忘れ物
310日目
とりあえず朝から政府対策室の鈴木さんにクルセルの件を相談してますが、どうも困ったような顔をしています。
「武内さん、地球で生まれた日本人が異世界との融合後に関東地方よりも広大な地域を所有するのも色々と問題があるでしょうし、その土地を日本政府の信託統治地域にするって言うのも前例がありませんから、仮に日本政府が了承しても諸外国が何を言って来るか分かりませんよ? そもそもそのクルセルと言う地域が武内さんの土地と言う証明がありませんし」
「証明ですか? まあ確かに、公的に証明するものは無いですよね、とは言えドグレニム領と、バイルエ王国、パルン王国と地続きなのでその3国が証明するって感じですかね? それじゃダメですか?」
そう言う自分に鈴木さんも困ったような顔をして何か考え込んでいます。
確かに、異世界に転送された日本人が、関東地方より広い土地の主になったなんて信じられないでしょうし、各国も難癖付けてでも空白地帯扱いで領有したいと思うのが普通ですよね…。
「でも鈴木さん、ネレースが神託で地球と融合した異世界の土地及び住人に手出しをしたら何かしらの罰をあたえるって言ってたんでしょ? だったら自分からクルセルを奪おうとしたら該当するんじゃない?」
「確かにネレースと名乗った神はそう言いましたが、武内さんは異世界人じゃ無く日本人ですよね? その場合の事は何も言ってなかったのでどういう立ち位置なのかが不明な部分があります」
「じぁあ、その不明な部分を今度ネレースに聞いて明確にしておきますよ。 因みにこの前も言いましたけど、クルセルには地下資源が豊富なので、鉱石類や原油なんかもかなりあるっぽいんで前向きに信託統治地域計画を検討してください」
「確かに、地下資源は日本としては魅力的な話ですし、日本の近くに資源が眠っているなら輸送コストも下がりますから、開発にかかる費用等を考慮しても日本政府としては嬉しい状況かもしれませんが、それと共にその資源を独り占めする日本に対しての国際社会から批判されるのも確実です」
「まあ確かにね、異世界に転移したのは日本人だけだし、異世界の言葉を話せるのも転移した人だけ、簡単に意思疎通が出来るのが日本だけって言うだけで批判されるだろうけど、まあ死者…、というより死体はないから行方不明者も出てるからその辺を強調するしかないんじゃない? 後は転移した日本人を雇って通訳を依頼してくださいとでも諸外国には言うしかないでしょ」
「そうは言いますが、その転移者が通訳を拒否したら、日本が拒否させてるとか言われるんですよ! それに日本が資源を購入していた国々との取引が縮小する事でその国の経済にも少なからず影響が出るでしょうし…」
う~ん、普通に日本で何も考えずサラリーマンしてた自分には全く興味が無い世界だな…。
とは言え鈴木さんの言う事も理解は出来るし、石油産出国なんかは日本との取引が無くなったら打撃受けるだろうし、まあ言いたい事は分かる気がする。
とは言え一応依頼はしたので今日の所はもう用が済んだので軽く挨拶してゲートを閉じます。
やっぱりそう簡単にはいかないよね。
異世界の国際関係は簡単だけど地球の国際関係は面倒だ。
まあなる様になるかな。
さて、オダ帝国軍とノンザイル王国軍が衝突するにはあと2~3日あるし何して過ごそうかな。
暇だ…。
なんか少し前までは、採石場に行って魔物狩りをしてレベリングしたりしてたのに、急にバタバタしだして最近はレベリングどころか魔物との戦闘すらあまりしてないよな…。
採石場に行って久々に魔物狩りでも…。
って駄目か、アルチ達サンダーウルフもカウア達ミノタウロスもクルセルで強そうな魔物を間引くように指示をだしてるから、森から採石場に魔物を追い込む役目が居ないんだ…。
かと言って工場視察するにも、各種工場関係も経営は軌道に乗ってるうえ、プレモーネの人へ経営を徐々に移行し日本人が居なくなっても采井出来るようになって来たし、行ってもする事ないもんな…。
なんかしとかないといけないような事があったような気がするけど、する事も無いし、町を散策でもしようか…。
そう思いながらも、何か忘れてるような気がするので何だったか思い出そうと異世界に来てから今までの出来事を思い出していきます。
そうだ!!!!
野田課長とその一味!!!
パルン王国で幽閉して貰ってたままだ!!
すっかり忘れてましたが、共産主義を広めてパルン王国を乗っ取ろうとした野田課長とその一味、本来ならば処刑されるところを日本人という事、そして共産主義の火を消す手伝いをした事で今の所幽閉という事になってるけどあの人達の今後をどうするか、日本政府にも、パルン王国にも確認して無かった!!
まあ日本政府としては助命と解放を要求してくるだろうけど、パルン王国としては受けた被害も軽微じゃない分、助命はまだしも無罪放免はありえないな…。
パルン王国としては只の罪人だけど、日本政府と交渉して身柄引き渡しを条件に賠償金を要求することも出来るし、一応は交渉カードの一つにはなるな。
そうと決まればパルン王国に行って野田課長とその一味の件を協議しないと!
そして転移魔法のゲートでパルン王国の王宮に移動しますが、どうやら外交講習に主要な人達が全員出席しているようで面会できそうにありません。
一応、警備隊長さんが居残っていましたので、野田課長とその一味が今どうなっているか確認をしたところ、王宮内にある牢屋に入れられているとの事です。
王宮内に牢屋?
そう疑問に思っていると顔に出ていたのでしょう、警備隊長さんは、王宮内の牢屋は政治犯や王国幹部が何か罪を犯した際に使用されるそうで、ここ最近まであまり使われていなかったとの事です。
警備隊長さんが案内をしてくれるとの事なので一応、王宮内の牢屋の様子を見に行きますが、牢屋がある部屋に入った第一印象は、ここ牢屋? って感じです。
流石に絨毯などは敷かれていませんが、石造りの通路の両脇に部屋の扉が設置され、部屋も綺麗に清掃され、牢も鉄格子で外から丸見えでは無く扉付きの個室で一部屋大体8~10畳ぐらいの広さはありそうです。
うん、プレモーネの牢屋に入ったことあるけどえらく豪勢だな、ベッドもまともな物っぽいし、これで食事もまともなら牢屋と言うよりニート専用部屋じゃない?
そう思いながら部屋の扉に設置されている覗き窓から野田課長の様子を見ますが、ベッドで横になりなにやら本を読んでいます。
あの男、あれだけ大問題を発生させた諸悪の根源なのになに悠々自適な牢屋ライフ送ってるんだよ!!
そんな怒りにもにた感覚を抱いていると、覗き窓からの視線に気づいたのか野田課長と目が合った瞬間、野田課長は本を投げだしてこちらに向かって来て野田課長は覗き窓に顔を近づけます。
うわぁ!
絶対に喚き散らすだろうな、相手するのも面倒だし、こんな事なら来なければよかった…。
どなたかレビューを書いてくださる猛者は居ませんでしょうか?
と思う今日この頃…。 自分でもこの物語のレビューをうまく書ける自信がありません。
そんな中でも読んで頂き、ブックマーク・評価、また、感想を頂き誠にありがとうござます。
拙い文章・誤字脱字が多く読みづらく申し訳ございません。
あと、図々しいお願いではございますが、評価頂ければなお幸いでございます。
また、誤字、気になる点のご指摘等誠にありがとうございます。




