侵攻計画
領主館の執務室でグランバルさんが鈴木さんから貰った写真を覗き込んでいます。
「マサト、すまんがこれだけじゃあ何処の国かはわからないな。 そもそも俺達領主は基本的に国外に出ないからなおさら他国の城を見せられてもな…」
「そうですか、なんかこの城のある国の日本人も日本と接触を持ったみたいなんですよね」
「それはマサト達以外が日本と接触するのが不都合って事か?」
「そうですね、不都合はあります。 自分達は政府と直接交渉しているのに、今回接触を持った人たちは面倒な人達に接触してるんで自分達には不都合なんですよ」
「そうか、不都合か…。なら消すのか?」
「いやいや、そんな事はしませんよ。 とりあえず何処に住んでいるか、どうやって接触を持っているかだけ調べてみてそれから対策を考える感じですね。 最終手段にも消すという選択肢はありませんから」
やけに物騒な話をするグランバルさんですが、日本人の感覚と異世界人の感覚の違いなんでしょうね。
「それはそうと、ウェース聖教国への進攻する件はどうなってますか?バイルエ王国側はいつでも進攻出来るようですけど」
「その話か…。こっちも色々と問題があるんだよ。 まあ既にウェース聖教国を攻めるのは俺の意見を聞くことなく決定事項になってる以上兵は出すが、領内の守備を考えると精々4~500人が限度だぞ?」
「兵数はそれで大丈夫ですよ。 自分が率いるゴブリン軍団2000匹は出しますし、領内の防衛用に1500匹以上は残してますから余程の事が無ければ問題ないと思いますよ?」
「そうか、それでバイルエ王国側はどのぐらい兵を出すんだ?」
「ロ二ストさんの話だと大体5000人ぐらいを予定してるとの事ですね。 まあ向こうはその分多くの土地を手にしますし占領後の統治も考えると妥当な兵数ですね」
「5000か、その兵がウェース聖教国占領後にこちらに襲い掛かる可能性は無いのか?」
「まあありませんね。一応現時点では友好的ですし、向こうは首都を含めたウェース聖教国の土地2/3を得てドグレニム領側は残りの1/3、それも小さな町が3つと後は荒廃した村々ですから裏切ってまで独り占めしようとは思わないでしょう」
「そうか、だがマサトの言うように小さな町が3つだけだと占領後の行政を何処で行うか、その辺を一つでも間違えると併合するどころでは無くなるぞ?」
「そうですね、その辺に関しては今回占領する土地の真ん中あたりの町を拠点にして行政を行うのが良いと思いますよ? 」
「まあそれが妥当だろうが」
「それに道もゴブリン達を使って急ピッチで拡張しますので往来のしやすさと木材の確保は出来ますから占領後の復興の役には立つでしょう。 何より自分達は食料を幾らでも提供できるので、むしろ占領後の統治は簡単ですよ」
その後も、いまいち煮え切らないグランバルさんと、ウェース聖教国進攻の話をしてからバイルエ王国のロ二ストさんを尋ねます。
「マサト殿、ようこそお越しになられました。 それで本日はウェース聖教国進攻の件で?」
「それもありますけど、まずは見てもらいたいものがあるんですよ」
そう言ってロ二ストさんにも鈴木さんから渡された城の写真を見てもらいます。
「ほぅ~、これは綺麗な絵ですな…。」
「これは絵と言うより写真という日本にある技術なんですけど、まあそれはさておき、この写真の城がどこの国の城か分かりますか?」
「ええ、この特徴的な城はオダ帝国の首都アズチにある城ですな。 この特徴的な城はヌスターロス大陸ではアズチにしかないでしょう」
「オダ帝国? 話に聞くか限りだと小国だけど金や銀などを輸入して貨幣の発行をしてるって国ですか?」
「ええ、バイルエ王国とも国境を接していますがここより南西に位置する国ですな」
「そうですか。オダ帝国の首都アズチですか…。」
「これが如何したのですか?」
「ええ、日本と接触した人がこの写真を撮ったようなので調べようかと思ってるんで」
「そうですか、ではオダ帝国に行く際は、バイルエ王国から交易を装って入国するのが良いでしょう。まあ元々入国が厳しい国ではありませんが交易を装えば簡単に潜入できるでしょうな」
「そうですか、では潜入する際はバイルエ王国から行かせてもらいます」
「そうしてください、マサト殿は拠点としてる場所は違えど我々にも大いに利を齎してくれるのでいくらでも支援をさせていただきます」
そう言てロ二ストさんは笑顔で笑っています。
「あとはウェース聖教国進攻の件ですが、一応グランバルさんも了承をしていますが、出せる兵は500程ですね。 まあ自分がゴブリン軍団2000匹連れて行きますんで合計は2500程ですかね」
「十分ですな。 バイルエ王国側は5000の兵を出しますし、魔物の大量発生で混乱状態ですからさして抵抗も受けずに占領できるでしょう」
「そうですね、今サンダーウルフに偵察をさせていますが恐らく教会の総本山がある町以外の防備は手薄でしょうし、そもそも戦意が低いですし」
