バイルエ王国との外交2
「マサト、今から迎賓館の増築を急ぎで頼めるか?」
「今から増築ですか?」
何を思いついたのか、いきなりグランバルさんが迎賓館の増築をと急に言い出します。
「そうだ、迎賓館に風呂を作ってくれ。広さは領主館にあるサイズより少し大きいぐらいでいい」
「少し大きいぐらいって、領主館より豪華にしろと?」
「まあそういう事だ、日本人が使節団に加わっているという事は、風呂があれば気も緩むだろう」
「そうですかね~。まあとりあえず増築はしますので安心してください」
そう言ってグランバルさんが案内の人を呼びその人の案内で迎賓館に向かいます。
場所は1階のリビング近くに設置をすることにしてアイテムBOXから採掘してきた5×5メートル程の石を5個程出して錬成術で加工をし、内部を少し豪華な感じにしたうえで魔道具を設置します。
シャワーは無いのでシャワー代わりに打たせ湯的に上からお湯が落ちる仕組みも作り、石鹸、シャンプー・リンスを用意し、脱衣所にはショッピングモールに入っていた100均のタオルとバスタオルを置いておきます。
「まあこれでいいでしょう」
ホントはドライヤーとか歯ブラシなども置こうかと思ったのですが、土田や村上さんなどの日本人に何処から仕入れたのかなど聞かれるのも面倒なので今回は何も置かないでおきます。
風呂の制作が完了したころには夕方近くになり、一旦使節団が迎賓館に来るとの事なので急いで退散し領主館に戻ります。
「グランバルさん、風呂の設置完了しましたよ。ただ使い方教えないといくら日本人でも困ると思うので誰かわかる人を説明要員として派遣したほうがいいと思いますね」
「そうか、確かにそうだな、じゃあこれから使節団を案内する人員に風呂の説明が出来る奴を入れるように手配する」
そう言ってグランバルさんがテキパキと指示を出していきます。
「マサト、晩餐までまだ時間があるから、料理の方を様子見してくれ」
「わかりました」
そしてメイドさんに案内され調理場に向かうと3人程の日本人と領主館の料理人さんが協力して料理をしています。
「ああ、武内さんだったっけ、食材と調味料ありがとうございます。これだけあればかなりの物が作れますよ」
そう声を掛けて来たのは内田さんという方で、どうやら洋食屋さんで料理人をされているそうで、もう一人は丸山さんといい、こちらは和食の料理人さん、そして野上さんがパテシエだそうです。。
領主館の料理人さんは2人の調理法や初めて見る調味料に食材とで驚きの連続でプライドとかをかなぐり捨てて2人の手足のように働いています。
うん、この3人にはお店を持たせて洋食と和食そしてケーキなどの甘味をプレモーネに広める要員として頑張ってもらおう。
そう思いながら足りない食材や調味料の確認をし提供できるものは提供をしていきます。
3人の日本人がそつなく調理を進めているのを確認しとりあえずグランバルさんがいる所に戻り進捗を報告します。
「そうか、万全か」
「そうですね、まあこの世界の人が日本の料理が口に合うかは不明ですが使節団にいる日本人はかなり喜ぶはずです」
そう言うとグランバルさんは安心した様子で、今後の方針を語ります。
とりあえず、明日以降の交渉は外務卿とその部下、そしてグランバルさんと内政官的な人で話を進めるとの事で、とりあえず自分は今日で用済みとの事ですが、いつでも領主館に来れるよう自宅待機を命じられます。
とりあえず、今晩の晩餐であまり喧嘩を売らないように釘を刺され、用意された控室で晩餐まで休んでくれとの事ですので用意された部屋で休むことにします。
控室のソファーでうたた寝をしているとメイドさんが晩餐の準備が整ったと呼びに来てくれたので案内されるまま晩餐会場に行くとどうやらバイキング方式の立食のようです。
グランバルさんに確認をしたら、舞踏会のような場合は立食ですが、使節団とかが来た場合は本来コース形式が普通だそうですが、今回は日本の料理がメインでメニューも多いため立食にしたそうです。
うん、土田とかが皿に料理を山盛りにしてガッツく姿が目に浮かびます。
ただあのサングラスで決め台詞を言うとイラっとしますが、極力ツッコミは控えるようにしましょう。
そう思いながらグランバルさん達と雑談をしていると使節団の人達10数人が案内されてきます。
「これはグランバル殿、このような豪華な晩餐をご用意いただき誠にありがたく思います」
そういうロ二ストに笑顔でグランバルが応対します。
「本来ならば腕によりをかけたコース料理にしようと思っていたのですが、自慢の料理を色々食べてもらいたいので立食にさせて頂きました、田舎領主の不作法ですがお許し下さい」
