10. 黒闇に星は流れ
コトリはマグナに連れられ、中央大陸にあるハロリスという町にやってきた。
ここには彼の棲み家がある。そのため、マグナたち光神族を毛嫌いしているラーナは絶対に近寄らない。
しかし、コトリがマグナと一緒にいることを、もしラーナが知ったらどうなのだろう。いくら近寄りたくないと言っても、必要となれば押し掛けるのではないだろうか。
コトリがそんな心配をするのには理由があった。
マグナが、「コトリとラーナを会わせてはならない」と言うのだ。だから彼自らコトリを探しに来たのだと。未来視の力でラーナを避けるために。
意味が分からなかったが、従わないわけには行かなかった。
ラーナがコトリと行動を共にすれば、北大陸が滅ぶ、などと言われたからには――。
(どうしてそんなことになるんだろう……)
理由を尋ねてみたが、マグナは「後でね」と言って教えてくれなかった。こうなったら向こうが話す気になるのを待つしかない。
むずむずした気持ちを抱えながら、マグナの後をついていく。
町の真ん中を突っ切る目抜き通りには、まだそこそこの人間がいた。人族の町なだけあり、ほとんどが人族だ。
彼らの見た目は眷属と変わらない。というか、見た目だけならまんま同じだ。しかし色んな種族と交流してきたコトリにとっては、角も牙も生えていないのが逆に新鮮である。
自前の武器もなく、筋肉も頼りなく、魔法持ちも滅多にいない。
そんな弱小種族が、人族だ。当然異種族に虐げられやすく、今まではひっそりと隠れ住むことが多かった。
ところが最近、数の多さを頼みに、団結して生きることを覚えたらしい。
数が多い方が強い。真理である。ただし、相手が火蛇族や羅骨族でなければ。
しかし、人族は戦争を仕掛けるために集まったのではなかった。自衛も目的の一つだが、一番の目当ては繁栄だ。
人が増えれば食べ物がいる。住む家もいる。商人や職人がやってくる。さらに人が増え、物が集まる。評判を聞いた旅人が訪れ、その中には人族ではない異種族の者もいる。人族は彼らを拒まない。力づくで排除しようとしても返り討ちに合うのは目に見えているし、ならば逆に親しみを持ってもらおうという作戦だ。こうして少しずつ異種族の味方をつけ、ハロリスの町は異色の発展をしてきた。
言うほど簡単なことではなかったし、上手く行くかも分からなかったが、現在の賑わいが全ての答えだろう。
(みんな楽しそう……)
大きなザルを頭に載せて歩く女性や、空の荷車を牽く男性。その荷台には幼い子どもたちが乗って、わあわあと燥いでいる。
面白いのは、いくつかの種族の子供が一緒に遊んでいるところだ。圧倒的に多数を占めるのは人族だが、地人族や山人族など、職人寄りの種族も多い。それが種族の別なく、共に笑って騒いでいる。
理想的な光景だった。巨人族と妖精族が歩こうとしていた道の先が、ここにある。
「結構いい町でしょ?」
振り返ると、マグナがこちらを見て微笑んでいた。その顔は自信に満ち溢れていて眩しい。
「前に来たときより、大きくなってる気がします」
「毎日どこかしらに家が建ってるからね。まだまだ大きくなるよ。多くの人や物を飲み込んで。そうやって少しずつ積み重ねたものが、やがて歴史と呼ばれるようになるんだ」
「歴史、ですか?」
「そう。群体って知ってる? たっくさんの芥子粒が集まって、一つの姿を得たものだよ。海でいろんな形のクラゲが泳いでいるのを見たことはない? サンゴとか。中には龍より大きな個体もあるんだ。まあ龍にもよるけど。このハロリスの町も、いつかそれくらい大きくなるといいなと思ってる。楽しみだよ。その日をこの目で見るのが」
