勝利の後は
城門をくぐりべロイニレスの町に入ると、領主のタステイさんがお出迎えをしてくれます。
うん、オッサンのお出迎えじゃなくてピチピチのお姉さんがお出迎えしてくれた方が嬉しいんだけど…。
「マサト、べロイニレスの町を、いやロニーニャ領を救ってくれたこと感謝する」
そう言って手を出して握手を求めてきますが、実際オッサンと握手してもね…。
そう思いながらも、笑顔で握手をします。
「まあ町に大きな被害が出なくてよかったですね。とはいえまだ村々にはウェアウルフの群れが居るでしょうし、逃げ散ったのも何処に向かうか分かりませんし、むしろこれからじゃないですか?」
「確かに、だが今はこのべロイニレスの町への脅威が取り除かれた事を祝いたい。それに領内の村々には、明日より兵を派遣して対処をするつもりだ」
「じゃあ自分達はもう帰って言いですよね?」
「いや、町を救って貰っておいて何もせずに帰らせるなど、領主としてのメンツが立たん、せめて感謝の宴でも開いて持て成しをさせて欲しい」
「まあ、それはいいんですけど、明日から兵士を各村々に派遣してって時に宴なんかしてていいんですか?」
「まあ確かにそうではあるのだが、なにも今これから宴をという訳ではないので是非とも持て成させてくれ。 それに魔物などと蔑んでいたにもかかわらず、その魔物に救ってもらった。 その詫びもしたい」
「いえいえ、その辺はお気になさらず。 あと一応伝えておきますけど、うちのゴブリン達は食事を満足に摂ってますんでガタイ良くて腹とか膨らんでないですけど、野良ゴブリンは普段見慣れた体格してるでしょうから、討伐しないと被害出ますからね。」
「うむ、その辺は兵士や冒険者にしっかりと伝えておこう。 とはいえマサトが率いているゴブリンは装備がしっかりしているし、野良ゴブリンと見間違える事もないだろうがな」
「確かにそうですね。基本的には何かあれば自分が連絡に来るでしょうけど、場合によってはゴブリンやサンダーウルフに伝令をさせる事もあるでしょうから、喋るサンダーウルフや〈護武燐〉の旗を持ったゴブリンに攻撃をしないように伝えといてください。」
「わかった、しっかりと伝えておく。それにしてもあの〈護武燐〉の旗はなかなか趣向が凝らしてあっていい物だな。出来れば我がロニーニャ領の旗のデザインもして貰いたいんだがな」
「そうですね、じゃあこんなのでどうですか?」
そう言って領主のタステイさんに思い付きで〈炉弐威似ャ〉と紙の書いて渡してみます。
「これはなかなか。このデザインの旗を作らせて今使用している旗と共に使わせてもらおう。それにしてもここまでして貰って何もせず帰らせるには…」
どうやらタステイさん的にはどうしても感謝の宴を開くと言って引かない感じです。
「じゃあ、ロニーニャ領が落ち着いたら、プレモーネに連絡をしてください。 そしたら伺いますんで」
「わかった。 領内を荒すウェアウルフの群れを片付けたら使者を送るから、その時は出席をしてくれ」
一応、そう約束をした後、町の様子を見て周ると、魔物の重囲から解放された喜びからか住民の人達が家から出てきて、祭りのような感じになっています。
多分、交易が滞ってたから数日後には色々不足する物が出てきて物価が高騰しそうだけど、魔物の脅威がなくなった事だけに目が行って、多分誰も気が付いてないだろうな…。
プレモーネの商人に情報流しておけば、利益が出るだろうな。
そんな事を考えながらも、領主のタステイさんに、プレモーネに帰ると伝え、ゴブリン軍団の所に向かいます。
タステイさん的には数日町に滞在して欲しそうな感じですけども、自分的にはやりたい事が沢山あるのでとっとと帰りたいというのが本音なので、丁重に辞退をしておきます。
そしてゴブリン軍団の所に戻ると、ロゼフが被害状況の報告にやってきました。
「マサト様、被害状況でございますが…」
「どうしたの?なんか歯切れ悪いけど。」
「それが、ホブゴブリンに進化した者が多く、また途中で加わった野良ゴブリンなどもおりまして、正確な数の把握が困難でして…」
「ああ~、確かに、結構野良ゴブリン居たもんね。 それで被害の詳細は不明として、ゴブリンが何匹でホブゴブリンが何匹ぐらい居るの?」
「はい、ゴブリンが約900匹程、ホブゴブリンが役2200匹程で、あとゴブリンロードが3匹増えて11匹となっております」
「てことは、砦から出陣して来た際の数より増えてるって事?」
「左様でございます。100匹程増えております。 それとウェアウルフの魔石ですが、マサト様の指示を伝える前に皆が多くを摂取をしてしまいましたので、回収できた魔石は2500個程しか…」
