終息
大剣を振り回しながら森に入って2.30分程進むとスケルトンの数が少なくなり、しばらくするとスケルトンの群れの後方に出ました。
カウア達は既にスケルトンの群れを突破していたようで、後ろからスケルトンを薙ぎ払っています。
「カウア達ミノタウロスは再度森の中のスケルトンを薙ぎ払いながら今度は森の出口を目指して、その後は再度森の奥に向かってを繰り返して!」
「かしこまりました」
そう言うとカウア達ミノタウロスはバトルアックスを振り回しながらスケルトンの群れに突っ込んでいきます。
「さて、自分も行きますか・・・」
そんな独り言を呟き、大剣を振り回しながら森を進むと先ほどまで見かけなかった頭蓋骨の形が異なるスケルトンや黒い色のスケルトンがちらほら現れます。
おそらくこれらが上位種で共食いなどをするのでしょうがお構いなしに薙ぎ払いながら進みます。
ていうか、上位種だけを避けて大剣を振り回すの面倒なんですよね・・・・ただでさえ自分には群がって来るんでそんな事に構っているとスケルトンの餌食になりそうです。
スケルトンを薙ぎ払いながら森を抜け、森の外での戦闘に目をやると、なぜか乱戦となっています。
森の中のスケルトンはカウア達に任せ一旦乱戦を抜けてタロイマンさんの所に向かいます。
本陣に着くとタロイマンさんはおらず、年配兵士のマイルセンが指揮を執っています。
「マイルセンさん、タロイマンさんはどうしたのですか?」
「おお、マサト殿、それがなゴブリンの戦いに影響を受けたようで冒険者が逸って突出して乱戦となったんで見捨てる訳にもいかんからこちらも兵を押し出させた結果この乱戦になったんだ。それで乱戦の中での指揮など滅多に出来ない事なので何事も経験という事で本陣はワシが残ると言って乱戦の指揮をさせに行かせたんじゃ」
「それで現在の所こちらの損害はどうなってますか?」
「ああ、それについては心配は要らんぞ、相手は動きの鈍いスケルトンだ、けが人はおるが死者の報告は上がって来ておらん。」
そういって飄々としているマイルセンさんですが、流石はタロイマンさんが新兵だった頃の副兵士長と言うべきか、戦闘の状況に応じで要所要所に予備兵をぶつけて戦線を保っています。
それにしても死者が出ていないってそんな事あり得るのかな?
そんな疑問が浮かびましたが、今はそれよりもスケルトンの群れを殲滅する事が最優先の為、戦場を見つめるマイルセンさんに戦況を聞きます。
「それで、マイルセンさんから見て戦況はどうですか?」
「そうだな、今後森から出て来るスケルトンの数と質にも左右されるだろうが現状は押している、ただ時間が経てばやはり押されるだろうな・・・」
「ではそれに対する対策は?」
「乱戦になったのだからある訳なかろう、こうなってしまってはどちらかが敗走するまで決着はつかん」
そう言て戦場を眺めるマイルセンさんですが、悲観している風は無く、むしろ今すぐ自分も乱戦に加わりたくウズウズしている感じに見えます。
「それにしてもマイルセンさんは戦い慣れしてますね、以前のドグレニム領はそんなに戦いが多かったのですか?」
「いや、ドグレニム領では滅多に戦いなどは起きんよ、ワシが昔、腕試しと称して諸国を周って多くの戦いや小競り合いなんかに参加していただけだ、それでドグレニム領に辿り着いたら嫁が出来て住み着いた感じじゃな」
そう言って笑うマイルセンさんですが、お歳はお幾つなんでしょう?
