杯!!!」
「「「「乾杯!!!」」」
グランバルさんの挨拶のあとは、使節団の人も招待された人々も料理や酒を手にし、それぞれ歓談を始めます。
自分は土田を探し出して話をします。
「土田、お前スマホは持って来てるか?」
「ああ持っているがそれがどうした?」
「いや、料理とか写真撮って戻ったら日本人に見せてあげたりしないのかと思ってな」
「まあスマホはあっても電池切れで使えないんだよ」
土田はアイテムBOXからスマホを出しますが、画面は電気が消え黒くなったままです。
「じゃあこれもやる、から充電でもしろ。とはいえ純正品じゃないから100%安全じゃないから万が一故障しても責任は取れんが・・」
そう言って魔力石を使った簡易電源を渡します。
「これは魔石を使った電源か?コンセントの差込口があるが、ここにコンセントを差し込めば電気が使えるのか?」
「そうだぞ、ただ魔石だと交換が必要だから魔力石を使ってるから交換の必要もなく壊れない限りは半永久的に使えるはずだけど、まあ試作してからまだ時間がそんなに経ってないから本音を言うどのぐらい耐久があるかは分からんが」
「魔力石を使ってるのか?そんな高価なものを使ったのをホイホイ人にあげていいのか?」
「まあ今の所在庫はそんなに無いがバイルエ王国にも日本人が居るから必要だろ?まあ一個じゃ取り合いになるかもしれんが、そこはスマンが土田が調節してくれ、あとこれ、タコ足コンセント」
「本当に何から何までスマンな、最初にプレモーネに来た時は田舎領主達と見下して高圧的な態度で無理難題を押し付けたのに」
「いや、あれは問題ないだろ、むしろあの格好で堂々と軍使だと名乗った土田の神経を疑いはしたが、こっちはそもそも戦争になってもドグレニム領側が圧勝するつもりで居たし、むしろロ二ストさんに聞いたが、土田以外に参加してた軍の幕僚達は拮抗した戦いだったと言ってたらしいが、土田だけが完敗だと言ってたと聞いたぞ」
「あれは誰がどう見ても完敗だろう、むしろ今思えば完全に遊ばれていた感じだぞ。あと何度も言うがあれが正装だ!」
「まあ確かに半分遊んでたな、とはいえ土田はともかく、幕僚連中は自分達に責任が降り掛かるのを避けるのに必死だったんだろうからあまり責められんよな」
そう言ってしみじみと土田と話をしていると、顔見知りの商家の人から土田を紹介してくれと声を掛けられます。
とりあえず、商家の人達に土田を紹介した後、料理を摘まみながら会場を観察していますが少し前に戦争をした相手同士とは思えないくらい和気藹々とした雰囲気のようです。
「マサト殿は休憩ですかな?」
そんな言葉をかけて歩いて来たのは外務卿のロ二ストさんです。
「ロ二ストさんこそ大勢が挨拶したくて列をなしてるんじゃないですか?」
「ははは、これはこれは、毎度マサト殿には手厳しいお言葉を頂きますな」
そう言って笑っていますが、さっきまで人に囲まれていたのでロ二ストさんも少し休憩なんでしょう。
「今回の外交はかなりバイルエ王国側が譲歩したと聞いていますが、よかったんですか?」
「マサト殿は耳も良いようですな、まあツチダ殿が軍使としてきた際に、交易の話を伺っておりましたから、こちらもある程度国内で話を纏めてから来てますので譲歩という程のものでもありませんよ」
「それは良かったです、帰ったらロ二ストさんが怒られないか心配していましたんで」
「これは、マサト殿に心配をして頂けるとは嬉しい限りですな」
そんな雑談を交わしていると、さすがに外務卿と挨拶をしたそうな人が集まってきたので、ロ二ストさんに軽く挨拶をしその場を離れます。
うん、自分が離れた瞬間にロ二ストさんが囲まれたよ・・・商人って怖いな・・。
「武内さん。」
そう声をかけて来たのは村上さんです。うんロ二ストさんから話を聞いた後ではその冷静そうな態度が反対に怖いよ?