「まあ総数は減ってないし、ホブゴブリンが増えて戦力がUPしてるから良しとしとこうか」
そう言って申し訳なさそうなロゼフに気にしなくていいと伝えて、ゾルス達やカウア達、アルチ達に集合を命じます。
「とりあえず、プレモーネとこのべロイニレスの町への往来が安全に出来るようにしときたいから、アルチ達は、森の入り口からべロイニレスまでの間に魔物が居ないか確認をしてくれる? その他は一旦転移魔法で森の入り口に移動して野営して街道周辺の魔物狩りをしてもらうから」
そう伝えた後、ゲートを開き森の入り口にゴブリン軍団を移動させます。
「じゃあ自分は一旦プレモーネ戻るけど、ゾルス達はアルチ達からの情報を元に魔物の群れが居る場所をまとめといて。 明日自分が戻ってきたら転移魔法で一気に移動して魔物の群れをサクッと排除して、とっとと二ホン砦に帰るから」
「かしこまりました。」
「それとバルタ、途中で二ホン砦に帰らせた騎馬ゴブリンだけど、グリーンフォース含めて進化してないよね?」
「はい、初戦で今回はお役に立てないので砦に戻しておりましたので…」
「じゃあバルタは先に二ホン砦に戻って、ゴブリンとグリーンフォースに魔石を摂取させて進化をさせておいて。ウェアウルフの魔石を2500個程渡すから」
「かしこまりました」
そう言ってゾルス達に後を任せて、バルタを二ホン砦に送り魔石を渡した後、自分はプレモーネの領主館にゲートを開き移動をします。
「マサト、帰ってきたか。それでべロイニレスはどうなった?」
「一応は魔物を撃退できましたよ。ただ町には被害が出てませんけど、村々には被害が出てるでしょうね。それに農作物やら家畜なんかはかなりの被害が出てると思いますね」
「そうか、人的被害が少ないのは良いが、魔物が撃退できても次に襲って来るのは食糧不足か」
「そうですね、食料不足もそうですけど、人の往来や物流が滞りますから、日用品なんかも不足するでしょうね。 まあ食料は米や小麦を支援して恩を売っておいて、日用品やら生活必需品なんかは売りに行けば飛ぶように売れるでしょうね」
「確かにそうだが、弱みに付け込んで足元を見ろというのか?」
「いえいえ、食料の援助はしっかりとして、その他の品は商人達が適正な価格で販売しに行くだけですし」
「ものは言いようだな。だがべロイニレスの町まで商人が交易に行くとなると、往復の安全が保障されないと交易が再開されないが、その辺はどうなんだ?」
「それについては大まかに魔物を排除してるんで、大量発生にでも巻き込まれない限りは大丈夫でしょう。 とは言え、あくまで大まかにですから護衛の冒険者は必須ですけどね」
「じゃあ俺はマサトから米や小麦を格安で大量に購入し、支援をして、商人達にはべロイニレスの町への交易を推奨する感じだな。」
「格安なのは納得できませんが、大まかに言うとそんな感じですね。」
そう言ってグランバルさんと今後の話をし、その後、大量発生した魔物との戦いのあらましを話します。
「はぁ~、話をきく限り、マサトぐらいしか出来ない戦い方だな。 日本人が転移してきてなかったらどうなっていた事か…」
「まあ、日本人が転移させられなければ大量発生自体が起きなかった事ですから何とも言えませんね。とりあえず苦情はネレースに言ってください」
「まあその辺はどうしようもない事だからな。それでタロイマンと援軍に向かった兵士はどうしたんだ?」
「えっ?べロイニレスの町に居ますよ?」
「いや、そこはマサトが転移魔法で帰還させるんだろ。 なんであたかも他人事のように言ってるんだ?」
「歩いて帰ってくれば、街道の魔物討伐も出来て一石二鳥かと思ったんですが。迎えに行った方が良かったですか?」
「マサトの眷属達が街道の魔物を大まかに排除してるんだろ? だったら明日にでも迎えに行ってくれ」
うん、歩いて帰って来るかな~って思ってたけど、迎えに行かないといけないんだね。
まあ手間ではないんだけどさ、少しは幼気な自分を労わって欲しいもんだよ。
「あとマサト、話は変わるが、少しきな臭い話が間者から来ているんだが…」
そう言ってグランバルさんは真剣な顔をして間者からもたらされた報告をまとめた書類を渡してきます。
きな臭い話ね…。
絶対に面倒事だし。
ドグレニム領には直接影響はないとか言ってるけど日本人がらみだよね。
もう諦めてるけどさ、異世界ライフって、なんかこう楽しい冒険的なのがセオリーじゃないの?
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拙い文章・誤字脱字が多く読みづらく申し訳ございません。
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