そう言ってマグナは、眩しそうに目を眇めた。
彼の夢が叶うとしても、何十年、何百年とかかるだろう。眷属の感覚で言えばあっという間に違いないが、願いが叶うまでの期待の膨らみようは、人間と変わらないのではないか。
コトリにも覚えがある。果物が熟し、甘い香りを放つまでの長い長い時間。毎日ワクワクそわそわして、成長を見守るのだ。
見ているだけというのがこれまた難しく、待ちきれずに手を伸ばしてしまったことも数知れない。酸っぱい味が口の中に広がるたびに後悔するのだが、次の日も同じ失敗を繰り返してしまう。あの時ばかりはラーナも呆れていたっけ。
「あの、ラーナは本当にここには来ないんでしょうか」
「ん? 心配? 大丈夫大丈夫。サーシャたちに足止めを任せてるから。たとえ勘付いたとしても、僕たちが話をする時間くらいあるよ」
「はぁ……」
一層不安が増したコトリだった。
マグナの妹たち、サーシャ、セラ、スクリは、仲の良い姉妹のような三人だ。大体いつも一緒に行動していて、喧嘩もほとんどしないと聞く。下手すると数世紀没交渉、仲は良くも悪くもなく、協調性の欠片もないコトリたちとは大違いである。
コトリはサーシャたちとほとんど接することがない。たぶん、ラーナやアルグレンなどもそうだ。
にもかかわらず彼女らは、会えば存分に可愛がってくれる。しかもキトラのような全身を撫でくりまわす可愛がり方ではなく、お茶をくれたりお菓子をくれたり、遊んでくれたりといった、ごく普通の可愛がり方である。だからコトリは彼女たちが好きだ。
ところが、ラーナはサーシャたちを嫌っている。あんなに優しい彼女たちの何が気に入らないのか、名前を出すだけで不機嫌になるのだ。喧嘩をしないだけまだマシだが、向こうが絡んできたとなれば話は別だろう。
サーシャたちに足止めを任せたと聞いて不安になったのは、そういうことだ。
あの三人は、マグナの命令とあれば絶対に手を抜かないし……やっぱり心配だ。
「でも、その、どうしてわざわざマグナ様がわたしを? 北大陸がほろぶって、どうしてですか? もしかして、ラーナが……」
「まあ、説明するだけならクリフ君やアルグレン君に頼めばいいんだけどね。他の子らにはもう話してあるし」
「説明?」
人の流れの変化を横目で追いがら、コトリは聞き返す。
二人はどんどん町の中央から離れていった。すれ違う人間の数が減り、だんだんと日も落ちてきた。煙の立ち昇る民家も目立つ。
「それに、責任を取らないとって思ったんだ。ホラ、フォルスをふて寝に追いこんだのは僕だからね。それがなけりゃ、君のことはあいつに頼んでたよ」
「たのむ……ですか?」
「適任でしょ? 実はこの間会った時に言おうと思ってたんだけどさ、その前にあいつを怒らせちゃって。いや? 違うな。呆れたのか。呆れさせちゃったんだ。あははは、面白かったなー! あの時の反応!」
「マグナ様……あんまり兄様をいじめないでください」
「ごめんごめん。あいつは手加減しなくてもいいからさ。楽しくてつい、やり過ぎちゃうんだよ」
コトリは膨れっ面で抗議する。大好きな兄が遊ばれているようで、あまり面白くなかった。ひとを怒らせて楽しむなんて、いい趣味とは言えない。
マグナは申し訳なさそうに謝るが、年季の入った悪癖を治すのは相当難しいだろう。
なぜ彼はフォルスをからかうようになったのだろうか。
「僕ね、誰かに会うとつい未来を視てしまうんだ。半年後とか、一年後とか。数日とか近い未来は視ても面白くないし、数十年後とかだと視えるものが多すぎて疲れる。やめようと思うんだけど、気付いたら視てるんだよねぇ」
