防戦計画
お読み頂き誠にありがとうございます。
頑張って1日1話の短いスパンで投稿できるように頑張ります。
また本日、日間300位圏内に浮上致しました。
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「アルチ、プレモーネの町まであとどのぐらい?」
「このペースで走れば昼前には町に着きます」
自分の前を走るアルチの予測では昼前到着との事です。
「もっとスピード上げたらどう?」
「我々ならともかくマサト様がこの暗闇でこれ以上早く走るのは危険です」
基本的に森を住処にするサンダーウルフが言うのですから障害物の多い夜の森で人間がこれ以上の速度で走るのは危険だとの判断のようです。
まあ、無理して途中で怪我でもしたら町への到着が更に遅くなる恐れがあるからアルチに従った方が無難そうです。
そう思いながらアルチの背を追うように走ります。
恐らくアルチや他のサンダーウルフ達が走りやすく障害物の少ない道を選んでくれているのでしょう、あまり障害物に足を取られることもなく順調に走り続けます。
64日目
アルチの見立て通りプレモーネの町には昼前に到着出来ました。
門をくぐるとアモンさんが駆け寄ってきて馬車に乗るよう促します。
「アモンさんラルに乗って行きますんで大丈夫です。あとアルチ達が帰ってきたら領主館まで連れてきてあげてもらえます?」
「アルチ達はウルチが偵察している国境付近の偵察に行って、動きがあったら逐一知らせて!」
そう言ってラルに跨り領主館を目指します。
「ラル、安全走行でね、人にぶつかったりしたらダメだよ」
そう言って全速で走り出しそうなラルに安全第一を厳命します。
うん、急いでるから鞍とか鐙付けてないからね、全速で走られると絶対に振り落とされるからね。
ラルも大通りには多くの人が居るからか馬車よりは少し早い程度で走ります。
後ろからは馬に乗ったアモンさんと数人の兵士が追って来ています。
アモンさんも領主館に呼ばれてるんだ。
領主館に着くとすぐに会議室のような所に通されます。
「マサト、戻ってきたか」
そう言ってグランバルさんは広げた地図を指で指しながら現在手元にある情報を説明してくれます。
どうやら現在わかっている最新の状況は膠着状態、ウェース聖教国は小競り合いがあった直後。近隣の守備隊に伝令を送り400人程を国境に集結させ、バイルエ王国軍は国境周辺に伏せていた300人程の兵で対峙している状態みたいです。
当初1回だけ戦闘になったそうですが両軍とも大した損害もなく、しばらくしたら戦闘も収まり睨み合い状態になったとの事です。
「両軍とも援軍要請しているでしょうから本体の到着待ちってとこですかね?」
そう言うとグランバルさんは恐らく、とだけ言い地図を見続けています。
それ以上の情報が無い中で地図を睨んでいてもどうにもならないのですが領主の身からするとそうも言ってられないんでしょうね。
そう思いながら自分とアモンさんは椅子に座り情報が入るのを待ちます。
暫くするとなぜか月山部長に兵士長のタロイマンさん、ギルドマスターのバンズさん、副ギルドマスターのウィザーさん、それと初めて見る年配の兵士さんが会議室に入ってきます。
年配の兵士さんはマイルセンさんと言うらしく兵士長のタロイマンさんがまだ新兵だった頃の副兵士長だった人だそうです。
「とりあえず全員集まったか」
そう言ってグランバルさんも席に座ります。
「グランバルさん、月山部長と自分がこの会議に呼ばれた理由を一応説明してもらえますか?」
「それはツキヤマは日本人代表として、マサトは一戦力として数えるだけの力があるからだ。
そう言うとグランバルさんはさっき自分に話した状況を全員に説明をします。
説明が終わると兵士長のタロイマンさんが口を開きました。
「現在プレモーネには守備隊を除いた兵500の兵がいつでも動ける状態で待機しております。日本人保護の為に国境に向かわせていた200を合わせれば700の兵がすぐ動かせます」
タロイマンさんがそう言い終わるとバンズさんが続きます。
「現在町には冒険者が150人程居る、全員が参加するかは不明だが100人ぐらいは参加するだろう」
どうやら現状の兵力の報告のようです。
アモンさんとウィザーさん、年配兵士のマイルセンさんは黙ったままです。
「少しいいですか?」
そう言って月山部長が声を上げます。
グランバルさんが頷くのを確認し月山部長が話始めます。
「今回発生したウェース聖教国とバイルエ王国の戦争はこのプレモーネの町にまで影響を及ぼすのですか?話し合いで解決とかは出来ないのですか?」
そう言ってグランバルさんの目を真っすぐ見ます。
「影響を及ぼすかどうかは現状分からん、ただ話し合いでの解決は無理だ、落としどころが無い」
