バイルエ王国との外交3
食事を楽しみつつ来賓者と軽く雑談をしているとグランバルさんが手招きをしています。
面倒だな・・・。
そう思いながらグランバルさんとロ二ストさんが歓談している場所に行くとグランバルさんはロ二ストさんを押し付けて他の来賓や使節団の人の所に足を運び始めます。
「これは、マサト殿、お初にお目にかかりますと言うべきでしょうか」
そう言ってロ二ストさんは握手を求めてきます。
「マサト=タケウチです、まあ先ほどはちゃんと挨拶をしていませんでしたから初めましてですかね」
笑顔で返し、こちらも握手に応じます。
「いや、バイルエ王国で一番強いツチダ殿と一騎打ちで引き分けた魔物使いとお聞きしていましたのでどのようなお人かと思ってましたが、何とも理性的で知的な方で安心いたしました」
うん?引き分けた?誰と誰の一騎打ちで?
「いえいえ、私もいきなり軍を率いて無理難題を押し付けてきたうえいきなり攻め込んで来る国だったのでどのような使節団が来るのか心配でしたが、理性的な紳士が来られたので安心しております」
「ははは、これはマサト殿に手厳しい挨拶をされましたな」
そう言って笑いながらロ二ストさんは笑顔で受け流します。
「そう言えば引き分けたとはどういう事ですか?」
「マサト殿ともあろう方がツチダ殿と引き分けたではご不満ですかな?まあツチダ殿は自分の完敗だと申しておりましたが、ツチダ殿と共に軍を率いていた将や護衛達はみな口を揃えて一進一退の攻防だったと申しておりました」
どうやら推測するに土田は自分の敗北を認め、その他の将官や兵士などは引き分けたが、一騎打ちに気を取られて奇襲をうけたとでも言って自分達の指揮の責任を取らされないように口裏を合わせたのでしょう。
それにしても土田が素直に負けを認めるとは思ってませんでしたが案外正直な性格なのかもしれません。
まあ、自分の欲望に正直な結果があの格好ですが・・・。
「それにしても、一騎打ちでツチダ殿を釘づけにしてその隙に魔物を軍にぶつけるとは、誰も考え付かない奇策ですな。わが軍もまんまと術中にはまって大損害を被りました」
「ああ~~、軍にぶつかって行った魔物は自分が使役したりした魔物じゃないですよ。完全に野生の魔物です。恐らく多くの人の匂いに釣られて集まってきたのでしょう」
そう言うとロ二ストさんは驚いた様子で何度か真偽を確認してきます。
「信じられないかもしれませんが、ネレースが大人数を転移させた結果大地が活発化して、魔物も活性化し餌を求めバイルエ王国兵に襲い掛かったんですよ」
「なんと、では森にまとまった軍を率いて入ったがために魔物の襲撃を受けたと?」
「そうなりますね。まあ本陣までは兵士を切り倒していきましたんで血の匂いで更に魔物が勢いづいたんでしょう」
「なんと・・・」
どうやらロ二ストさん自分が適当に言ったもっともらしいウソを信じてくれたようです。
「まあ勝負は時の運と言いますからね、次があればどうなるかは分かりませんね」
「そうですな、ただ前回の戦争の後、再度軍を編成し攻め込むという話が上がりましたが、ツチダ殿が頑なに攻めれば必ず負けると言っており不思議に思っておりましたが、森で争えば血の匂いで魔物が集まり戦争どころでは無くなるという事ですな」
「まあ恐らく土田が言いたかった事は違うと思いますが、そう思ってもらってもいいかもしれませんね」
「どちらにせよ、最終的にバイルエ王国は和平をとなりましたが争っていたらどれだけの血が流れていた事かわかりませんな」
うん、流れる血はバイルエ王国兵の血だけだけどね・・・。
「それにしても和平にと舵を切るの早かったですね」
「まあ神託があった後から各国とも軍備増強に転移者の捜索、それに魔物の活性化に増加ですし、これを機に領土拡張と考える国もあり少しの火種で戦争になりそうな情勢ですから、無駄に争うより手を取り合う事が可能なら手を取るに越したことはない、そう言ったところでしょうか」
「まあ、現に転移者を巡って戦争してますからね」
「はい、ネレース様が神託に豊かにする機会を得、繁栄を望む事が出来るだろう、とおっしゃられていましたので各国とも転移者の力を借り国を豊かにする為には戦争もじさないでしょうな」
「まあ、転移した日本人を確保しても知識が役に立つかも分からないのに戦争までするなんて日本人の自分には理解できないですね」
「確かにツチダ殿やマサト殿がおられた日本と言う国は平和で文明が発達していたと聞きますが、このヌスターロス大陸は大小幾つもの国があり魔物の脅威に不安定な食料事情等で常に争いと死が隣り合わせですから、そんな中で与えられたネレース様の神託です。各国とも転移者のお力をお借りしようとするのは当然の流れでしょう」
