合流
ほんとうに日本政府ってやる事が遅いというか、物事を決められないというか。
そうゲートを閉じた後で月山部長に話かけると、月山部長は苦笑いをしながらコーヒーを口に運びます。
「武内君、どこもそんなもんだよ。 会社だって同じもんだ、ワンマン企業ならともかく、普通の企業なら政府と同様に危機管理やらマスコミ対策やらで時間がかかる。 組織なんてそんなもんだ」
そう言って月山部長は予想通りと言った顔をしてソファーにもたれ掛かっています。
「そんなもんなんですけね~。 まあ公表を渋ってどうなっても自分達は関係ないですし、政府との交渉がうまく行かなくても、ゲートを人が通れる大きさまで広げられればいつでも日本に帰れるようになりますから、政府の好きにさせておきますけど」
「まあ、その辺は、今後の流れ次第だろうが、日本との接触は小まめにしてやってくれ、向こうの言うように情勢はすぐに変わるもんだからな」
「わかりました。 とりあえず時間はランダムになると思いますが、2日に1回ぐらいは接触しておきます」
そう自分が言うと月山部長は頷いてから立ち上がり帰っていきます。
「今日はこれからどうするんですか?」
「私か? 今日はこれから工場の稼働状況を確認して、その後はグランバルさんの所に行って、歓楽街の移転計画の相談だな。 だれかが風俗店を開店させようと考えてるらしいからグランバルさんに移転の相談を受けてるんだ」
そう言って月山部長は若干トゲのある言葉を残して帰っていきました。
うん、もう情報が漏れたのか…。
月山部長の情報網は侮れないな。
201日目、202日目
今日から侵攻軍合流日までは、ホブゴブリン達用の当世具足風甲冑の制作に勤しみます。
予想以上にホブゴブリン達が増えすぎて甲冑か足りないのと、ゴブリン用の胴丸だと中学生が小学生の洋服来てるかのようで見た感じダサいんですよね・・・。
そんな事で2日間、ホブゴブリン達用の甲冑を作り、飽きたらロード級に着せるための中華風の鎧と矛を作って夜に二ホン砦に届けます。
夜とは言え二ホン砦は明日出発の為か、篝火が焚かれ留守番のゴブリンでしょうか、忙しく動き回って何か作業をしていました。
「マサト様、これほどの甲冑、ありがとうございます」
そういって恭しくお礼を言うロゼフに明日の出発前に侵攻軍に加わるホブゴブリン達に支給するように伝え準備状況等を確認しましたが、ロゼフとバルタが気合を入れて準備をしたのでしょう。
全く問題ないとの返事が帰って来ました。
うん、なんか人間の自分よりゴブリン達の方がしっかりしてるような…。
203日目
昨晩、二ホン砦に行って甲冑を渡してきたばかりですが、今朝も二ホン砦に転移魔法でゲートを作り移動をします。
ゲートをくぐり二ホン砦に足を踏み入れると完全武装のゴブリン軍団が整列をして待っています。
「ロゼフ、バルタ、ハンゾウ、ご苦労様、準備は…見る限り大丈夫そうだね」
「はい、今朝、ご用意いただきました甲冑をホブゴブリン達に着せて準備万端お待ちしておりました」
そうロゼフが言うとバルタとハンゾウもうなずきます。
「じゃあ、合流地点に移動してもらうけど、移動先で簡易的な陣を作って置いてくれる。 一応バイルエ王国軍が来るのは明日だから、一泊する事になるから」
そう言ってゲートを開き合流地点にゴブリンを移動させると、アイテムBOXから木材を出しておきます。
「じゃあ後はお願いね。 自分は ドグレニム領兵の迎えに行って来るから、自分達の陣と ドグレニム領兵の陣を構築しておいてね」
そうロゼフ達に伝えゲートをくぐりプレモーネに戻り、領主館に顔を出します。
「マサト、こちらはいつでも出発できるように練兵場で兵達を待機させているぞ」
グランバルさんはそう言って立ち上がり練兵場へ向かって歩き出します。
練兵場へ着くと、指揮を執るタロイマンさんと占領後の行政を行う文官の人と兵士が待っています。
待機している兵士達にグランバルさんが訓辞をしていますが、どうも性格なのでしょうか、えらい人の話って長いようなクドクドしているような感じがするんですよね……。
小中学生だった頃から校長先生の話とか長いし暇だし、早く終われって思っていましたよ。
訓辞が終わり、準備が整ったようなのでゲートを開き合流地点にドグレニム領兵を移動させます。
それにしてもグランバルさんの後にタロイマンさん、その後に文官の偉い人の訓辞と続いた時には流石に学校行事の際の来賓挨拶か! ってツッコミを入れたくなりましたよ。
