糸束の販路開拓②
「じゃあとりあえずジルクスパイダーの糸束を200程購入させてもらうわ。まあ私から商人達に卸す訳だから価格は安くしてもらえるんでしょ?」
そう言ってルイロウ領の領主のランリスさんはクスリと悪戯っぽく笑いながら価格交渉をしてきます。
「そうですね、じゃあ糸束一つを幾らで購入してもらえますか?」
「そうね、まあ糸束一つでかなりの量がありそうだから大体5000レンでどうかしら?」
そう言って価格を提示するランリスさんですが、実際、月山部長に糸束一つの相場を聞いて来るのを忘れたので、これが高いのか安いのか分かりません。
うん、困った・・・。
まあルイロウ領の商人がプレモーネに来た際は相場での販売になるだろうからここで損してもいいか・・。
そう思いながら、ランリスさんの提示した価格で了承し、ジルクスパイダーの糸束200束を納品し代金を受け取ります。
「そういえば、つい最近、ていうか2日前ですが、バイルエ王国の首都ドイルズに魔物が大量発生して押し寄せた情報は入ってますか?」
「あなたみたいに馬鹿げた能力がある訳じゃないんだからバイルエ王国で2日前に起こた事なんてそんなにすぐ情報が入るわけないでしょ?」
そう言って少し呆れたようなランリスさんですが、詳細には興味があるようで話を続けます。
「まあ大量発生の発端は分かりませんが、自分が昼前に首都ドイルズに転移したら既に戦闘が始まっていたんですが、大量の巨大芋虫が首都ドイルズに押し寄せて来た感じですね。まあ水堀のある場所は避けて城壁を登って来てたんで防戦するバイルエ王国側は城壁全体を守る必要が無かったんで守りやすかったでしょう。ただ、数が数なので一か所でも突破されて町中に侵入されたら相当な被害が出ていたでしょうね」
そう、簡単な状況を話すと、ランリスさんと結城さんは顔を顰めます。
うん、女性だもんね・・・。
巨大芋虫の大群って想像したくもないよね。
「まあ成り行きで防戦に参加させられたんですが、城壁から見たら見渡す限りの巨大芋虫の群れで倒しても倒しても切りがない状態だったんで、以前開発した広域魔法の実験をさせてもらいました。それでも巨大芋虫駆除に夕方までかかりました」
「そう・・・。まあ広域魔法の実験ってのが若干気になるけど、バイルエ王国は大した被害も無く魔物の大量発生を凌ぎ切ったのね?」
「ええ、凌ぎ切りましたね、ただ気になる事もあるんですよ」
「気になる事?」
そう言ってランリスさんは眉を顰めます。
「巨大芋虫の大群が群がってきたのは首都ドイルズだけなんです。近隣の村々には1匹たりとも巨大芋虫が現れていないんですよ」
「どういう事?魔物の大群は首都ドイルズだけに襲い掛かったとでも言うの?」
「そうなんですよ、理由は分かりません、近隣の村々には目もくれずにです。人口が多いのを本能で分かっていたのか、それとも何か別の理由があるのか・・・」
「理由は不明・・・・。だけど人口が多い所が本能で分かると言うなら、魔物が大量発生した場合、近くにある人口の多い町が狙われるという事になるわね」
そう言ってランリスさんは考え込んでしまいます。
「まあ、情報といったらこれくらいですが、あとは、魔物の大量発生の際には倒した魔物の魔石を回収しないと、仲間の魔石を摂取し上位種に進化します。なのでただ倒すだけだと場合によっては状況が悪化する恐れがある感じですね」
「まあ有意義な情報とまではいかないけど、無視できない情報ね」
「そうですね、知らないよりは知っていた方がましぐらいの情報ですが、魔物が大量発生した際の参考程度にしてください」
「そうさせてもらうわ、それはそうとルイロウ領で魔物が大量発生した場合はあなたは救援に来てくれると思っていいのかしら?」
「それは分からないですね。実際その時にドグレニム領でも魔物が大量発生してるかもしれませんし。まあ一応留意はしておきます」
そう言って通信魔道具をついでに売り込んでおきます。
「これは便利そうだけど、親機の大きさはどうにかならないの?これじゃあ持ち運びは出来ないわよ」
「まあ基本的に持ち運びは想定してませんし。子機は親機にしか通信できませんから小さいですが親機は付属の子機すべてと通信できるようにしてるんでどうしてもサイズが大きくなるんですよ。まあ一応子機を一台自分も持っておきますんで、最悪の場合は呼んでみてください。動けるようなら依頼という形で自分かゴブリン軍団が救援に来ますんで」
そう言って通信魔道具をボッタクリ価格で販売し、その後雑談をした後に領主館を後にします。
一応、結城さんには衣装は時間がかかるけど、声を拡声する魔道具を作って明日届けに来るって伝えときましたが、全力で拒絶されましたね・・・・。
まあ要らないと言われても強制納品しますけど。
その後はバイルエ王国に移動し城門でロ二ストさんに取り次いで貰います。
うん、何回も来てるとスムーズに取り次いでくれるようになったな・・・。
そう思いながら応接室に通されて暫く待つとロ二ストさんがやってきます。
「これはマサト殿、先日は首都ドイルズの防衛にご協力頂いたとの事、国王に替わってお礼申し上げます」
「いえいえ、土田に用事があってきたら巨大芋虫が群がってたんで・・・。まあそれはいいんですが、今日はジルクスパイダーの糸を売りに来たんですよ」
そう言ってテーブルに糸束を一つ出しておくとロ二ストさんは手に取り品定めをしています。
「それでマサト殿は商家に売りに行かずわざわざ国に売りに来たのですか?」
「まあ商家に売ってもいいんですけど、ドグレニム領に交易に行けばこれを仕入れられるよ。って宣伝をして貰いたいんでわざわざ国に売りに来たんですよ」
「そうですか、それで今回はいかほどお持ちになったのですか?」
「一応300束ですね、一束5000レンぐらいでどうでしょう?」
そう言うとロ二ストさんは少し考えた後、財務卿に確認をするとの事で一旦席を外します。
うん、基本ロ二ストさんを毎回訪ねているけど、あの人は外務卿だからね。
暫くするとロ二ストさんが戻ってきます。
「マサト殿、300束をバイルエ王国がすべてが買い取らせて頂きます。それと商家にも仕入れ先はドグレニム領だと伝えておきましょう」
そう言ってロ二ストさんは連れて来た使用人に糸束を運ばせていきます。
「それにしても、マサト殿が居る限りドグレニム領は発展の一途をたどりますな。羨ましい限りです」
「まあドグレニム領も発展しますけど、近隣に位置するバイルエ王国も交易の中継地点として発展するんじゃないですか?まあお互いに発展する感じですね」
そんな話をしながら、ロ二ストさんとしばらく雑談をします。
そんな中でやはり話題になるのは2日前にあった魔物の大量発生の話になります。
どうやらバイルエ王国内でも首都だけが襲撃を受けて村々には被害が出なかった事の理由を調べているそうですが、やはり結論は出ていないようです。
一応ロ二ストさんには原因とかが判明したら教えてくれるようお願いしてから、プレモーネに戻ります。
うん、一応月山部長にも販路拡大の為の営業は成功したと伝えたし今日はもう家に帰って魔道具作ったら寝よう。
そう言えば自分の屋敷建設の話しはどうなったんだろう。
うん、明日辺りグランバルさんに聞いてみよ。
ていうか屋敷と言ったら執事さんとメイドさんが定番だよね。
その辺も手配しないとな・・・・。
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