転移者とマスコミ
197日目
昨晩は夜なべをして作成した当世具足風甲冑と買って来た魔石を二ホン砦のゴブリン達に届けます。
砦に行く前に、月山部長の所に行って自分の屋敷の使用人の求人を依頼し、自分が引っ越した後の家は付き合いにあげると伝えると、最初は遠慮していましたが、最終的には貰ってくれるとの事です。
うん、売ってもいいんだけど、一応、日本人が立ち上げた工場や浴場などの施設を管理する会社で言う所の社長的な位置に居るんでそれなりの所に住んで貰って成功すれば富が得られると言う象徴になってもらいたいんですよね。
そんな事を思いながら二ホン砦に移動し、甲冑をゾルス達に渡して魔石をロゼフに渡し、グリーンフォースの上位化と余った分でゴブリン達をホブゴブリンに進化させるように伝えます。
まあ足りないだろうけど、ゴブリンよりホブゴブリンの方が役に立つしね。
それにしてもゴブリンロード達もホブゴブリンと同じ当世具足風の甲冑で面白み無いからロード級には中華風の鎧と矛を作ってみようかな。
そしてプレモーネに戻ってからアルチ達サンダーウルフの中からイルチとウルチそしてエルチの3匹にウェース聖教国への偵察を指示し送り出します。
流石に町の中へは入れませんが教国内の状況などの偵察及び兵士の配置状況、士気などを探ってもらいます。
ロ二ストさんと打ち合わせでは大体、ウェース聖教国の領土を3分割し、ドグレニム領が1、バイルエ王国が2で分け合う予定です。
まあグランバルさんはあんまりいい顔をしていなかったけど、これはむしろ侵略じゃなくって、教国に住む人々を救うための必要な処置だしね。
198日目
月山部長が家にやってきたので、日本へゲートを繋ぎその後の進展を確認します。
「もしも~~し。こんにちは~」
そう言ってゲートから対策室の中に居る人に声をかけるとなにやら作業をしていた人たちが一斉にこちらを向きます。
「武内さん、丁度よい所でした、こちらからは連絡が取れないので、接触をして来るのを待っていたんです。」
そう内閣府の鈴木さんが声をかけてきます。
「待っててもらったのはいいんですが、その後の政府の方針とかってどうなったか聞こうと思ったのと、欲しい物があったのでお願いに来たんですけど」
「そうですか、申し訳ないのですが、特に方針は決定しておりません。 それよりも武内さん達はどうしてマスコミと接触を図ったのですか?」
「マスコミと接触? なんですかそれ?」
「なんですかではないですよ、今日発売の週刊誌に集団失踪は異世界に転移させられた、被害者が語る異世界!っていう記事が出て、今テレビのニュースとかで大騒ぎです」
そう言って鈴木さんは詰め寄るような勢いで食って掛かってきますし、周りの職員さんもなんか冷たい目線でこちらを見ています。
「とりあえず、そのマスコミと接触したのは自分達じゃないですね。 むしろ自分達はマスコミと接触を匂わせて政府との交渉を優位にしようとしてるのに、その優位性を自ら手放すわけないでしょ?」
そう言うと鈴木さんをはじめ職員の人達は確かに、といった風な顔をしています。
「それで、どのような方法で接触して、どんな記事が掲載されたんですか?」
「そのように接触したのかは現在調査中ですが、相手が週刊誌の編集部なので表立って調査も出来ないので、現在の所は極秘に調査をしている所です」
「まあそうでしょうね。 週刊誌の編集部に政府が直接聞いたらそれこそ週刊誌の思うつぼですもんね」
「そういう事です。 それと記事になった内容は、ネレースと言う神によってウェースと言う異世界に3万人が転移させられ、その世界では魔物が居て魔法が使える。 と言う内容ですね」
「なんかえらく漠然とした内容ですね。 そんな具体性の無い情報を記事にして、それでテレビとかで騒ぎになるっておかしくないですか?」
「まあ、内容は漠然として具体性が無いのですが、動画がウェブの記事で公開されていているんです」
「動画? この前渡した動画が流出したんじゃなくて?」
「いえ、照合をしましたが、頂いた動画と一致する場面は一つもありませんでしたので流出したという事はありません。 ただ撮影されている魔物、ゴブリンやオークと言っていた魔物、そして町とお城が映っていました」
「魔物に、町と城ですか…。その町と城の画像ありますか? こっちでもどこの国の城か調べてみますんで」
「それは構いませんが、本当に武内さん達じゃないんですか?」
「ええ、自分達では無いですね。 そもそも政府関係者の話として、という感じで新聞に載った時点でそちらの不備でしょ? それが今回の記事に真実味を帯びさせたんじゃないですか?」
