砦攻略
206日目
兵士達は空が白みだす前から起きだして朝食の支度をはじめ、日が昇る頃には進軍の準備を完了しています。
「おい、武内、予定より既に遅れが出てるけどいいのかよ?」
そう言って土田が初日からの遅れを気にしているようです。
「まあ問題ないでしょ。 どうせ予定なんて所詮予定だし。 自分的には今の所、敵さんの偵察部隊らしきものが一回も接触して来てない方が気になるんだけどね」
「確かに不気味だよな。 まさか気が付いていないのか?」
「さぁ~どうだろう? 気が付いていないって言うならもう末期だろ。 それとも全軍を既に要所に集めて防備を固めているか」
「そうだよな、って事は後者の防備を固めて守りに入っているって事か」
「まあね、既にウェース聖教国の領内は荒れ果ててるし、焦土作戦を実施しているようなもんだからね。 安心して主要地点のみ防備を固めてるんじゃない?」
そんな話をしながら進軍をしていくと、ウェース聖教国が対バイルエ王国用に築いた砦が見えてきます。
「なんか話には聞いていたけど、簡単に攻略できそうな感じの砦だな…。」
「いや、そんな風に思うのはお前だけだから、普通に攻めたらかなりの被害出るからな!」
そう言って土田が抗議の声をあげますが、大体城壁は5メートルぐらいで全周は5~600メートルぐらいでしょうか。
「いや、この砦に3~4000ぐらいの兵士が居るなら被害が出るだろうけど、500~1000人ぐらいだったら反対に広すぎて守り切れないだろ?」
「それはそうだが、どの程度兵が居るかなんて分からないんだぞ? 油断して最初から躓いたら今回の進攻が失敗になるんだからな」
「土田は心配性だね~」
そう言って心配する土田ですが、ここから見る限り砦の城壁に居る兵士はそんなに多くなさそうな感じですが、自分達が現れた事に驚いたように慌ただしく動き回っています。
まさか本当に進攻して来てるのに気が付いていなかったとか?
そう思いながらも砦を観察していると、土田は兵士達に指示を出し砦を攻める準備を始めています。
「マサト様、我々も戦いの支度をしなくてよいのですか?」
そうバルタが声をかけてきましたが、まずは軍使を送って降伏勧告をしてから方針を決めればいいので、ゴブリン軍団には待機を指示しておきます。
「武内、軍使なんだが、俺が行くけど問題ないか?」
兵に指示を出し終えた土田がそう言いながらやってきたので、とりあえず却下して、バイルエ王国軍の幕僚の人に行ってもらう事にします。
うん、土田が軍使って前回あれだけ残念な軍使っぷりで失敗したのによくもう一回やろうとするな…。
土田はブツブツ文句を言ってましたが無視をして、幕僚の人を砦に送り出します。
「なんで俺じゃダメなんだよ!」
「いやお前、以前軍使として来た時の結果どうだったよ? 完全にダメダメだっただろ。 よくそれで俺が行くとか言えるよな? それに軍使としての仕事は降伏勧告だけじゃないんだからな」
「前回は前回、今回は今回だよ! それに降伏勧告だけが仕事じゃないってどういう事だよ!」
「ていうかさ、この世界の作法とかもあるだろうからこう言うのは異世界人の人に任せればいいんだよ」
「まあ確かに細かい作法とか知らないけど、降伏勧告ぐらいはできるし、それ以外だって指示されれば出来るはずだぞ」
「まあその辺はいいとして、部下に手柄を譲ることも覚えろ! お前ひとりが手柄あげてたら周りから反感をかうぞ。 ていうか軍使が返ってきたから話を聞きに行くぞ」
そう言って土田を促し、軍使の元に向かいます。
「お疲れ様、それで結果はどうだった?」
そう軍使として砦に行ったバイルエ王国軍の幕僚に声をかけると、幕僚の人は申し訳なさそうに結果を報告します。
「そう、徹底抗戦を宣言されたんだ」
「はい、砦の守備隊長と面会し話をしましたが、こちらの話には耳も貸さず徹底抗戦を宣言されました」
「それで砦の兵数と士気はどんな感じだった?」
「はい、兵数は約800程かと思われます。 士気に関しましては突然現れた敵に困惑しておりますが、数が3500程という事もあり楽観的な感じに見えました」