ゲートを通り合流地点に到着すると、ロゼフが気を利かしたのでしょうか、ドグレニム領兵用の陣地が完成しており、現在はゴブリン軍団用の陣地を構築しています。
「マサト殿、この陣地は我々用ですか?」
そう言って既に陣地が構築されていたことに驚いたようでタロイマンさんが声をかけてきます。
「ええ、ドグレニム領兵用の陣ですので使ってください。 とは言え急造ですし、明日か明後日までしか使用しないでしょうが…」
「なんの、到着したら陣地構築からと思っていたので手間が省けました」
タロイマンさんはそう言って兵士達を陣地に向かわせ警備の兵を除いて休息を取らし始めます。
「じゃあ自分はゴブリン達の所に居ますんで何かあったら呼んでください」
「わかりました。 とは言え大まかな打ち合わせは終わってますし、あとはバイルエ王国軍が来てからになりますので、暫くは休息ですな」
そう言ってタロイマンさんは笑いながら陣地の中に入っていきます。
さて、バイルエ王国軍用の陣地を構築するか、しないか、どうしよう。
どうせ一晩ぐらいしか使わなさそうだし、なんか作っても無駄っぽいんだけど…。
そんな事を思いながら働いているゴブリン達を眺めていると、ハンゾウが報告に来ます。
「マサト様、バイルエ王国軍がまもなく到着します」
「バイルエ王国軍が? 早くない?」
「お聞きした話では明日との事でしたが、近隣の偵察に出たホブゴブリンがこちらに向かって来るバイルエ王国軍を目視したとの事です」
「じゃあ間違いはなさそうだけど、流石に動きが早いね。 まあこっちの陣地構築中だからバイルエ王国軍の陣地は自分達で作ってもらうから手間が減って助かるけど」
ハンゾウには、ロゼフバルタに出迎えに行って来ると伝言を頼んでから、影から出て来たラルに乗ってバイルエ王国軍の方に向かいます。
整然と隊列を組んで合流地点に向かって来るバイルエ王国軍の先頭にはやっぱり痛い人筆頭の土田が馬に揺られています。
「おい!なんで毎回ファーストに出て来るシ〇アのコスプレでくるんだ?」
「何が問題なんだ? 正装だぞ!」
「いや、絶対にふざけてるとしか思えないんだが…」
そう言って土田と並ぶように轡を並べて雑談をしますが、どうやら今回早く着いたのは兵糧などの兵站の心配がない為行軍の速度が予想以上に早かったとの事だそうです。
まあそうだよね。
米や小麦は自分がいくらでも出せるし、その他の食材は土田のアイテムBOXにいくらでも入るんだから、行軍速度は速いよね。
「それで俺たちの陣地はどこだ?」
「いや、作ってないから自分達で作ってくれ。 現在ゴブリン達は自分達の陣地構築してるから他国軍の陣地構築の暇はないぞ」
「そうか、武内の事だから作っててくれると思ったんだけどな」
「いや、どんだけ他力本願なんだよ! それに陣地構築も訓練の一環になるだろ?」
「まあ確かに、それはそうだが、まあ陣地は無くても警備は万全だろうから野営の準備させればいいか」
「まあ土田達がそれでいいなら野営の準備だけで良いんじゃない? どうせ明日の朝までしか使わないし」
「明日の朝? 出発は明後日だろう?」
「やっぱり明後日の方がいい? なんか土田達バイルエ王国軍が1日早く来たから進軍も1日早くてもいいかな~って思ったんだけど」
「まあそれでもいいんだが、とりあえず俺らは首都ドイルズから進軍してきて着いたばかりだから休息は欲しい所だな」
「じゃあ明日は休息と偵察にして、明後日から侵攻開始でいいか?」
「そうだな、それでいこう。 とは言えウェース聖教国軍も莫迦じゃないから集結してくるだろうが、その辺は大丈夫か?」
「まあ合計7500程の部隊に少数で攻めかかるような勇気がある奴はウェース聖教国には居ないだろ。 とりあえず偵察だけはしっかりとしとけばいいだろ」
そう言うと土田も納得したのか、幕僚の人に今決まった予定を伝えています。
さてさて、今晩は3軍の幕僚の懇親会開いて明日は軍議して明後日から本番だな。
スムーズにウェース聖教国の総本山まで進軍できるといいけど、こればっかりは相手の出方次第だしな…。
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拙い文章・誤字脱字が多く読みづらく申し訳ございません。
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