進軍
204日目
本来は今日合流する予定だったバイルエ王国軍が昨日合流したので、本日は兵の休養と進攻と占領等の打ち合わせをしておくことになりました。
簡易的に作ったテーブルにウェース聖教国の地図を広げて、ゴブリン軍団、ドグレニム領兵、バイルエ王国軍の幕僚が地図を見ながらそれぞれの役割などを話し合います。
「ていうか武内、村々に兵を残していったら兵が足りなくなるだろ。 村への支援は後回しで一気にウェース聖教国の総本山まで攻め込んだ方が良くないか?」
そう言って土田は地図を見ながら疑問を投げかけてきます。
「まあ確かにその方が早いんだけど、先に食料不足で困窮してる村を飢えから救って行く事で総本山を孤立化させる事が出来るし、場合によっては幹部が逃げた際に匿ったりするのを防ぐ事が出来るだろ」
「まあ確かに、攻めるより先に食糧支援をしておけば、侵略者と言うより救世主だしな。 だがその間に敵軍が出てきたらどうするんだ?」
「まあその時は戦うしかないだろ。 とはいえ戦意は低いだろうし、併呑して併合したら雇う事を確約していけばある程度は敵軍も及び腰になるだろ? なんせほぼ今のまま雇用が維持されるか、戦後職にあぶれて無職になるか、兵士達にとっては生活がかかっているんだからな」
「だけど、その話をどうやって敵軍に伝えるんだよ。 対陣したら呼びかけでもするのか?」
「その辺は恐らく偵察部隊が出て来るだろうから、そいつらを生け捕りにして占領後の話を聞かせて解放すればいいんじゃない? 戻ったら仲間に話すだろうし、攻め込まれて不安になっている時は噂なんかすぐに広まるから意外と効果的じゃない?」
「じぁあ村に兵を駐屯させるのはどうするんだ? 村全部に兵を置いたらさっき言ったように兵が不足するぞ?」
「その辺は、すべての村に兵を置かずに、大きな村に兵を置いて、その村の農民を雇う形で近隣の村へ食料を届けさせればいいだろ。 そうすれば村人は臨時収入も入るし文句を言うどころか自ら手伝いにくるだろ?」
「確かに、金も無い、食い物も無い状況で、金を得られてその上食料も支援してくれる。 食料を搾取するだけで何もしない国から民衆の心は離れて、俺たちは晴れて侵略者じゃなくて救済者になるって事だな?」
「そういうこと、まあ後はどうしても教義を守ろうとする熱心な信者とかが居そうだけど、そこは元聖女のステレーネさんの出番と言う訳。 流石に熱心な信者も元聖女の話なら聞くだろうし」
「まあそうだな、俺はあまり利用をしたくないんだが、本人も民衆の為ならと乗り気だし、その辺はステレーネさんに任せるしかないか…」
そんな話をしながら、行軍予定を決めて行きます。
最終的に7500の兵を5隊に分けて、4隊は1000、本体は3500で進攻をする方針に決定します。
各隊は、ゴブリン軍団、ドグレニム領兵、バイルエ王国軍の混成部隊にして指揮官は、1隊はドグレニム領から、2隊はバイルエ王国軍から、1隊はゴブリン軍団からロゼフが指揮を取らせます。
各隊にはサンダーウルフ達を5匹づつ付けて偵察と伝令、そして敵兵が居た際は捕縛などの手伝いをして貰うことにします。
食料に関しては、小麦と米を今回の進攻用に作ったアイテムバッグに入れて各隊の指揮官に渡しているので、各隊が進軍する先の村々に食料を支援し、大きな村には人間の兵を50人程駐屯させ近隣の村への支援の指揮を取らせます。
「あとは俺達だが、どういうルートで本隊は進軍するんだ?」
そう土田の疑問に当然と言うように自分が答えますが、本隊の幕僚が全員引きつった顔をしています。
「おい武内、対バイルエ王国用に作られた砦を攻略してその後に総本山を目指すって本気か? 本隊は3500しか兵が居ないんだぞ?」
「その辺は、魔法で脅して降伏させるから大丈夫でしょ。 目の前で大規模魔法の威力を目の辺りにすれば戦意も喪失するだろうし」
「お、お前、この前の魔法を使う気か?」
「いや、それもありなんだけど、実験してみたい魔法がまだあるからそれを使う予定だから安心してくれ」
「いやいや、お前の実験って一番安心できないからな」
そう言って土田は絶対に実験はさせんと言わんばかりの顔をしていますが、どうせ砦攻略の際に必要になるんで実験出来るでしょう。
そんな事を思いながらも、各隊の編成と顔合わせなどを行います。
まあ村人はゴブリンが来たら驚くでしょうが、統率が取れて、身だしなみも良いゴブリンが人間の兵士と共に食糧支援をしれてばまあ大丈夫でしょう…。
