SSそれぞれの日常
最後の〆に描きましたが、思ったよりうまく表現できませんでした。
申し訳ございません。
ドグレニム領、プレモーネの街
「あなた、朝食の支度が出来ましたよ」
そんな声に、庭で軽く体操をしていた月山部長は、切りのいいところまで体を動かした後、家の中に入り料理が並べられたテーブルに向かいます。
「今日は鮭の塩焼きと納豆か」
「ええ、最近は日本から空輸で色んな食材が輸入されているので以前に比べると安く手に入るようになったんですよ」
「そうか、食が豊かになると気分も良くなるな…。 それにお前が作たみそ汁はやっぱり旨い」
「なにを急に、毎日同じみそ汁ですよ。 それより今日は日本の大手商社とアメリカの大手商社との商談があるんじゃないですか?」
「ああ、ジルクスパイダーの糸の商談だ、日本から買い入れた器械を導入したから生産量が上がったからな、今まで在庫が不足がちだったのが今では過剰なぐらいだ。 まあ世界的にジルクスパイダーの糸で出来た服とかは人気があるみたいだからあればあるだけ売れるからな、まあ何処の国もジルクスパイダーの糸を自国で賄おうとしてるようだけど、魔道具化して半永久的に糸が取れるのはうちだけだからね」
「そうですか、じゃあ食事を済ませたら会社に行って商談の準備をしないといけませんね」
そう言いながら奥さんは、食事を続ける月山部長をよそに、スーツやワイシャツ、ネクタイなどを用意しています。
そんな姿を眺めつつ食事をする月山部長は、プレモーネに移住した自分の決断が事が間違っていなかったと思う。
あれから10年、最初は妻にも子供にも反対はされたけど、現在ドグレニム領で最大企業の社長として日々発展するプレモーネを見続けれる事、そして何より都会の喧噪の無い、なのに生活には支障が出ないプレモーネは時間もゆっくりと流れている感覚で日本で会社員をしていたころと比べるとストレスも少なく快適な生活を送るには最適だった。
最初は難色を示していた妻も今ではここでの生活を気に入っているようだ。
そう思いつつ食事を終え、用意された服に着替えると、迎えの馬車に乗って会社まで向かう。
「さて、商談は疲れるが、従業員達の生活を守るために頑張るか…」
そう呟いて会社へと入っていく月山部長の後姿は日本に居た時よりも自然体で生き生きとしていた。
旧ウェース聖教国首都キャール
大聖堂から徒歩10分程の場所にある住宅に馬車がやってきて住人を降ろし来た道を引き返していく。
「ただいま~」
そう言い、玄関を入ると、怒った女性が出迎える。
「あなた、こんな時間まで何をやってたんですか、仕事が終わったらすぐ帰って来てと毎回言っているじゃないですか」
「いや、色々と仕事があって残業になったんだよ」
そう言う土田に、ステレーネは1歳になったばかりの子供を抱きながら小言を言う。
「いや、教皇ってやる事結構あるんだよ」
「そんなわけ無いでしょう、私が聖女をやっていた時なんか、朝お祈りして後はお茶を飲んでいるか礼儀作法を学ぶぐらいしかしてませんでしたよ! 教皇だってただ椅子に座って報告聞いて頷くだけでしょ」
「いや、結構書類仕事多いから、それに各地の教会からの報告なんかに目を通したり、外国に出来た教会からの問い合わせやトラブル対応、更には司祭の派遣依頼とかあるから…」
「そう言って、この前は仕事と言って司祭たちと飲み会開いてましたよね?」
「いや、あれも仕事だから、飲んで親睦を深めるのも仕事のうちだから」
「飲み会は仕事じゃありません! それよりも子供たちをお風呂に入れてください、9人も子供が居るんですからちゃっちゃとお風呂入れて寝かしつけてください」
「はい、ていうかお手伝いさんにお風呂入れてもらえば良くない?」
「アンネは結婚して退職しましたし、お手伝いさん2人だけだと掃除、洗濯だけで手いっぱいなんです! つべこべ言わずに子供たちをお風呂入れて食事を済ましてください!」
そう言われた土田は、服を脱ぎながら子供たちの所に向かい、お風呂に入るぞ! と言って子供たちと風呂場に向かいます。
「あなた!!! 服を脱ぎ散らかさない!!」
そう言いため息をつきながら土田が脱ぎ散らかした服を拾い、洗濯場に投げ込んだあと、食事の支度を始めます。
「はぁ~、なんで教皇なんて引き受けたのかしら…。 そもそもネレース様を信仰してないのに」
そんな事を呟いて居ると風呂場からは子供がはしゃぐ声と共に、それに手を焼く土田の声が聞こえて来ます。
新婚当時はリビングに飾られた動きづらそうな赤い鎧や服などは、倉庫に投げ込まれ、代わりに子供たちのオモチャが所狭しと置かれています。
「教皇はお給料は良いんだけど、もっと早く帰ってこれないの?」
子供たちを風呂に入れ寝かしつけ食事をする土田にステレーネは少し呆れたような感じで問いかけます。
「いや、色々と大変なんだよ、昔みたいに食料不足とかは無くなったけど、急速な発展と色んな国の情報が入って来るようになったからな、それに組織変更して営利目的から純粋な宗教団体にするのはなかなか大変なんだよ」
そう言って食事を続ける土田を眺めつつ、少し呆れた顔をしながらため息をつきます。
「食事を終わらせたら、私を寝かしつけてくださいね…」
ここまでお読み頂き誠にありがとうございました。
これにて本作は完結させて頂きます。
初作品で右も左も分からなく、また自信で皆様に面白いと思って頂けているのか心配でしたが、大勢の人にお読み頂け大変うれしく思います。
連載を開始致しました【器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。】は本作より長く書いて行きたいと思っていますので、こちらもご愛読いただければ幸いでございます。
これまでお読み頂き誠にありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。