聞いてみたいような、聞いたらいけない様なそんな感じなのでとりあえず今回は聞かずに今度グランバルさんにでも聞いてみましょう。
そんな会話をしている間も乱戦は続いていますが、森から出て来るスケルトンの数はいくらか減っている感じに思えます。
マイルセンさんに自分は再度森に突入する旨を伝え本陣を後にして森に居るスケルトンの数を減らしに向かいます。
途中乱戦となっている戦場を通過する際に戦いの様子を見ると数には押されていますが人間とゴブリン達の方が戦いを有利に進めている感じがします。
乱戦ともなると、敵か味方かの区別しかなく、人間もゴブリンもスケルトンを倒す為には協力して撃破していますが、先程からなぜかホブゴブリンは多く見かけるのですが普通のゴブリンが少ないような感じがします。
ホブゴブリンが胴丸をつけている所を見るとどうやら摘まみ食いの成果なのか進化で上位化をしているようです。
まあ戦力が上がる分にはいいか・・・。
そう思いながら森に入りスケルトンを薙ぎ払います。
森に居るスケルトンを見渡すと先ほどよりも上位化したスケルトンが増えている感じですが気にせず群がるスケルトンを薙ぎ払い破壊していきます。
「ガキン!!」
そんな金属と金属がぶつかり合う音がして振り回していた大剣が止められた為、受け止めた相手を見ると黒い大剣を持った黒いスケルトンが居ます。
どうやら上位化したスケルトンは武器も具現化するようです。
本来なら間合いを計って攻撃をしたいのですがスケルトンに一騎打ちなど通じる訳も無く次々とスケルトンが群がって来るのでそれを薙ぎ払いながらの戦闘となります。
大剣を持つスケルトンと剣戟を交わしつつ群がるスケルトンを薙ぎ払いますが、どうやら大剣持つスケルトンもそこまで強い感じではないようです。
大剣を躱し頭部を目掛けて大剣を振るうと黒いスケルトンは避ける事も無くあっさりと頭部を破壊され崩れ去ります。
とりあえず黒いスケルトンの魔石を回収しアイテムBOXにしまうとそのまま森の奥に向けて突き進みます。
どうやらかなり数が減って居るようであっさりと群れを突き抜けられましたので、この分なら再度森の入り口に戻りそこで上位種を狩れば何とかなりそうな気がしてきます。
カウア達は森の中を移動しながらスケルトンを狩り、自分は森の入り口に戻り森から出て来るスケルトンを大剣で粉砕していきますが、森から出て来るスケルトンが減ってきたからか、乱戦になっている戦場に余裕が出来たようです。
近くに居たサンダーウルフに声をかけ、ゾルスとバルタ、そしてタロイマンさんに今のうちに態勢を立て直すように伝えてもらい、自分は立て直しがスムーズに進むように広範囲に移動をしながら戦闘を継続します。
時間が経つにつれタロイマンさんの指揮が良いのか立て直した部隊が再度組織的な戦闘を開始しますが、どうやらここが稼ぎ時と決めた冒険者がやはり突出しているようです、目に見えて森から現れるスケルトンが減ってきたのでこのまま殲滅できると思った時、森の中から大剣を持った黒いスケルトンの群れを率いた四本腕のスケルトンが出てきます。
四本腕のスケルトンが剣をこちらに向けると黒いスケルトンは走り出し、人間やゴブリンに向かって来ましたが、迎え撃つ側は三者三様の反応を示します。
ゴブリン達はゾルスとバルタを先頭に突撃し、ドグレニム領兵は部隊ごとに固まり1隊で黒いスケルトンを1体相手にする構えを取り、冒険者達は、腕に覚えのある者が前に出て、自信の無い者は後方に下がります。
とはいえ先程まで戦い続けていた人間と疲れを知らないスケルトンではやはりスケルトンの方に分があるようで人間の方が押され気味になりつつありますが、ゴブリン達とドグレニム領兵は着実に黒いスケルトンの数を削りつつありますので、黒いスケルトンの対応は任せて自分は四本腕のスケルトンを狙います。
魔物相手に正々堂々と戦う必要もないので一気に距離を詰め切りかかりますが、二本の手に持つ盾で防がれもう二本の手で持つ剣で反撃をしてきます。
腰を落とし力任せに胴を薙ぐと盾で防いでいても体重の軽いスケルトンは弾き飛ばされ地面に転がります。
起き上がるスケルトンに向けて大剣を振り下ろすと今度は剣で受け止めようとしますが力任せに振り下ろした大剣の重みに耐えられずスケルトンも右の腕2本が切断されますが、その体制のまま剣を突き出し攻撃をしてきます。
スケルトンに感情があるのかどうかは分かりませんが、防戦一方になるスケルトンに連続して大剣を振るうと大小様々な傷が骨に刻み込まれ動きも鈍くなっていきます。
大剣を構えなおし地面を強く蹴り斬りかかるともはや抵抗が出来ないのか四本腕のスケルトンはあきらめたように立ち尽くし大剣により頭部を粉砕され崩れ落ちます。
「ふぅ、終わった、あとは残党狩りだな・・・・」
そう思い周りを見渡すと先ほどまで人間やゴブリンに向かっていっていたスケルトンが後退し逃げ出しています。
どうやら黒いスケルトンは多少なりと知能があるようです。
とはいえここで殲滅しておかないと後々厄介なので逃げるスケルトンを狩って行きます。
日が昇り切り昼頃になると戦闘も収束し疲れ切った冒険者も兵士も地面に座り込み思い思いに雑談をしています。