205日目
空が白みだす前から、各陣地が慌ただしくなり、日が昇る頃には朝食を済ませた兵士達が、昨日決められた部隊単位で出発の合図を待っています。
一応、総大将的な? 感じの土田が号令を発して各隊が進軍を開始します。
各隊が進軍していくのを暫く眺めた後で、本隊も砦を目指して進軍を開始します。
とはいえ砦までの間には村が3つ程あるので、各村に食糧支援をしながらの進軍になるので砦に着くころは夕方になりそうな気がします。
まあ今回はそんなに急ぐ必要もないので土田の馬と並んで雑談をかわしながら進みます。
「それで、土田、ステレーネさんとはどんな感じなの?」
「それな! 会ったら言おうと思ってたんだが、お前ステレーネさんに何を教えてるんだ?」
「何って何?」
「そ、それは、そのあれだ、風呂で背中を流す際に、そ、その胸でだな…」
「ああ~、働きづめの土田を癒す方法って聞かれたから、土田が風呂に行った後、若干時間をおいて風呂に行って背中を流すと喜ぶよって。 まあついでに胸で背中を流すと間違いなく喜ぶからって言っておいたんだけど、もしかしてして貰ったの?」
「お前な! まあして貰いはしたけど、急に風呂に入って来るし、背中流してたらなんか柔らかいものが背中に当たるし、ステレーネさんの吐息が近いしで…」
「それで? 押し倒したの?」
「押し倒すか! 丁重に誤った洗い方だと教えて後は自分で洗ったわ!」
「なんだ、つまらん。 全身洗ってもらえばよかったじゃん」
「武内、お前は楽しんでるだろ?」
「いやいや、自分は忙しい土田を癒したいというステレーネさんの気持ちを汲んでだな」
「その結果が、ステレーネさんがベッドで俺が来るのを裸で待って居ると?」
「なんだ、進展したんじゃん。 よかったよかった。 これでお世継ぎ問題も解決だな」
「何がお世継ぎだよ! 説明するなら最後までしとかないから、俺は切り落とされそうになったんだぞ!」
「切り落とす? 何を?」
「俺の大事な一物だ! 俺も遂に春が来たと思って、極力優しく頑張ろうとしたら、いきなり握られて引きちぎられそうになるし、風魔法で切り落とそうとするし…」
「いや、なんでそうなる? それは土田に問題があったんじゃないのか?」
「自分には無い角が生えてるから魔物に寄生されてるって言って、全力で切り落としに来たぞ! まあ侍女の人が騒ぎを聞いて駆けつけてくれたからよかったけど、あのままだったらどうなっていたか」
「まあいい経験じゃん。 将来歳をとった時にいい思い出話になるよ。 それでその後は再開して晴れて二人は一つに?」
「なるか! とりあえず一緒には寝たけど、あんなバトルの後に出来るか!」
「なんだ、つまらん。 まあ今回の戦争が終わったらゆっくりと二人で楽しんでくれ」
「それなんだが、お前ステレーネさんに何を吹き込んでんだ? 俺を癒す48の技の絵を貰ったとか言ってたから見せてもらったけど、あれはなんだ?」
「四十八手? 夜のお供に必要でしょ? 飽きない幸せ家族生活のお役に立てればと思ったんだけど。 それにお風呂場での癒し方の絵もあげたけど、なにか?」
「いや、お前な、俺たちはお前と違ってピュアなの、わかるか? それをいきなりなにハードル上げてるんだよ!」
「ピュア? てことは、まさかレンタルビデオ屋さん見えるの? ビデオ再生すると女の子出て来るの? 駄目だよ浮気とか、多分次は確実に切り落とされるね」
「見えるか! なんで異世界にピュアな心の持ち主だけが見えるレンタルビデオ屋さんがあるんだよ! それに浮気とかしないし、相手いないから出来ないし!」
「まあそういう事にしとくけど、多分、土田が思っている以上に狙っている人は多いはずだよ。 特に貴族の令嬢とか。 そのうち娘を妾になんて話もくるんじゃない?」
「来る訳ないだろ。 ステレーネさんだけでも奇跡だと思ってるのに」
そう言って土田は顔を真っ赤にしています。
うん、土田はピュアじゃなくてウブなだけで、ピュアとは自分みたいな人の事を言うんだよ。
そんな事を思いながら進んでいくと、最初の村が見えてきます。
さて、第一村人の反応はいかに?
平和かつ友好的だといいんだけどね…。
ブックマーク・評価、また、感想・レビューを頂き誠にありがとうござます。
拙い文章・誤字脱字が多く読みづらく申し訳ございません。
あと、図々しいお願いではございますが、評価頂ければなお幸いでございます。
また、誤字、気になる点のご指摘等誠にありがとうございます。