「……べつにいいと思います。だって、マグナ様が母様にもらった力だもの。どう使おうと、マグナ様の勝手でしょう?」
「そうなんだけどね……。だけど、フォルス相手なら何も気にしなくて済むんだよ。あいつは絶対、僕の未来視を受け入れないから」
「どうしてでしょう……?」
「単に、僕が気に入らないから全部突っぱねてるだけだよ。そういうガキっぽいところが面白いなあと思ってるうちに、だんだんと怒らせて楽しむように」
「だから、いじめちゃダメです!」
「あっはは。コトリは本当にフォルスが好きだねぇ」
だって、好きなんだもの。
おかしそうに笑うマグナの背中を睨みながら、コトリはますます頬を膨らませた。
それにしても、マグナはどこへ向かうつもりなのだろう。
結局、質問をはぐらかされてしまった気がする。
ハロリスは丘と丘の間に挟まれた町だ。町の東には山がある。きれいな円錐形をした高い山で、人々はウルカノ山と呼んでいる。
このまま真っ直ぐ歩くと、町を出てウルカノ山まで行ってしまう。さすがに手前で止まるだろうけれど。
「コトリ」
「はい?」
夕日を背に受けて歩きながら、マグナは凪いだ海のように語りかける。
「目の前で友達が死んだ時、何を思った? どう感じた?」
思わずコトリは足を止めた。
一瞬、目の前が真っ赤に染まった。人魚たちの血。そしてプーケの血。血溜まりの中に浮かぶ、子供の首。口元を歪め、呪うように笑う顔……。
――違う、プーケはただ微笑んでいたんだ。こんな恐ろしい顔じゃない。
緩やかに首を振るコトリを、同じく足を止めたマグナが静かに見つめている。
なぜこんなことを聞くのか。
彼が何を考えているのか、全く想像もできない。だけど、彼はコトリの答えを望んでいる。ならば命令も同然だ。答えなければならない。
自分が何を思ったか。どう感じたか。
あの時のことを思い出すのはとても辛い。まだ何時間も経っていないのだ。胸がキリキリと悲鳴を上げ、今にも引き裂かれそうになる。痛みに耐えようとコトリは自分の腕を掴み、歯を食いしばった。
「怒りと……憎しみ。殺してやるって、思いました。あのサメみたいなの……なんで、どうして……今もずっと、殺してやりたいって思っています。だけど……」
それだけじゃない。怒りも憎しみも、化け物に対する感情だ。それとは別に、自分に向かう感情をコトリは感じ取っていた。
途方もない無力感。後悔の嵐。
もしも時間を少しも無駄にすることなくみんなを探すことができていれば、全員は無理でも何人かは助けられただろう。
終わったことを悔いても仕方がないのに、湧き上がる感情の前にそんな正論は悲しいくらい無意味だった。
「怒りに、憎しみか。その感情を忘れてはいけないよ。もし忘れてしまったら、前の君に逆戻りだからね。だが同時に、抑えることも覚えなくてはならない。負の感情を誰彼構わず向けてはいけない。自分自身にもだ。そういうものは、本当に憎むべき敵にだけ向けるんだ。いいね?」
「…………」
胸の内にあるものを言葉にできないコトリに何を思ったのか、マグナはかつて青く輝いていた黒瞳を細め、大人びた口調で諭すのだった。
コトリはマグナの瞳に映る自分を見て、マグナの視ている自分は別に存在するのだと気付いた。
「未来をみたから、ですか?」
マグナが突拍子もない話をはじめたのは、コトリの未来を視たからなのか。怒りや憎しみで、自分が見えなくなるような未来が、この先に待ち構えているのか。
知りたい気持ちと知りたくない気持ちが入り混じり、縋るような思いでマグナを見つめ続ける。
やがて彼はふっと息を吐くように笑い、視線を下げた。
「さてね。僕も人の心までは読めないから」
「……マグナ様」
