日本からの依頼
日本政府関係者の人達への現状報告は大体終わりましたが、自分達が聞きたい事はまだ聞けていないのでここからは自分達が日本政府関係者への質問をします。
「まず現状として失踪者として扱われていますが、これは異世界に転移したとかそう言う風に発表をするんですか?」
その質問に関しては、誰もが口を開こうとしません。
「それじゃあ自分達が日本に戻ってきた場合の扱いはどうなるんですか?」
そう質問しても日本政府関係者は誰一人口を開こうとしません。
「誰もご回答いただけないって事は自由にしていいという事と受け取ってよろしいのですか?検証はしていませんが転移者全員、ネレースと言う神に力を与えられているんで日本に戻る際にその力が失われなければテレビやマスコミやらから引っ張りだこになりますが、その辺も自由と?」
「いや、そう言う訳ではい、申し訳ないが、ここに居る全員が君たちの話が現実離れし過ぎているから現状を受け入れられていないし、日本政府としてもまずは話を聞いてその後検討する形を予定している。なので今ここで回答は出来ないんだ。だが君たち全員には今後方針が決まった際それに沿った行動をとって欲しい。ただ我々としては政府の保護下で極力可能な限りは要望や帰還後のバックアップはするつもりだ」
「それは今回転移させられた人間は日本政府の都合のいいようにしろと?ていうか都合のいいように利用されるだけならマスコミに異世界に転移させられていたと言って売り込んだ方が良さそうな気がしますけど」
「君、それは困るよ、まず政府として異世界があるなんて公式に認めてないし、世界的にみても現実離れしすぎている事象だ、それをマスコミなんかに話したら日本だけでなく世界的な騒ぎになってしまう。そんなことは認められるわけがないだろう」
「まあ騒ぎにはなりますが、とりあえず帰還した人の一部は生活に困らないだけのお金は手に入りますよね。実際自分なんかは転移魔法でゲートを開けますし、マスコミに異世界があるという現実を受け入れさせることは可能ですから」
「すまんが、まずは政府の方針やサポート体制を聞いて、その上でお互いの要望をすり合わせお互いに納得のいくようにして貰いたい」
多分自分の表情が不満そうな顔をしていたのでしょう。
月山部長が話に入ってきました。
「内閣官房副長官の田川さん、でよろしかったでしょうか、おっしゃりたい事は理解できますが、具体的な内容を提示していただけないとやはり私達も納得が出来ないと思います。とは言え今回はお互い状況報告と現状の確認という事で次回以降に何かしらの具体案などをご提示頂けると考えてよろしいのでしょうか?」
流石、感情と結果のみ求める自分と違い月山部長は大人の対応をしています。
頭では今日どうこうなるとは思ってないけど、とりあえず交渉を有利に進めるために強引に物事を進めようとする自分とは全く違います。
「月山君、いや月山さんでしたね、貴方のおっしゃる通り一旦我々も持ち帰って政府内で検討しない事には、ご回答や約束などは出来ません。そもそも今回の件はここに居る人間で物事を決定する事は出来ない事案です」
そう言って田川さんと言う内閣官房副長官は丁寧な口調で月山部長と話しています。
うん、自分の時とは違い過ぎない?
「では田川さん、持ち帰られて検討されるとして、結果は、いや、政府の方針はいつ頃に出るのですか?」
「そうですね、明確にはお答えできかねますが、極力早いうちに方針を決定するように私からも働きかけます。実際、方針決定が長引けば異世界に転移したなんて話がマスコミに流れかねませんし、そうなった際には報道の自由を振りかざすマスコミを抑え込むことも難しいですから。それに失踪者のうち3万人が異世界に転移したという話は政府からの発表と言う形をとらないと、色々な所から非難されますから」
「ではそちら側の方針決定をお伺いしてから今後についてお話をすると言う事で」
月山部長は田川さんの回答を聞きは納得したような感じです。
うん、まあそれでいいんですけどね、スピードって重要ですよ?