そうグランバルさんが言い切ると月山部長はまだ何か言いたそうにしています。
「実際、戦況によっては最悪ドグレニム領に攻め込んで来る可能性もあるし、こちらには来ない可能性もある、ただ、両国から見たら自分たちが確保しようとした日本人がドグレニム領側に横取りされた形になっている訳ですからこちらに軍が向かって来る可能性も高い」
そういう事ですよね。
そう言うとグランバルさんは頷きます。
「攻め込んで来るとなると、今回、保護した日本人を奪い返すどころかプレモーネを攻め落とし日本人全てを奪い取る可能性もある」
「それなら近隣の領主の人に援軍を要請しては?ロータンヌ共和国は領主の集合体で成り立っているんですよね?戦争になったら近隣領主が援軍を送るのが普通なのでは?」
そういう月山部長にグランバルさんが難しい顔をしながら説明をします。
「実際、取り決めでは万が一戦争になった際は近隣領主から援軍を送る取り決めになっているが、今回の場合はこちらが攻め込まれる口実を作った形になるからな、その場合は近隣領主が動くかどうかは分からない。仮に動いたとしても見返りに何らかの要求をしてくるだろう」
そう言われて月山部長は黙り込んでしまいます。
恐らく国と国や領主と領主の間に腹黒い暗闘があることに気が付いたのでしょう。
「因みにグランバルさん達の見立てではバイルエ王国とウェース聖教国、双方どのぐらいまで兵力が膨れ上がると思いますか?」
そう言うとグランバルさんは少し考えてから両軍共に少なくとも1千、多くて4千~5千との予測を立てます。
「そ、そんな・・」
多くて4、5千と聞いた月山部長は顔が青ざめています。
確かにこちらは7、8百人で相手は最大4、5千、普通に考えたら負けが確定しています。
「まあ月山部長落ち着いてください。その4、5千の兵がドグレニム領に攻込もうとしている訳ではないですから、あくまで両国が争う為に集める可能性がある人数ですし」
そう言って月山部長を安心させます。
「確かにな、その数で攻め込まれたらドグレニム領はひとたまりもない」
「まあ現状はそうですよね。一番いいのは両国が全力でぶつかって双方共に多くの損害が出てくれれば一番いいんだけど、片方が大勝した場合もまずいですが、最悪なのが両国が手を組んだ場合ですね」
そう言うとグランバルさんは両国が手を結ぶ事は無いだろうと鼻で笑います。
「そうですか?戦闘があったとはいえ双方とも合わせて死傷者は100人にも満たないでしょうからその程度の損害には目を瞑って利益を求める可能性は少なからずあると思いますけど?」
「利益だと?」
「利益です、両国が手を結ぶに値する利益、ドグレニム領に居る日本人を全員差し出せとかですかね」
そう言うとグランバルさんの顔が引きつります。
「実際ドグレニム領にはまだプレモーネには到着して居ない日本人を含め150人~200人近くいる状況です。それを半分ずつ戦利品として分けるとしたら両国とも手を結ぶ可能性もあるのではないですか?」
「確かにな・・・」
そう言ってグランバルさんは思案にふけっています。
「その場合は迷わず日本人を引き渡すしかありますまい」
そう言って口を開いたのは年配兵士のマイルセンさんです。
「しかしだな・・。」
そう言いかけてグランバルさんは黙り込みます。
「まあそうなるでしょうね、マイルセンさんのいう事はドグレニム領を守るためには最善ですから」
そう言うと月山部長が何を言ってるんだという顔で自分を見ます。
「まあ月山部長、実際大勢の死者を出さないようにするのがグランバルさん達の仕事です。それを無視して自分たちを守れとは言えませんよ」
そう言うと月山部長は何か言いたげですが黙り込んでしまいます。
「とは言えむざむざ他国への戦利品として引き渡されるつもりはありませんからグランバルさん達が戦争回避を望んでも自分は抵抗させてもらいますよ」
「一人でどうやって4、5千、両国が手を組んだら1万と戦うってんだ?」
「まあ悪知恵や悪戯、それに嫌がらせは嫌いじゃないですし、ゾルス達が戻ればゴブリン軍団が500は居ますし」
「500だと?以前は100って言ってただろう」
「いやなんかいつの間にか500位になってました」
そう言うとグランバルさんは呆れた様子でこちらを見ています。
「まあ今は今回転移してきた人を護衛していますのでプレモーネに到着するのは8~9日後ぐらいになりますが」
「で?具体的にどうするつもりだ?」
「そうですね。まずプレモーネにつながる森の道に魔物の死体を撒きます。これでいくらかは魔物が道沿いに集まるので多少行軍速度は落ちるでしょう」
「それだけか?」