「そっか…。 それで気になっていたんだけど、ウェース聖教国側は自分達が進攻してきた事を今知った感じだった? それともあえて砦に籠って居た感じ?」
「それですが、全く進攻に気が付いていなかったようです。 砦の守備隊長も急な進攻に関して非難をしておりましたので、間違いないかと」
仕事を終えた幕僚の人をねぎらって土田と話をしますが、やはり話はウェース聖教国が他国から攻め込まれているのに気が付いていない事が話題となります。
「まあ武内、気が付いていない理由は置いといて、どう砦を落とすかを考えないと先には進めないぞ」
「ああ~、それね、 とりあえず砦の左右に広範囲魔法を撃ち込んで脅しをかけておいて再度降伏勧告でいいでしょ。 それで降伏しなければ砦に向かって魔法を撃ちこむ方向で…」
「まあ、脅しまでは良いけど、砦に魔法を撃ちこむのはな…。 相手は人間だぞ?」
「じゃあ力押しで攻め込んで味方に死傷者が出るのは良いのか?」
「いや、それは困るが…」
「だったら砦に魔法を撃ちこむしかないだろ。 その上で兵士を突入させて制圧すれば、味方の被害が少なく抑えられるだろ?」
そう言って土田を納得させると、再度軍使に行った幕僚に、方針を説明し、脅しの後にもう一度軍使として行ってもらう事にします。
「さて、じゃあ魔法の実験を始めますか…」
「いや、待て! 実験言うな! ていうか以前使った炎槍と氷槍でいいだろ?」
「だって実験する場所も機会も無いし、脅しになれば何でもよくない?」
そう言って呆れる土田をしり目に前線へ向かい、魔法の準備を始めます。
城壁の上では兵士達が弓を用意し防戦の支度を整えていますが、先程の報告で守備兵は800程との事でしたのでほとんどが城壁の上に上がって来ているように見えます。
土田はまだ何か言いたそうにしていますが、とりあえず気にせず派手にやろうと詠唱を開始します。
「黄昏よりも昏きもの…血の…」
「いや待て! お前何しようとしてるんだよ!」
「何って、魔法を撃ちこむために詠唱を…」
「いや、何でドラゴンも屠る魔法を放とうとしてるんだよ! ドラゴンも跨いで通る人間になりたいのか?」
「いや、そう言う訳ではないけど、雰囲気って大事じゃん?」
「雰囲気で魔法使うなよ! 真面目にやれよな!」
そう言って土田がなぜかツッコミを入れてきます。
「じゃあ、他の魔法にすればいいんだよな? ほんと面倒な奴だな…」
「面倒言うな! 真面目にやってくれって言ってるんだよ」
そう言う土田に今度はしっかりとした魔法をと言って再度詠唱を始めます。
「四宮の天と四方の地、深き法と…」
「うぉい! だから真面目にやれよ!」
「だから真面目にやってるって!」
「どこがだよ! お前は朱雀を呼び出したいのか? 朱雀召喚して3つの願いを叶えたいのか?」
「いや願いとかは叶えてもらえないだろうけど、火の鳥がば~って出てきて、狙った場所を焼き尽くす的な魔法?」
「ていうかお前、詠唱なんて必要ないだろ、それ絶対わざとだろ!」
うん、なんか土田がえらく文句を言うな…。
「じゃあ取り合えず、右に炎槍、左に氷槍を撃ち込むよ」
そう言って右手に魔力を集め炎槍を作り砦の右側に投げつけます。
着弾した炎槍は轟音を立てながら辺り一帯を燃やし尽くし、砦の兵はなんか慌てている感じです。
「じゃあもう一発」
そんな言葉を発した後、右手に魔力を集め氷槍を作り、今度は砦の左側に投げつけます。
炎槍と違い氷槍は派手さはありませんが、若干手元が狂って砦寄りに着弾した為、砦の城壁を一部凍りついています。
「土田、砦の兵士達がかなり動揺してる感じだからもう一発右側に炎槍撃ち込んだら軍使を送ってくれる?」
そう土田に依頼をしたうえで砦の右側に再度炎槍を撃ち込み守備兵の恐怖を煽ります。
「武内、いま軍使が向かったからもう魔法打つなよ」
そう言って土田が軍使出発の報告をしてきたので、一旦砦から離れて様子を見ることにします。
うん、城壁の上に居る兵士が心なしか減ったような気がするんだけど、逃げ出す算段でもしてるのかな?
まあアルチ達サンダーウルフが監視してるから逃亡兵が出たらすぐにわかるんだけどね…。
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