「さ、もう行くよ。目的地はすぐそこだ」
そう言うと、コトリに背を向けて歩きだす。もう止まるつもりも、振り返るつもりもないのが明らかだった。
緑に覆われたなだらかな丘を黙々と登る。てっぺんに辿り着くと、うねりを上げる海のようなだだっ広い景色が目に飛び込んでくる。
太陽は地平線の向こうに沈み、藍色の冷たい帳がすっかり空を覆ってしまった。今は小さな星が無数に瞬いている。
月のない夜だ。
ウルカノ山の存在感は、夜でも異彩を放っていた。稜線が星を遮り、真っ黒な影が眠るドラゴンのように横たわる様は、夜目の利かない人族であろうとも圧倒されようというものだ。
「ここですか? マグナ様」
「そうだね。この辺りでいいだろう」
「ここに、なにかあるのですか? 特になにも見当たりませんが……」
キョロキョロと周囲に目を配る。強いて言えばブラックチェリーの木が一本ぽつんと立っているくらいで、他は何の変哲もない草原である。
マグナは答えなかった。その代わりに空を見上げ、なんとも言えない湿った溜め息をついた。
「ああ、星が。そろそろだな」
その声につられて顔を上げると、幾条ものほうき星が、すーっと山の向こうに落ちていくところだった。
思わず、わぁっと目を輝かせる。
湧いては消え、湧いては消え。一瞬の煌めきを放って散る姿は華々しく、どこか切ない。
自然とプーケたちのことを思い出していた。
遥か遠くに行ってしまった日常を。
何も考えず平和に暮らしていたあの日々は、もう二度と輝くことがない。思い出す時は深い哀しみが付き纏う。
この哀しみを消すことができるなら、自分は何でもするだろう。
「来る」
緊迫感を孕んだマグナの声に、コトリははっと我に返った。
初めは小さな震動だった。遠くで微かに「ゴォォ……」という地鳴りに似た音が聞こえる気もするが、風の音かもしれない。
「地震?」
北大陸で地震が増えているという話を、今日ゴノムとしたばかりだ。タイミングが良すぎるように思えるが、土地によっては大して珍しくもない現象である。何となく嫌な予感を覚えながらも、マグナが言っているのは別のことだと思っていた。
しかし、次第に揺れが大きくなってくると、何かを考える余裕もなくなっていった。ブラックチェリーの枝がガサガサと擦れ、大気が唸るような音を立てて震える。まるで大嵐の前触れだ。違うのは、立っていられないほどの震動が大地の全てを揺さぶっていること。
「ま、マグナ様っ! 町の人たちは、だいじょうぶでしょうかっ?」
「さあねぇ。大丈夫では、ないだろうね」
「そっ、そんなのんきな!」
雲が星明かりを覆い隠した。
その瞬間――
「っ!?」
ウルカノ山の頂が、爆発した。
衝撃波が体を突き抜け、轟音が津波のように押し寄せる。耳を塞ぐ間もなく、コトリは煽りを食らって草むらに転倒してしまう。その上に、高く吹き飛ばされた噴石が容赦なく降り注ぐ。思わず目を瞑ったが、本能はちゃんと反応した。咄嗟に障壁を張り、自分とマグナを守ったのだ。
「やるじゃないか。その調子、その調子」
「は、はい。ありが……じゃなくて! マグナ様、これはいったい」
ウオォ……ォォンン――
「なに、が……起き…………」
言葉を失っていくコトリに、マグナはゆっくりとウルカノ山を指差す。
ゴウゴウと黒煙を噴き上げる、生きた山――その頂上。
巨大な鳥が、山の影と一体となっていた。山頂を止り木に、それは遥かな高みからコトリたちを睥睨する。
よく見れば、それは鳥ではない。
長い首、長い尾。爪のある翼膜。蛇のように光る金色の目に、鋭い牙の間から漏れる赤い息――。
「竜……」
グゥオォォォンン……――!!