「あとは夜な夜なアルチ達に野営地近くで吠えさせるなりして常に周辺警戒が必要になるようにします。まあ警戒にあたっている兵士数人はアルチ達に襲わせて殺害しますが・・」
「それで?」
「最後は森を抜けたところで待ち構え力押しです」
「それで1万の軍をどうにかできるとでも?」
「まあ全滅は無理でもそれなりの損害は与えられるでしょう。実際森の出口で待ち構えれば相手は行軍形態のままでの戦闘になり、こちらは道の出口を塞ぐ感じで戦えます。さらに後続に森の魔物をアルチ達に追い込ませて敵軍にぶつければ後続が混乱します。後ろに不安があると前線の兵士は不安に駆られます」
「魔物を追い込むってそう簡単にできるわけないだろう」
「それがそうでもないんですよ、この前採石場で試したら追い込み過ぎて朝から夕方まで魔物を殺戮する羽目になりましたし・・・」
「おまえ、採石場でそんな事してたのか?」
「まあ100匹くらいかな~と思ってたんですがなんか大量に追い込んじゃって。なのでアイテムBOXには魔物の死体が沢山ありますので可能ではあるんですよね」
そう言うとグランバルさんをはじめ全員が完全に呆れた目で自分を見ます。
いや、そんな目で見られても・・・・。
「確かに、その策がうまくいけば大軍の足止めにはなりますな」
年配兵士のマイルセンさんとしては足止め程度が限度と言いたいようです。
「まあ1万を相手にするならば完全に追い戻すのは無理かもしれませんが、突破された場合でもまだ策はありますよ」
そういうとマイルセンは眼を細めこちらを見て先を促します。
「自分は死霊術が使えます。まあ言いたいことはあるとは思いますが森を突破された場合、戦場となった近辺で死んだ兵士や魔物を死霊術で動かして軍の後ろから襲撃させます。これは森での戦闘で被害を与えた分だけこちらの手駒が増えます」
「死体を手駒として使うか・・・・」
「はい、死んだはずの仲間が動き出して襲ってくる。兵の心理的ダメージは計り知れず士気の低下はまぬがれないでしょう。最終的に攻め込んで来た軍は町と死者に挟撃される形になります」
目を閉じで聞いていたマイルセンさんがゆっくりと目を開きこちらを向きます。
「それなら撃退は出来るかもしれんが、だが戦いの後はどうする?死者を操り冒涜したといわれかねんぞ?」
「まあそこは大義もなく攻め込んで来たんですから追い返す方法に大義はいらないでしょ?それに死者を操ったってこちらが言わなければそうそう相手も気が付かないでしょうし」
「まあ確かにな。敵軍からしたらなぜ死人が大量に襲ってくるか理解も出来ず混乱するか・・・」
そう言って月山部長以外は何となく納得してくれているようです。
「月山部長は反対ですか?」
そう言うと月山部長が自分の方を見て口を開くか開くまいか悩んでいるようです。
「月山部長の言いたいことは分かります。異世界だろうと殺人を犯すのはどうなのか?また死人に鞭を打つ行為はどうなのか?何とか平和的に解決できないのか? ですよね?」
「そうだな・・・綺麗ごとを言っているのは自分でもわかっているが・・」
そう言って月山部長は黙り込んでしまいます。
「他には領内に進軍してきた軍を追い返す方法はないか・・・」
そう言ってグランバルさんは天井を見上げます。
グランバルさん的にも自分の立てた作戦は例え勝利をおさめ敵軍を追い返したとしても気持ち良いものではないのでしょう。
「とはいえまだドグレニム領に敵が攻めて来るとは決まったわけではありませんしまずはサンダーウルフ達の報告待ちですね」
それはグランバルさんも思っていたようで、情報が入り次第再度各自を招集する旨を通達して解散となります。
「武内君、もし軍が侵攻して来た時は、さっき言っていた作戦は本当に実行するのか?」
帰り道月山部長が真剣な顔で話しかけてきました。
「はい、他に作戦が無ければ実行をします」
「そうか・・・」
月山部長はどうしても納得が出来ないようです。
「おそらく月山部長の考えは正しいとおもいますよ。どんなに綺麗事を並べても人殺しの算段をしていただけですから・・・。ただ自分はこの世界でやっと得た今の拠点、知り合った人達、仲間達を捨てて、国同士の道具みたいに扱われるのが気に入らないんですよ」
そう言う自分に月山部長は返事をしませんでした。
お読み頂きありがとうございます。
またブックマーク・評価を頂きありがとうございます。
拙い文章・誤字脱字が多く読みづらいかと思いますがお読み頂ければ幸いでございます。
あと、図々しいお願いではございますが、評価頂ければなお幸いでございます。
また、気になる点のご指摘等誠にありがとうございます。
誤字のご指摘ありがとうございます。
出来るだけ1日1話を目指しますが仕事の関係で2日に1話になる日もあるかもしれませんがこれからも頑張って書いていきます!!!