「まあ、確かにその件につきましては、一部与党の議員さんが漏らした事ですので政府側の不手際ですが…」
「因みにその動画って何で撮影された物かは分かりますか? 携帯とかビデオカメラとか」
「そこまでは判明していませんが、現在政府は火消しに躍起になっている状況なんです」
「そうですか…。 いっその事、公表したらどうですか?」
「そ、それは私達の一存では決められない問題です」
「まあそうでしょうが、話を聞く限りだと、週刊誌側は、動画と漠然とした内容しか持っていないんですよね? だったら政府として現時点で判明している情報を開示してしまえばよくないですか? 不定期で異世界側から短時間しか接触できないと言ってしまえば批判も少ないでしょ?」
「まあ確かに一考の余地はあるかと思いますが…」
「まあこれで週刊誌やテレビで憶測が広がったりすると政府への批判が強まるだけでしょうし」
「そのあたりは私から議員さんにお伝えしますが、本当に武内さん達がリークしたのではないんですよね?」
そう言って鈴木さんはかなり自分達を疑っているようです。
「何度でも言いますけど自分達ではありません。 わざわざ政府と接触して交渉中にそれを自らぶち壊すような事はしませんから」
そう言うと、まだ信用はしていない感じですが、鈴木さんはプリントアウトした町の画像とお城の画像を数枚渡してくれます。
「このお城って、天守閣があるの?」
「私達も最初はそう思ったのですが、見るからに石造りですので日本のお城とは違うようなんですが、かといってヨーロッパにあるようなお城でもないので」
「う~ん、なんか見た事あるような形ですよね……。そう、あれ! 安土城の天守閣に似てない?」
「確かに言われてみればそう見えなくも無いですが…」
「まあ、とりあえず、こちらでもこの城がどこの国の城か調べてみます」
「ええ、お願いします。 あと出来れば誰が接触したのか、どのように接触したのかも調べてもらえますか?」
「まあその辺は調べられるだけ調べてみます。 それはさておき、欲しい物があったんでその相談で今日は接触したんですけど」
「異世界転移の話がマスコミに流れた件がついでみたいに言わないで下さい!それで何が欲しいんですか?政府で用意出来る物でしたらご用意いたしますが…」
「それがですね、火力支援車両的な? よくテレビとかで見る装甲車に機関銃が付いてるやつなんですけど」
「はっ?」
「いやだから、装甲車に機関銃が付いてて一気に敵を殲滅できそうなやつを実弾たっぷりで。 まあ実弾は最低10万発程は頂きたいんですけど」
そう鈴木さんに欲しい物を伝えると一瞬思考が停止したかのようにフリーズして、その後ハッキリと無理です! と言います。
「いや、その辺も政府の人に交渉してくださいよ」
「武内さんは何を考えているんですか? 何処で誰と戦争をするつもりなんですか?」
「いや、戦争はしないけど、魔物の大量発生が頻発してるから、いちいち剣や魔法で撃退するの面倒なんですよ。 だからダァダァダァダァダァ……かい・かん♪ って感じで一掃できれば楽だな~って」
「ダァダァダァダァダァ……かい・かん♪ って何年前の映画ですか! セーラー服も用意しろって言うんですか?」
「いやセーラー服は要らないんで、火力支援車両だけお願いします。」
「わかりました、一応は要望として政府に伝えますが期待はしないでくださいね。 確実に却下されますから」
「う~ん、その辺は鈴木さんの力で何とか…」
「無理です。 そもそも防衛装備は防衛省の管轄で内閣府の管轄ではありません!」
そう言う鈴木さんに明後日の10時頃に再度、ゲートを開く旨を伝えて今回の接触は終了します。
「武内君、だから言っただろ、流石に防衛装備は用意してくれんよ」
そう言って月山部長がほれ見ろ、と言う顔をしています。
「やっぱりダメですかね?魔物の群れを一掃出来て楽だと思ったんですけど…」
「まあまず無理だろうな、それよりも問題なのが私たち以外に日本と接触を持った日本人が居る事だな」
「その辺は、この写真をグランバルさんやロ二ストさんに見てもらってまずは何処の国の城かを調べる所からですね」
「確かに、まずは何処の国かが分からんと調べようがないからな」
月山部長はそう言って席を立ち相談所に戻っていきます。
さて、自分はグランバルさんの所に行ってそれからバイルエ王国のロ二ストさん所だな…。
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