「ゾルス、バルタ、ゴブリンの被害はどの位?」
「そうですね、まだ正確に把握はしていませんが概ね200程かと・・」
「200か、思ったより少なかったね、これだけの規模の戦闘に加え兵士や冒険者の援護までしてたからもっと被害が出ているかと思ったけど・・・」
「さようですね、ただマサト様に集団戦闘や連携しての戦闘の訓練をするよう言われておりましたので。その結果被害が抑えられたのかと」
「そっか、なら無駄にならなくて良かった、それでゴブリンの疲労はどんな感じ?もう一戦行ける?」
「それは・・、まあ食事をとらせ暫く休ませれば可能かと思いますが何を相手にされるのですか?」
「まあ残党狩り、黒いスケルトンが森の中に逃げ込んだからとりあえず再編成をして、負傷したゴブリンを残してスケルトンを追撃して出来る限り狩ってほしいんだけど」
「かしこまりました。ではそのように手配致します」
「うん、明日の昼ぐらいにはここに戻って来るぐらいでいいから。あと怪我をしたゴブリンの中で動けるゴブリンには死んだゴブリンが持っていた武器や防具を回収させておいて」
そう言いゾルスとバルタに追撃と残党狩りを指示しタロイマンさんのいる本陣に向かいます。
「マサト殿、今回はなんとか凌ぎ切りましたな」
「そうですね、それで兵士と冒険者の被害はどの位でたんですか?」
「それが死者は出ておらず、兵士が39名、冒険者が12名重症ですが他は軽傷です。乱戦になった際ゴブリン達が援護に入ってくれたおかげですな」
「そうですか、まあ死者が出なかったのは良かったですね、これから更に魔物が活発化するのに兵士や冒険者が減ったら次も凌げるか分かりませんからね」
「確かに、それに今回は数が多いとはいえスケルトンで助かりました、これがオークやオーガだったら確実に甚大な被害が出ていましたので」
「まあ確かに、知能がある魔物と、ただ向かって来るだけのスケルトンじゃ全然違いますからね、まあ今回の戦闘で多くの人がレベルアップしているでしょうから次はもう少し楽な戦いになるといいんですが」
「それでマサト殿、ゴブリンの被害はどの程度出たのですか?」
「あ~、正確な数は分かりませんが大体200ぐらいって言ってましたね、まあ暫くしたらすぐに増えますし、予測ではもっと被害が出ると思っていたので」
「そうですか、200ですか・・・その犠牲で我々の被害が軽微だったのですから手放しには喜べませんな・・・」
「まあお気になさらずに、とりあえずゴブリン達には再編成後に森に逃げ込んだスケルトンを追撃するように言ってありますんでタロイマンさんと冒険者はプレモーネに帰ってとりあえず脅威は去ったと知らせてあげてください」
「ゴブリンに追撃をさせるのですか?それは・・・いくら何でもこの戦闘後すぐに追撃とは・・・」
「まああまり無理はさせませんし、それにあの大剣を持った黒いスケルトンの数を減らしておかないと後々面倒な事になりそうですしね」
そう言うとタロイマンさんは少しゴブリンが可哀そうって顔をしましたが幕僚と話をし部隊を纏めて帰還の準備を始めます。
「マサト様、わたしは怪我をしているゴブリンに治癒を施しますがよろしゅうございますか?」
そう言ってロゼフがやってきましたので、兵士の治癒を優先して貰ったお礼を言い、ゴブリンの治癒を依頼します。
「それにしてもロゼフの治癒魔法を見てドグレニム領兵達も驚いていたんじゃない?」
「そうですね、私が殆ど治してしまうので、ドグレニム領の治癒魔法を使う者は皆冒険者の治癒に向かってしまいました」
そう言って笑っているロゼフですが流石に治癒魔法を使いっぱなしで魔力が減っている感じです。
「ロゼフ、ゴブリンの治癒をするだけの魔力残ってる?」
「はい、まだまだ余裕でございます、それにしても被害が200程とは・・もっと被害が出ていると思っておりましたが意外と少のうございましたな」
「そうだね、多分ゴブリン達がスケルトンの魔石を摘まみ食いしながら戦ってたからじゃないかな?なんかホブゴブリンの数が大幅に増えてるし・・・ていうか普通のゴブリンの方が少ない気がするし・・」
「それは反対に良い事ですな、ゴブリンが200減ろうともホブゴブリンがそれを上回るほど増えれば戦力は上昇したことになります」
そう言って冷静に分析しているロゼフですが同族を犠牲にしてまで人間の治癒を優先させたのは気にしていないのでしょうか・・・・。
まあ聞いても答えないでしょうから、聞かない事にして明日の昼までゾルスとバルタに追撃をさせているからハンゾウと一緒に負傷したゴブリンを纏めてるように指示をだし何かあればサンダーウルフを伝令にと伝え、カウア達ミノタウロスと残りのサンダーウルフ達を呼び戻し影に入ってもらい自分は一旦プレモーネに戻ります。
さて、プレモーネに戻っても絶対すぐに休めないんだよな~。
それにしても、盛大に死亡フラグ立てた野村は無事なんかな・・・冒険者の死者は居ないって言ってたけどあいつそもそも冒険者の人数に入っていたのかな・・・・。
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