「いえいえ、これだけの料理、それに見たこともないものもあるので食べるのが楽しみです」
そう笑顔で歓談しながらこの世界のお酒を注いだグラスをメイドさんが配っていきます。
そうやら最初はこの世界のお酒、そして日本のお酒を出すようです。
全員にグラスが行き渡った頃を見計らいグランバルさんの挨拶が始まります。
「この度はバイルエ王国より友好的な国交を結ぶためにわざわざ来てくださった使節団の皆様を歓迎する晩餐なので、ご来賓の皆様、是非料理と酒を堪能し親睦を深めましょう。なお、この度は立食形式でお好きな料理とお酒をお楽しみいただけるの是非ご堪能ください。それでは、乾杯!!!」
「「「乾杯!!!」」」
そう言って立食の晩餐が始まります。
グランバルさんは外務卿のロ二ストさんやその他の人たちから挨拶を受け歓談をしています。
うん、つい先日戦争をした間柄とは思えない感じです。
「うぉ~!!ハンバーグにオムレツ!!肉じゃがにパスタ!!どうなってんだぁ~!!餃子まであるじゃんか」
会場の一角の料理が並んでいる方から何か聞き覚えのある、そして予想通りの声が聞こえてきます。
「ビールまである!!」
うん、月山部長がビールは必須って言うんで追加料金を取って瓶ビール20本提供したんです。
「まじか!!こっちはポンシュに焼酎、ウイスキーにワインまでてかこれ日本で売ってる酒じゃんか!!!」
そういう叫び声がした後、料理を山のように乗せた皿を持った土田が小走りでこちらに来ます。
「これはどういう事だ、何で日本の酒や料理があるんだよ?」
「なんで俺の所に来るんだ!!まあいいけど、料理は転移した日本人が作ったんだよ、酒は偶然手に入れたんだ、文句あるなら飲み食いしなくていいぞ?」
「いや、文句はない!そして食うし呑む!!ただ出所が気になったんだ」
「まあ在庫はボチボチあるが他人に回すほどは無いから土産とかは諦めろ」
「いや、ボチボチあるなら少しは土産によこせよ!」
「こっちにも日本人は多いから今のところほかに回す余裕はないんだよ」
「今のところ?じゃあ今後は可能なのか?」
うん、土田のくせに鋭いツッコミだ・・・。
「まあ余裕が出来れば交易品の中に入れてこの世界に広めるつもりだね。てか醤油や味噌ぐらい自分たちで製造しろよ!!てかバイルエ王国にいる日本人の中に知っている人が1人か2人ぐらいいるだろ?」
「そうか!その手があったか、そうだよな、帰ったら即刻、聞き込みして探してみる」
そうって踵を返し料理が並んでいるところに戻ろうとする土田に風呂の件を質問します。
「風呂?風呂だと!ここに風呂があるのか?」
「いや、この晩餐会場に風呂は無いしあったら怖いだろう」
「いや、そういう意味じゃなくて、この町に風呂があるのか?」
「案内の人に聞いてないの?」
「いや、とりあえず迎賓館に案内された後は、晩餐会の会場では押さない、走らない、騒がない、飲みすぎない、余計なことを言わないとか、マナーや注意事項の説明を聞いていたからな」
「そうか、ちなみにお前、今言った注意事項を現時点で何個破った?」
「全部守っているに決まっているだろう、これでも国を代表してきてるんだぞ!!」
「そうか、外務卿のロ二ストさんは大変だな・・・」
そう言ってしみじみと同情をしていると土田は風呂について質問を繰り返してきます。
「いや、迎賓館に設置されてるから、お前がこの晩餐で泥酔しなければ風呂を堪能できるぞ?」
「俺が泥酔するわけないだろう」
「まあ、今晩飲まなければ今後しばらく飲めないけどな。」
「なあ、思ったんがだ余ったお酒はお持ち帰りしていいのか?」
「それは知らん、グランバルさんとロ二ストさんが良いって言えばいいんじゃない?」
そう聞いた土田は即座に許可を取る為グランバルさんとロ二ストさんの歓談に割り込むべく踵を返します。
様子を見ていると、歓談を邪魔されたロ二ストさんが苦虫を噛みつぶしたような顔をした後、やや呆れた顔でで首を横に振っています。
まあそうなるよね・・・まさかホントに行くとは・・。
そして土田はというと肩を落とし料理コーナーに向かっています。
恐らく今日の料理と酒をしこたま堪能する方向にシフトチェンジしたのでしょう。
うん、土田は外交の場には向かんね、何で連れて来たんだろう?
そう思いつつ会場を見渡すと、もう一人の日本人である村上さんが、ドグレニム領の内政官の人たちと歓談をしています。
さすが外務省勤務だけあって浮ついた様子もなく流石、っと思いましたが彼の左手には一升瓶が握られています。
さすがに外務省の職員だった人でも日本で売っている酒には勝てなかったか・・・。
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