戦術変更
ラルに跨りウェアウルフに囲まれていた村に救援に来たことを伝えに行きますが、いきなりゴブリンを率いて来た人間を信用できないのか、守備兵が槍の穂先を自分に向けてお出迎えをしてくれます。
「まあ予想通りの反応ありがとうございます。 で、これが領主のタステイさんからの書状ね」
そう言って槍を向ける兵士の隊長らしき人にタステイさんからの書状を渡すと、書状を読んだ隊長さんは驚いたような顔をしてから兵士達に槍を下げるように指示します。
「書状にはドグレニム領に居る魔物を使役する日本人とあるが、君がそうなのか?」
「そうですよ、マサト=タケウチと言います。因みに率いてきているのはゴブリン3000匹です」
「ゴブリンが3000か、かなりの数だな、これなら他の村やべロイニレスの町に群がる魔物も撃退できるな」
「いや、それがそうでもないんですよね、実際、この村の救援が初戦だったんですけど、ウェアウルフの群れ300程に思いっきり苦戦しましたし。まあ作戦と編成を変えて次の村を救援に行きますがかなり厳しいですね」
そう言うと隊長さんは落胆したような、また自分達の無力さを悔やむ様な顔をしています。
「まあとりあえず自分達も全力でウェアウルフ退治をしますんで皆さんは村の防備を継続して頂き、再度包囲されるような事態になったら何とかして守り通してください」
「わかった、村を守るのは我々の役目だから全力で守るが…。 だが村が守られても魔物の群れが居なくならなければ今度は飢えが襲って来るぞ」
「それについてですけど、村の食料が尽きる前にウェアウルフの食べ物が尽きる可能性があるので長期的に見たら、食料を求めて他の土地に向かう可能性があります。 その為にも守りを固めてウェアウルフに喰われるようなことのないようにしてください」
そう言うと思い当たる事があったのか隊長さんは頷き周りの兵士達に指示を出していきます。
一応、救援の件を伝えたので、小麦と米を当座の食料として渡した後、村を出てゾルス達に合流すると、先程打ち合わせた通り、ホブゴブリン5匹1組、ゴブリンロード2匹1組、ゴブリン100匹一組での編成が完了していました。
「じゃあ次の戦いは、ホブゴブリンを中心に戦い、ゴブリンは支援、カウア達とアルチ達、そしてゾルス、バルタ、ハンゾウは自分と一緒に先陣、そしてロゼフは各部隊の指示と必要に応じて魔法で支援の方向で」
そう言って再度作戦を確認した後、ゴブリン達には待機を命じ、自分はラルに乗り次に向かう村に行き転移魔法でゲートを開けるようにします。
本当だったらゴブリンが戦ってるうちに次の村に行ってゲートで移動できるようにするつもりだったのに。
そんな事を考えながら2番目に救援をする村の近くまで行くと、やはりここも300匹程のウェアウルフの群れが村を囲むようにうろついています。
幸いなのか、ウェアウルフの群れはこちらに気付いているようですが向かって来ることも無く様子を伺っているだけなので、転移魔法でゲートを開きゴブリン達を移動させ、布陣をさせます。
ゴブリン達がゲートから現れ出したの見てウェアウルフの群れは獲物と判断したのか数匹がゴブリンに向かって来ます。
「カウア達ミノタウロスとアルチ達サンダーウルフはゴブリンが布陣を終えて戦闘準備が整うまで牽制して」
そう言った後、ゴブリン達の布陣を急ぐようにゾルス達に指示を出します。
今回の作戦は、自分とカウア達ミノタウロスとゾルス、バルタ、ハンゾウが先陣を切り、その後に5匹一組のホブゴブリンと、2匹1組のゴブリンロードが攻めかかり、後詰めとして100匹一組のゴブリンが攻めかかる布陣でウェアウルフに挑みます。
アルチ達サンダーウルフはホブゴブリン達が戦闘に加わった頃を見計らいウェアウルフの後方から襲い掛かるよう指示を出しておきます。
自分を含めた先陣はウェアウルフの群れに飛び込むと同時に各々の武器を使って戦い乱戦に持ち込んでいきます。
前から飛び掛かるウェアウルフを斬り、後方から爪を振り下ろすウェアウルフを返す刀で斬り、そしてその勢いのまま刀を横に薙ぎ切り裂きます。
ゾルスの大剣で両断され、バルタの槍に突かれ、ハンゾウの短剣で首筋を斬られウェアウルフ達が霧散していきます。
先陣組がウェアウルフを引き付け注意を引いたところに、5匹一組のホブゴブリンと、2匹1組のゴブリンロードが攻めかかりウェアウルフ1匹に対し複数で戦う戦法で確実に数を削って行きます。
複数のウェアウルフが向かって来たホブゴブリン達は互いに背を預け防戦をし、単独で向かって来るウェアウルフには1匹を複数で囲み連携をしてウェアウルフに立ち向かって互角に戦いを繰り広げています。