「ええ、楽観は禁物ですが、場合によっては総本山のある町に進攻したら教国の幹部が逃げ出して抵抗も受けずに占領出来る可能性もありますからな」
「あ~、予想はしてましたが、やっぱりそこまで教国の幹部は腐ってますか?」
「ええ、唯一まともな、というか骨があるのは教皇の右腕と称されるグレーム卿ぐらいでしょうがそれも政治…、いや権力争いでの話で戦争に関しては素人でしょうから脅威ではありません」
そうロ二ストさんが評するグレームさんですが、確かに会った際の印象としては武人と言うより謀略家といった感じです。
その後、ロ二ストさんと進行を開始する日付を話あい6日後に決定をします。
「ツチダ殿も明日には帰って来ますので進攻の指揮はツチダ殿に任せて占領後の行政について全力を尽くすとしましょう」
「まあ土田なら変な事はしないでしょうし人選としては最適ですね。あとはステレーネさんだけど、まあ本人も嫌がってないんですよね?」
「ええ、最初話をした際は驚いていましたが、民の困窮ぶりと占領後の復興支援や民をバイルエ王国の民として扱うと伝えたら快く了承してくれました」
「それはよかったですね。 ステレーネさんが嫌がったら今回の進攻の大義名分無くなるんでまずは上々ってことですね」
その後はロ二ストさんと両軍の合流地点などを再度確認した後、プレモーネに戻り領主館に向かいます。
「そうか、6日後か…。てことはプレモーネを出発させるのは3日後だな」
「その辺は5日後に出発でよくないですか?転移魔法でゲート作れば一瞬ですし」
「そうか、じゃあ5日後の朝には出発できるように手配を始めよう」
「お願いします。じゃあとりあえず5日後の朝に迎えに来ますんで」
そう言って領主館を後にして月山部長の相談所を訪ね報告をします。
「ついに戦争になるのか?」
「まあそうですね、とは言え侵略戦争と言うより救済の為の戦争ですし」
「ものは言いようだが戦争には変わりないな」
「そうですね、とはいえ今回はあんまり死者は出ないと思いますよ。 なんせウェース聖教国の首脳部が腐ってますし、兵は弱腰ですから戦闘が起きない可能性の方が高いですね」
「そうか、それならいいんだが、大体戦争に巻き込まれて苦しむのは弱い人間だからな」
「確かに、その辺は重々留意して進軍をするつもりです」
「まあこの世界の事だから私が口を出す事ではないが、日本人には戦争には参加をして欲しくないものだな」
そう言って月山部長は明らかに反対だという顔をしています。
「それはそうと、それを言いに来たわけでは無いんだろ?」
「そうでした、鈴木さんから貰った写真の城、どこの国か分かったんで来たんですよ」
「もうわかったのか? それでどこの国だったんだ?」
「それが以前、月山部長が話していたオダ帝国の首都アズチにある城だそうです」
「オダ帝国、金をや銀を仕入れて貨幣を作っている国だったな。 じゃあマスコミと接触を持ったのはその国に居る日本人だな」
「ですね、多分そうだと思いますが、現状としてはちょっと様子を見に行ってきますといえる状況じゃないんで調査は後回しですね」
「まあ戦争が起きる直前だから後回しでも仕方ないか」
「ええ、それに調査と言っても堂々と日本人探しをする訳には行きませんし、急ぐ必要もなさそうですから」
「急がなくていい? それはどうしてだ?」
「それなんですが、鈴木さんの話をよくよく考えてみたんですが、漠然とした内容がマスコミに流れたと言う所から見て、恐らく自分みたいにゲートを開いで行き来が出来るような感じじゃない様な気がします」
「じゃあどうやってマスコミに映像などを流したんだ?」
「そこまでは分かりませんが、仮に自分達みたいにゲートが開ければもっと具体的な内容や異世界の物などがマスコミに流れていてもおかしくない気がします。 その辺を考慮すると限定的な能力のような気がするんですよ」
「限定的な能力か…」
「まあその辺も明後日、鈴木さんに話してみて出来る限り情報を貰いましょう。 向こうもリークした人間の能力や目的を知りたいでしょうから情報の出し渋りはしないでしょう」
月山部長とはその後もオダ帝国への潜入方法などを話し調査する内容などを検討し詰めておきます。
相談所を後にした頃には完全に夜になっていました。
あとは二ホン砦に行ってゾルス達に出兵の準備と道作りの準備の指示だな。
そう思いながらも二ホン砦に行き、ゾルスにはゴブリン軍団1000匹を連れて明日から道作りを、バルタ、ロゼフ、ハンゾウには2000を率いて出兵の支度を、残りは砦の警備を指示します。
ていうかまたゴブリン増えてるよね?
ロゼフの話では現在4000匹を超えてるってどんだけ短時間で増殖するの?
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