「村上さんも料理とお酒を楽しんでいますか?」
「ええ、とても楽しんでいます。ただ外務省勤務だったって事で今回同行させてもらいましたが、何もしていないので心苦しいですがね」
「まあそれは仕方ないでしょ、なんだかんだ言ってもバイルエ王国とドグレニム領の外交ですから我々日本人は元から出る幕無いですしね」
「まあ確かに、それにしても今日、町見て周りましたがなんかプレモーネの町は何か栄えているのか、寂れているのかよく分からない感じですね」
「プレモーネがですか?」
「ええ、物が溢れているわけではないのに主食の米や小麦だけは豊富にある様に見えますが、その他の農産物は不足している感じですし、他の物も有る物はあって無い物は無い、そんな感じがしましたね。」
「確かにそうですね、バイルエ王国はどうなんですか?結構栄えて物には困らないんじゃないですか?」
「そうですね、まあバイルエ王国はプレモーネ程ではないですが、同じような感じがしますね、まあ聞く限り食料事情はどの国も同じみたいで、不足気味みたいですね。天候不順とかで収穫が落ちると飢饉になりかねないでしょう」
「やっぱり地球みたいに機械化して大規模農業をしてないと作物を作る量も限られてくる感じですかね?」
「そうですね、やはり農業も全てが人力だと収穫量にも限りがありますし。農薬や肥料もあまり普及してませんから、こんな異世界に飛ばされるって分かっていたらもっと農業とか産業とか勉強していたんですが・・・。まあ今更ですね」
「それは自分も同じですよ、もっと知識とかを学んでおけばよかったと思いますよ」
そんな雑談をしながら取りえず真偽は分かりませんがバイルエ王国の食料事情を聞き出せました。
交易の輸出品に米や小麦を加えてもよさそうです。
「そう言えば土田さんが、大浴場がバイルエ王国に作れるって喜んでましたけど、武内さんが何か用意してくれたんですか?」
「あ~、土田が風呂に使用している魔道具が欲しいって言ってたから明日の朝までに用意しとくって言ったんですよ。」
「それほんとですか?じぁあバイルエ王国に戻っても毎日広い風呂に入れるんですか?」
「まあ用意するのは魔道具ですから、風呂場と浴槽を作らないと風呂には入れませんよ」
「そうですね、確かに風呂場を作って浴槽を設置しないと入れませんね。自分としたことが嬉しい知らせで我を忘れてしまいました」
そう言って村上さんは笑っていますが、本当に広い風呂に入れる環境が整うのが嬉しかったようです。
とりあえず、明日までに大まかな設計図でも書いてあげよう。
まあ自分の絵や図を書く才能は壊滅的だから役に立つかは分からんけど・・・。
そう思いながら、村上さんには、迎賓館の風呂を見ておいて参考にして欲しいと伝えて、一旦調理場の様子を確認しに行きます。
「内田さん、丸山さん、野上さん、食材足りていますか?」
「ああ武内さん、食材は大丈夫です、どうですか晩餐会は、料理好評ですか?」
「ええ、料理もスイーツも大好評で来賓全員がパクパク食べてるんで食材が心配になって様子を見に来ました」
「それは良かった、月山さんに自分の店を出せるようにしてくれるって言われたんですが、日本の味付けがこの世界で通用するか不安だったんですよ」
「そこは全く心配いらないですよ、むしろ店を開いてしばらくしたら弟子入り志願者が押しかけて来て大変かもしれませんね」
「それは嬉しい悲鳴を上げる事になりそうですね」
そう言って料理人の3人と話をしたあと会場に戻ります。
うん、3人が店を出すのはプレモーネに居る日本人に希望を持たせる意味合いもあるので是非成功してもらわないと困りますから、全面的にバックアップを予定しています。
会場に戻ると、晩餐も終わりに近づいているようでグランバルさんが締めをしようとしていました。
ロ二ストさんが挨拶をしてグランバルさんの挨拶の後晩餐は終わりを告げ来賓が引き上げていきます。
「土田!」
土田を呼び止めて、風呂の件を話します。
「そうか、確かに魔道具だけ貰っても意味無いもんな、助かった、今晩は迎賓館の風呂を見て大まかな設計図作ってみる事にするよ。ただ迎賓館の風呂は石材なのに一枚岩から作ったような感じなんだがあれはどうやったんだ?」
「あ~あれの真似は出来んぞ、特殊なスキルみたいなもんだからな~、まあ浴槽以外は痛んだら交換が可能な木で作るのが無難じゃないか?あと排水が重要だな」
「そうだな、確かに、その辺も含めて設計図を作ってみる」
それにしても土田は自信満々に設計図を書くって言ってますがこの自信は何処から来るのか聞いてみたらどうやら日本では建築士だったようです。
本職なら問題なさそうだな・・・。
そう思いながら明日の朝に魔道具を届ける事を伝え迎賓館に戻る土田を見送ります。
さて、これからグランバルさん達と今日の情報収集の成果発表会だな・・・。
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