バイルエ王国との外交1
94日目
本日は、バイルエ王国の使節団が到着する予定の日の為、朝から家にグランバルさんの使いの人が来て領主館に連行されます。
「いや、何も迎えに来て領主館に強制的に連れてこなくても、使節団が来たら自分で来ますのに」
そういって抗議をしますが、グランバルさんに、あてにならんと一蹴されます。
「それよりマサト、お前その格好で出席するつもりか?」
「そうですよ。まあこれが自分の標準装備ですから」
「まあ、確かにみすぼらしくは無いが、使者を迎え入れる際の服装としてはどうなんだ?」
「そうですか?これでも二本角の一角地竜の皮を使ってデムズさんが作ってくれたロングコートとベストなんでそれなりの品だとおもいますよ?」
「あのデムズが作ったのか?よくマサトの希望通りの品を作らせたな」
「まあ日頃の行いですかね」
そう笑いながらグランバルさんと雑談をしつつ、使節団が来た後の会食用に日本のお酒と食材を用意します。
「とりあえず、有料ですがこれを出せばグランバルさんの株は上がりますがどうします?」
「とりあえず飲んでみないとわからんがいい酒か?」
「そうですね、デムズさんが大いに気に入ったようですが・・」
「アイツは酒なら何でもいいタイプだからあてにならん」
「じゃあワインですが飲んでみます?」
ものは試しとアイテムBOXから赤ワインと白ワイン、ウイスキーと日本酒、焼酎を出しコルクを開けます。
「赤は肉料理・白はチーズや魚などに合いますよ」
そういってグラスに4種類のお酒を少量入れてグランバルさんに飲ませてみます。
「マサト、これはどのくらい用意できる?」
「まあ今開けた分を除いて各10本づつくらいなら出せますよ」
「そうか、で?いくらだ」
「そうですね、各一本5千レンでいいですよ」
「5千レンだと?高すぎだろう」
「いえいえ、日本の酒ですし、グランバルさんの株が上がるんですから、その位は覚悟してください。」
そう言われるとグランバルさんもそれ以上値段交渉をするわけにもいかなくなったのか食材を含め言い値で総額50万レンで食材とお酒各10本づつお買い上げ頂きました。
うん、大体1千レンが日本でいう1万円ぐらいだからかなりのぼったくり価格ですが領主のメンツや株を上げるためなら出費を厭わないようです。
「それでマサト、食材は用意出来たとして日本の料理は誰が作るんだ?」
「そうですね、、自分は料理人ではないんで、月山部長に料理が得意な日本人を紹介してもらい作って貰うのが一番だと思いますよ」
「わかった、すぐにツキヤマに使いを送る、マサトは食材をすぐに用意しろ!」
そういうとグランバルさんは月山部長への使いをすぐに走らせます。
日本でもそうだけど異世界でもつい先日戦争をした国の使節団が相手でもそれ相応の饗応をするもんなんだな・・・。
「で?グランバルさん、今回の使節団ですが、再度前回同様の要求をしてきた場合はどうするんですか?」
「そんなの言わなくてもわかってるだろう」
「まあ確かに、じゃあ国交を結び交易を盛んにという場合は?」
「その場合は条件次第だな、マサトが提案した道を作る場合、こちら側に砦建設を認めさせるのが大前提だ」
「確かにこちらの防衛体制を認めさせないと道づくりは認められませんけど、実際の所、今回も出たとこ勝負でしょうかね?」
「そうだな、相手の出方を伺って、場合によっては数日かけての交渉だろうな」
「長期交渉となった場合はグランバルさんと月山部長にお任せしますんで」
「お前な~。少しは当事者であることに自覚を持てよ」
そう言って投げやり気味の自分にグランバルさんは呆れた感じのようです。
数日も座ってお互いの腹の探り合い見たいな事は年配者と領主にお任せです。
グランバルさんと雑談をし昼食を領主館で食べていると、使節団が見えてきたと門の守備隊から報告がありました。
「じゃあマサト、お前も出迎えに参加しろ」
「自分もですか?」
「そうだ、まあ何かあった時の備えと相手への威嚇だ」
どうやらグランバルさんの中で出迎えに関して自分が行くのは確定のようです。
あきらめて領主館を出てラルにまたがり門に向かいます。
「マサト、領主がのる馬よりいい馬に乗るってどうなんだ?」
「でしたらフォレスホースを生け捕りにとかギルドに依頼したらいいじゃないですか」
「全く、そんな依頼なんか達成出来る奴はそうそう居ないだろう」
そんな雑談と軽口を叩きながら門に到着すると門の前では兵士が正装で並び出迎えの準備を整えていました。
「来る途中も兵士さんが正装して立ってましたけどこんなに大々的に迎えるもんなんですか?」
「まあとりあえずは門を通った瞬間に外交は始まっているようなもんだからな」
そう言ってグランバルさんは表情を引き締めます。
既に領主館にはギルドマスターのバンズさん、兵士長のタロイマンさん、年配兵士マイルセンさん、内政官的な人に月山部長が待機しているので、あとは自分とグランバルさん、そして守備隊隊長のアモンさんが使節団と共に領主館に行けば、本格的な話し合いの始まりです。
「バイルエ王国 使節団、ご到着!!!」
門の上から大きな声で到着を知らせる声が聞こえると、門がゆっくりと開き50人程で馬車を数台引き連れた使節団がゆっくりとプレモーネに入ってきます。
グランバルさんが進み出て使節団の護衛責任者らしき人と少し言葉を交わした後、馬首を返し自分とアモンさん、そしてグランバルさんの先導で使節団が領主館に向かいます。