コトリの呟きに応えるように、ドラゴンは天高く咆哮を放った。
先程に負けずとも劣らない衝撃波が、ドンッと空を駆け抜ける。ブラックチェリーの木が根元からバキッと折れ、衝撃波が通り過ぎた後は丘が抉れ、茶色い土が剥き出しになった。
「魔法……!」
障壁に弾かれる土塊は無視し、コトリは目を瞠る。
人間は生まれつき、魔力の器を持っている。これがあるから、人間は自前の魔力を溜めて使うことができる。その点で、人間は獣より優れている。
そして人間のさらに上、眷属よりも下に、伝説級の生き物が存在した。龍やグリュプス、それに竜だ。それらに与えられたのは魔力の器ではなく、鍵。界道を開くための鍵。つまり皆、魔法持ちだった。
しかし、伝説級の生き物はほとんどが死に絶え、今は数体の龍しか残っていないはず。千年以上もの間、眷属にも見つからずに生き残っていたなんてあり得ない。あり得ないが、山の頂に現れたドラゴンが放ったのは、紛れもなく魔法だった。
「本物……? う、うそ……」
ドラゴンが、ぐぐっと翼に力を込めた。次の瞬間、大きく羽ばたいて宙に浮き上がる。月のない夜空を背に悠々と尾を垂らしたドラゴンは、嘲笑うかのようにコトリたちを一瞥した後、再び羽ばたいて飛び立った。
目指すはハロリス。目と鼻の先にある町。
あっという間にコトリたちの上空を過ぎ去ったドラゴンは、外壁のない町の上空に漂い、大きく息を吸った。口の周りに赤い燐光が集まる。
「だめ……っ!」
伸ばした手も虚しく、集束した燐光は目の眩むような火柱となり、町の中央を貫いた――。
北大陸で君は友を殺す。そして、大陸を滅ぼす。それが最悪のシナリオだ。
ラーナがいないのに?
ラーナは君の絶望に呼応して力を振るい、大陸を滅ぼすことになっていた。彼女は君のことが大好きだから、君の望みなら何でも叶えようとする。
北に行かなければ、これらは現実にならない。
その場合、ゴノムたちは?
皆、死ぬね。
どうする? 友達の死に目に会わなくて済むのは幸運だと思うけど。
……未来なんてどうでもいい。
約束したんです。必ず会いに行くから、待っててって。
「一ヶ月ほど前、僕はある人間の未来を視た」
突然、そんなことを話し出した。
コトリははぁと相槌を打ちながら、大人しく耳を傾ける。
「その人間は炎の中で息絶えた。殺されたんだ。我が身を挺して、妻と幼い子どもを逃した後にね。恐怖しながらも、どこか満足気な死に顔だったよ」
「…………」
「同じように炎に包まれて死んでいった人が、他に何人もいた。彼らの死に共通していたのは炎、それと獣」
「獣?」
ぴくりとコトリが反応する。それを知ってか知らずか、マグナはひとつ頷いてから続ける。
「それで女神に報告に行った。大変なことが起きるぞ、ってね」
「マグナ様、獣って?」
どうしてあんなものが山から……?
いや、そんなことよりも、このままでは町が壊滅だ。早く町の人たちを非難させなければ。
コトリはマグナに進言しようと口を開き、そして硬直した。
彼は泣いていた。
声をあげず、ただ静かに涙していた。
「見なよ、コトリ。これが終わりの始まりだ」
そう言われて、見る。いくつもの山を越えてこちらへ向かってくる、獣やそれ以外の伝説の生き物たち。その目にはどことなく生気がなく、意思というものが感じられない。生き物なのに、生き物じゃない。そんな印象がした。
コトリは無意識に、服の上から心臓をぎゅっと握った。
動悸がだんだんと煩くなっていく。乱暴に胸を打つ鼓動の音が、耳の奥からどくどくと流れた。
――あれは。あの生き物たちは。
絶望に染まり死んでいった者たちの顔が、いくつも浮かんでは消える。最後に、安心したようなプーケの微笑みが暗闇に浮かんだ瞬間、コトリは悲鳴も同然の叫び声をあげた。