そんな中、乱戦を抜けて後続のゴブリン集団に襲い掛かるウェアウルフも居ましたが、こちらは100匹単位で密集し槍衾で前進を遮られ、集団の中から魔法や矢で攻撃を受け撃退されていきます。
そんな中、後方に回り込んだアルチ達サンダーウルフが参戦をするとウェアウルフの群れに混乱し始め所々で孤立し打ち取られ霧散していきます。
…
まあこの方法なら数の利を生かして何とか対抗できるかな…。
そう思いながら、戦場を見渡すと、ウェアウルフはその数を大幅に減らしほぼ戦闘も終息に向かい、そしてしばらくするとすべてのウェアウルフは物言わぬ魔石となって地面に転がっています。
戦闘が終結したのを確認した後、ゾルス達には被害状況の確認と魔石の回収を指示し、自分は村に向かいます。
村の前で救援に来たことを伝えますが、やはり、ここでもいきなりゴブリンを率いて来た人間を信用できないのでしょう、守備兵が矢を番えお出迎えをしてくれます。
うん、まあ今回も予想通りの反応ありがとうございます。
そう思いながらもこれが領主のタステイさんからの依頼で救援に来た旨を伝え、兵士に書状を渡します。
「とりあえず読み終わったらその書状返してね。次の村でも同じ反応が予想されるからその書状が無いと面倒だから」
そう言って兵士の隊長さんらしき人に話しかけると、書状を読み状況を把握したのか、丁重に書状を返却してくれます。
「それで、マサト殿はこの書状の通りゴブリンを率いて村々を囲む魔物どもを倒して周っているのか?」
「まあそうですね、とは言えここが2か所目なのでまだ先は長いですが大まかにウェアウルフの群れを潰していって、その後にべロイニレスの町に群がっているウェアウルフの群を何とかするつもりです」
「そうか、この書状には各村の守備兵を糾合するように、とあるが我々の前に救援をした村の守備兵は如何したのだ?」
「あ~、それなんですけど、ちょっと方針が変わっていまして、守備兵の皆さんにはそのまま村の防衛をお願いしたいんですよ」
そう言って先ほどの村に居た隊長さんに話した内容を伝えると納得して防衛の継続を了承してくれます。
ほんと、物分かりのいい隊長さんで助かります。
その後当座の食料として小麦と米を渡します。
そう言えば今更だけど、今回の防衛に参戦で貰える報酬ってどうなってるんだろう?
うん、一度べロイニレスの町に行って、現状報告と一緒に報酬の話聞いて来よう。
そんな事を思いながらゾルス達の所に戻り被害状況の報告を聞きます。
ゾルスの報告ではこちらの被害はホブゴブリン27匹、ゴブリン48匹との事です。
被害の傾向も確認したところ、どうやらホブゴブリンの被害は編成した組が丸々全滅したのが殆どで、どちらかと言うと数匹に囲まれ対処しきれなかったとの事で、ゴブリンに関しては今回新たに加わったゴブリンが命令を無視して飛び出してウェアウルフに向かって行き返り討ちにあったようです。
ゴブリンの被害は……、まあいいや、新たに加わった訓練もしてない野良ゴブリンだし、ただホブゴブリンの被害が深刻かな…。
そう思いながら回収した魔石と前回の戦いで回収した魔石を確認したうえで、ゴブリンの中から選抜した者に魔石を与えホブゴブリンに進化させます。
今回は1匹につき何個とかで与えるのではなく、順番に進化するまで与え確実にホブゴブリンの数を増やす方法を取ります。
ていうか、絶対魔石を摘まみ食いしたゴブリン居るよね?
普通に計算して600個あるはずの魔石が450個程しかないんだけど…。
そんなツッコミを心の中でいれながら、順番にゴブリンに魔石を与え進化をさせて行くと、何とか102匹程ホブゴブリンに進化しました。
今回の戦いで死んだホブゴブリンの武器や防具で使用可能な物は新たに進化したホブゴブリンに使用させ、残りはホブゴブリン用の長剣と短剣、そして鉄槍を渡し、防具はそのままで我慢してもらいます。
その後再編成を指示し、ゾルス達には新たに進化したホブゴブリン達に5匹一組の連携を教えておくように指示をして自分はラルに乗り次の村に向かいます。
なんか、さっきの村と同じ数ぐらい…大体300匹程だけど、規則性があるのか、偶然なのか?
そんな疑問が次の村が見える所まで来たら頭に浮かびます。
まあ、とりあえず目の前の村を囲むウェアウルフの群れを排除して、さらに他の村も救援をしていけば、偶然なのか何らかの規則性があるのかわかるだろうけど。
そう思いながら転移魔法でゲート開きゴブリン達を移動させ布陣を開始します。
それにしてもウェアウルフの索敵能力高いな…。
人狼そのまんまだけど、耳が良いのか嗅覚が優れているのか、自分の視界に入った時には既にこっち警戒してるもんな…。
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