ほんとネレースが神託なんかするからこの世界が繁栄どころか混沌として来てるじゃん。
そう思いながらも、今一バイルエ王国が和平に舵を切った理由が他にもありそうな気がしますが、恐らくロ二ストさんはこれ以上は喋らないでしょう。
実際、ホントの目的が不明では和平は見せかけの平和と見るべきです。
「それはそうと、マサト殿は一人身ですかな?」
「ええ、まあ独身ですけど・・・、それがどうかしましたか?」
ええ、独身ですよ、年齢=彼女いない歴ですし・・。
そう思いつつ訝しがる自分にロ二ストさんが話を更に進めます。
「では、結婚などはされないので?」
「まあ相手も居ませんし、ここは自分の住んでた世界ではないですからね」
「そうですか、まあ今回はマサト殿にバイルエ王国の第4王女との婚礼の話もする為に来たのですよ」
「そうですか、まあとりあえずお断りは致しますが、日本人なら土田とかがいいんじゃないですか?」
「即答とは手厳しい、まあ確かにツチダ殿には先に婚礼の話をしたのですが断られましてな」
「ああ~~、俺は15歳以上は女と認めんとか言われました?」
「いえ、それなら第4王女14歳ですので問題ないのですが、ツチダ殿いわく俺のストライクゾーンはプラマイ15歳だ、との事で断られたのです」
それにしてもいきなり14歳の子供を押し付けて来るって異世界怖いな、ていうか土田のプラマイ15歳ってストライクゾーン広いな・・・。
「土田が?」
「はい、マサト殿の言われた15歳以上は・・。と言うのは確かムラカミ殿が言っておられましたが」
おい、あの国家公務員!!異世界で欲望を全開にしやがった!!
そう思いながら人は見かけによらないとしみじみ思います。
「ただムラカミ殿と第4王女では釣り合いが取れませんので、この度は和平の話と婚礼の話を持って参ったのです」
「そう言えば土田って何歳なんですか?」
「私が聞く限りが35歳と聞いていますが、年齢に比べ若く見えますな。因みにマサト殿はおいくつですか?」
「自分も35歳ですよ」
「ではツチダ殿と同じ歳ですな、ツチダ殿よりお若く見えます。是非とも平和と発展のために第4王女とのご縁を結びたいところでございますが」
いや、とりあえず、政略結婚とか御免だし、しかも14歳とかはこの世界では普通でも、日本人の感覚ではありえないでしょ。
それにしても土田のプラマイ15歳って20歳~50歳までがストライクゾーンとは・・・ある意味尊敬出来るな・・・。
「マサト殿。まあすぐに返事を頂かなくても大丈夫ですのでご一考ください」
「うん、とりあえず自分も20歳以上じゃないと不可ですから、それに和平の証だったらグランバルさんとこのお子さんとが良いんじゃない?」
「そうですな~、本来であればマサト殿とバイルエ王国との間で強固な繋がりを結べれば、バイルエ王国とドグレニム領も強固に結びつく事が出来ると思ったのですが・・」
「まあ自分はお断りしますが、グランバルさんとこの息子さん12歳だから年齢的にもちょうど良いでしょうから、グランバルさんとこがいいですよ」
「左様ですか、ではそれについては持ち帰って国王と検討させて頂きます」
「そうですね、そうしてください、まあ自分はドグレニム領を拠点にしますんで、何かあればグランバルさんに口添えしますよ」
「でしたら、その際はお願い致しましょうかな」
そう言い笑いながら歓談を続けましたが、それ以上は雑談程度で情報を引き出すことはできませず、晩餐も終わりを迎え、使節団の人も迎賓館に戻っていきます。
「土田!!」
そう言って土田を呼び止め酒の持ち帰りは許可されたのか?と聞くと、肩を落とし駄目と言われたとの事です。
「まあ普通は駄目と言われるよな、まあこれやるから元気出せ」
そう言って缶ビールを3ケースとおつまみ詰め合わせ2袋をアイテムBOXから出して土田に渡すと満面の笑みを浮かべてスキップしながら迎賓館に帰っていきます。
ていうかあれだけ食って飲んでいたのに全然酔ってないし、土田は酒豪なのか?
「武内さん、私にも日本酒お土産にいただけませんか?」
そう言って村上さんが後ろから声を掛けてきます。
うん、ビックリしました。
「まあいいですよ」
そう言って一升瓶を渡すと村上さんも嬉しそうに迎賓館へ向かいます。
ていうか村上さん・・・あんたロ二ストさんの話を聞いた後だと即通報レベルの危険人物にしか見えんよ。
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