領主館に着くと饗応係りの人が護衛の人たちを宿舎に案内し、外交官などを領主館の待合室に通す手筈のようです。
グランバルさんをはじめ自分とアモンさんは領主館の前まで先導しその後は饗応係に引き継ぎ先に会談場所に向かいます。
「なんか手間がかかりますね」
「まあ外交なんてそんなもんだ」
そう言いながら会談を行う部屋に行き席について外交官の到着を待ちます。
しばらくして、案内係の人に先導され外交官が室内に入り挨拶をした後、席に座り会談が始まります。
前回は痛い人が軍使として来ていましたが、今回は・・・・、いや今回も来ていました。
「すいません、会談を始める前に一言いいですか?」
グランバルさんが話を始める前に先にツッコミを入れないといけない気がしたので発言を求めます。
「マサト、何かあるなら先に言ってくれ」
そう言ってグランバルさんが発言を許可してくれたので遠慮なく発言をさせてもらいます。
「ていうか土田お前、前回はシ〇アで来たのに、今回は何でク〇トロバジ〇ナ風なんだ!!」
「これが若さだからさ・・・・」
「いや、微妙にセリフ変わってない?てか使いどころも間違ってないか?」
「ふっ、君みたいな人がこの場にいるとは、私もよくよく運のない男だな」
「いや、ホント、前回の戦いの際に見逃さずに追撃して打ち取っておけば良かったと今頃後悔してるよ」
「まあそれは君が、坊やだからさ!」
そう言って土田はなり切った感を出していますが自分は殺意が沸々とわきあげってきますが、ツッコミをしてしまった自分が負けたような気がしてきます。
「まあ、いいけどやるなら徹底的にやれよ、なんで毎回黒髪なんだ!!」
「仕方ないだろう、この世界でどうやって金髪にすればいいってんだ!!」
そう言って逆ギレ気味に土田が言い返します。
「とりあえずこれやるから金髪にでもしろ、やる事がいちいち中途半端でイラつくんだよ」
そう言ってアイテムBOXから金髪用ヘアカラーを5個程出し土田に投げつけます。
「お前、これどうしたんだ?」
「偶然手に入れたんだよ。文句があるなら返せ!」
「いや、大切に使わせてもらう、それにしてもお前いい奴だな・・・」
「黙れ!!その中途半端さに殺意が湧くんだよ」
「そんなこと言って、お前実はツンデレだろう」
そんなことを言いだした土田にイラっとしながら刀に手をかけます。
「とりあえず、前回の続きをしようか・・・」
「まあまあ、土田さんが中途半端でウザいのは今に始まった事ではありませんし」
そう言って話に入ってきたのは眼鏡をかけた20代後半位の男です。
「ああ、申し遅れました、私は村上剛と申します。日本では外務省で勤務していました。まあ土田さんは置いといて、本題の話に入りませんか?」
村上と名乗った日本人はどうやら外務省で勤務していたとの事で今回の使節団に加わった可能性があり、今回の使節団の目的に関して油断できない可能性が出てきます。
「まあそんなに構えないでください、私は外務省勤務と言っても事務方で書類仕事専門の部署ですから外交なんて初めてなんですから。それに日本の外交は弱腰外交で有名ですし、私みたいな下っ端が本格的な外交何て出来るわけないじゃないですか」
笑いながら村上さんは言っていますが要警戒人物として認識をしておきます。
「マサト、日本は外交が弱い国だったのか?」
「そうですね、自分が知ってる限りですが、相手が強気に出ると結構及び腰になる外交でしたね。」
「そうか、まあ今回は、わざわざバイルエ王国から使節団が来てくれたのだから、まず話を聞こう」
そう言ってグランバルさんはバイルエ王国の申し出を先に聞く姿勢を取ります。
「では、お初にお目にかかります、私はバイルエ王国で外務卿をしておりますロ二ストと申します。この度は、先日我が国がドグレニム領に攻め込んだ非礼のお詫びと今後の国交について話し合いをしに参りました」
ロ二ストさんは外務卿と言うだけあって丁寧な口調で今回の目的を話します。
「ではバイルエ王国は先の戦争の非を認め、その上でドグレニム領との国交を結ぶ目的で来られたと」
「はい、先の戦争に関しては一方的に我らが攻め込んだのですから言い逃れはできますまい、その上で先の戦争の際、そちらから提案された森を切り開きバイルエ王国まで直通の道を作るとのお話、ドグレニム領のみならず、バイルエ王国にも多大な利がある為、その話をさせて頂きたく参りました」
「それは、攻め込んで来て惨敗を喫したら、次は交易で利を得る、少し都合が良い気もするが?」
「左様で、なのでこの度は我々は、出来る限りドグレニム領側の要望を飲むつもりでこの場に来ております」
そう言ってロ二ストさんは頭を下げ低姿勢で話を進めます。
「ではこちらの要望や希望、それにそちらの希望や要望もあるだろうからそれは明日以降話し合って詳細を詰めてたうえで持ち帰ってもらうと理解していいのかな?」
「そうですね、ただこの度はある程度私に権限が与えられておりますので、それなりの事は決められます」
「そうですか、だったら話が早くまとまり国交、そして交易が早くに実現するかもしれんな、まあ取り合えず長旅の疲れもあるでしょうから、今晩はドグレニム領の総力を挙げた晩餐を用意しておりますのでそこで食事などをしながらお互いのわだかまりを少しでも解きましょう。
まあそれまで部屋を用意してますからそちらでお寛ぎください」
そう言ってグランバルさんは笑顔で使節団を控室に案内するように伝え、使節団は退出します。
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