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幕問・二年後。魔法と魔鉄と……。

この話は幕問になります!

幕問なので、三人称のつもりで書いてます。

次話から本編となりまして、9時過ぎぐらいに投稿する予定です。

 広大な森と険しい山岳地帯。


 そんな中、そこだけ切り抜かれたかのように平地が広がり、その中心にはポツンと一つの国があった。


 はるか上空から見れば、緑の大海の中に一滴だけ灰色が混ざったような。

 そんな例えができるほど、森と山に囲まれた国。



 それがこの王国。



 そんな国の中心にそびえ立つ、立派な王城。

 その王城の最上階で、二人の成人男性がテーブルを挟んで食事をしていた。



「ジェムぅ、この豚肉、めちゃくちゃに美味しいんだけどぉ~」


「陛下がそこまで仰るとは珍しい……確かに旨いですが」


「ねー、この豚肉、どこの?」


「ウチの若い騎士にグレイ・ディックソンという男がいまして。そこのディックソン家が推し進めている、パン豚という品種だそうです」


「そっか! ディックソンに王家で買うって伝えといて!」


「……はっ!」



 陛下と呼ばれる容姿は平凡だが、清潔感のある男は返事を聞くと嬉しそうにパン豚の肉を頬張る。



「にしてもディックソンね。噂は聞いてるよ、やるらしいじゃん」


「……まだまだ若いですが、将来的には私を超えるかと」


「ジェムを超えるの? とんだ怪物だねぇ~」


「……怪物といえば、あの少年が地下牢に繋がれてもう二年になりますか」



 ジェムと呼ばれる30代前半ぐらいの男が、その短く整えられた茶髪を撫でながら一人の少年を思い出す。



「いやいや、もう青年って年齢だからねシナーは」


「……そういえば、今はシナーと名乗っているのでしたか」


「名前はいらない、アーサーと呼んでほしい大切な人たちは、もういないから……キリっ! とか言ってた」


「境遇を考えればそう思ってしまうのも、仕方のないことでしょう。……それで、なぜシナーと名乗るように?」


「あぁ、僕が付けてあげたの。今日からシナーって名乗りなさいって」


「陛下自らですか……名前の由来を聞いても?」



 ジェムのその問いに、陛下は不敵に笑う。



「……彼の施設での呼び番号が、47番だったからさ!」



 どうだ、と言わんばかりに胸を張る陛下のその姿に、ジェムはこういう人だったなという呆れた視線を向ける。



「そうですか……陛下らしいです」


「そうでしょう、そうでしょう。僕、名付けには自信があるんだよねー」


「……そういえば、あの鉄の名付けも陛下でしたね」


「あぁ、魔鉄? 魔獣の素材と鉄を混ぜたから、魔鉄。我ながらここまで分かりやすく語呂が良い名前をつけてしまうとは……」


「初成功時に居合わせた職人と会ったことがありますが、もっと良い名前を考えていたのにと……」



 その言葉に陛下は顔を歪める。



「なに? 成功したのは僕のおかげじゃん。……あいつら揃いも揃ってカトラスマンティスの鎌を剣にしたり、ガーゴイルの石化した部分を盾にしたりしてたんだよ?」


「今までは、魔獣の素材を用いた鍛冶というのはそれが当たり前でしたから」


「魔獣の素材を鉄と混ぜろって言ったの僕は! それじゃ素材そのままくっつけてみましただよ!」


「誰が魔獣の素材を溶かすなんて考えますか……。それも魔獣の血を混ぜて」


「んー。確かに僕も、魔獣の細胞を人間に埋め込むなんて実験を知らなければ思いつかなかったかも」


「素材を溶かすのはそこから着想を得たとして血というのは一体、どこから思いついたんですか?」


「魔法だよ。……その原理はまだ分かってないけど、魔法の行使には血が必要でしょ?」


「魔法、ですか……」



 ジェムは普段から戦闘で使用しているその技術について思考を巡らせてみる。



「あの施設で回収した資料に、血抜きをした魔獣の素材から細胞を摂取して、それを埋め込んでみた事例が記載されててね」


「……成功率が下がったのですか?」


「ううん、全て死亡。……魔獣の細胞の適合には血が絶対条件だったみたい」


「適合に血が必須。……魔法の行使にも血が必須で、魔鉄の生成にも血が必須……」


「つまり、魔獣を含めた僕たちの血には、なにかがあるみたいだね」


「……待ってください! 上級に分類される魔獣は、火や風を操るモノがほとんど……?」


「下級になっちゃうけど、シー・サーペントも水を吐き出してくるよね」


「陛下……もしや、我々の使っている魔法という技術と……魔獣の操るそれらは……!」


「一緒だろうねぇ~。これを発表するには、まだ時間と確証が足りないんだけど」


「……魔法の考え方を根本的に見直す必要がありますね」


「そうだね~」



 陛下は話に熱中し過ぎて、すっかり冷めてしまったパン豚の肉を頬張る。



「うん、冷めても美味しい……」


「陛下! もしや、魔法というのは――」


「それはまた今度! ゆっくりと考えようじゃないか……それよりも、もっともっと! 面白い話があるんだぁ~」


「は、はぁ……?」



 ニタニタと気持ちの悪い笑い方をする陛下に、今考えついた魔法の考察を話そうとしていたジェムは呆気にとられる。



「昨日、前国王の私物の中から面白い書類が見つかってさ」


「書類ですか? 前国王はそういったものを敬遠していたと記憶しているのですが……」


「言い方が悪かったね。実際は、書類なんて呼べないただの妄想の書き殴りだったんだけどさぁ? その発想は悪くないものだったんだ!」


「前国王は、発想の天才と呼ばれておりましたね。……若い頃は」


「そうだねぇ……。その発想もとっくに尽きてると思ってたんだけど」


「それで、いったいどういうものなんですか?」


「冒険者だって……。ジェム、聞いたことあるかい?」


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