なんか自分からすると動きが遅く感じるんですよ。
「それで、私達から武内さん達にお願いしたい事があるのですがよろしいですか?」
話がひと段落したのを見計らい鈴木さんが何かバッグに入った物を持ってきます。
「武内さん達にお願いしたいのは、そちらの世界の情報を映像として記録して欲しいのです。現在ここに居る我々は現実ではありえない光景を目にしていますがここに居ない人達はやはりなかなか信じられないと思います。そこで異世界の街並みやそこに住む人々、出来れば魔物と言われる生物などを記録して頂けますか?」
そう言ってバッグを空け中に入っているビデオカメラやメモリーカードなどの説明を始めます。
「鈴木さん、1ついいですか?録画って簡単に言いますが電源はどうするんですか?向こうに電気なんて無いですよ?」
うん、魔道具化すれば電源の心配は無いんですがその説明をすると面倒事な感じがするのでとりあえず聞いてみます。
「それにつきましては予備のバッテリーをお入れしております。これで大体48時間分は録画できると思います。」
「じゃあその辺はさっきから空気になっているこちらの土田に任せますんでそれでいいですよね?」
「はい、どなたが録画されてもこちらの要望をお聞きいただき街並みや人々の生活などわかれば構いません、ますは皆さんの居る場所が本当に異世界と言う証拠となるような画像を頂きたいのです」
そう言ってバッグをこちらに渡そうとしますけど、ゲートの広さ20センチ四方ですからね?
終電間際の電車じゃないんですから無理やり押し込んでも入りませんよ?
鈴木さんは数回バッグをこちらに押し込もうとして出来ない事を悟ったのか、中の物を一つ一つ手渡ししてきます。
「なんで俺が録画係なんだ?ていうか武内がやればよくないか?」
「えっ、だって土田暇でしょ?それに地方領主が治める町より王都の方が良くない?それに土田自慢の鎧で魔物を討伐する姿をアピールできるし・・・」
そう言ってビデオカメラやメモリーカードに予備バッテリーを土田に渡します。
うん、めんどくさい事は土田に押し付けるに限る!
「じゃあとりあえず次回はいつ頃ゲート開けばいいですか?」
「それでは1週間後で如何でしょうか?」
「じゃあ一週間後の10時にここにゲートを開きますんで、ただ11時になってもゲートが開かない場合はこちらで面倒事が起こっていると思って翌日以降にしてください」
「それは先ほど言われていた魔物の大量発生がという事ですか?」
「ええ、そう思ってもらって構いません、まあ普通に人間同士の戦争の可能性もありますけど・・・」
「せ、戦争ですか?・・・そんな事・・。わかりました。ではそのように手配をします。あとメンバーは今回来られた方を中心に各省庁等から専属の担当を派遣してもらい、この会議室は対策室としますので、夜や早朝以外誰かしら待機していますので何かあればいつでも連絡をください」
そう言って対策室設置を宣言する鈴木さんですが、勝手に決めていいの?ていうか既に決まってたの?
「それと武内さん、先程の話ですと魔物の死骸や魔石と言う物がそちらの世界には存在しているとの事ですが、サンプルとして頂く事は可能ですか?」
「魔物の死骸はアイテムボックスに入ってるけど魔石の余分は無いんで魔石は土田に交渉してください。それと魔物の死骸って言いますけど、そもそもこのゲートを通るサイズ無いですよ?まあそれでも渡すことは可能でしょうけど、それよりも検疫とか大丈夫なんですか?未知のウイルスとかあったら大惨事ですよ?」
そう言うと鈴木さんは検疫は考えてなかったようで今回は魔物の死骸をあきらめたようです。
うん、手をゲートから出してアイテムボックスから魔物の死骸をだしたら日本に渡せそうな気がするけど・・あの顔は次回何かしら対策立てて魔物の死骸を受け取る気満々だな・・。
その後土田がブツブツ言いながらコボルトの魔石を20個程渡し今回の話し合いは終了となります。
ゲートを閉じた振りして小さなゲートを少し離れた場所に出して日本側の人達の様子を伺いましたが、皆さんゲートが閉じた瞬間、一斉に喋り出してざわざわして内容がよく聞き取れませんでした。
ただ、現実に非現実的な光景を目にしたため、一様に驚きと困惑があるようです。
とりあえず自分の悪口を言っている人は居なさそうなので良しとしましょう。
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拙い文章・誤字脱字が多く読みづらく申し訳ございません。
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