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旧校舎の悲劇  作者: コロコロ
3/4

旧校舎に隕石

サブタイの無理矢理感


 その日、俺は友人たちと一緒に肝試しをするために、都内から車で2時間走ったところにある古い建物へとやってきていた。


 きっかけは、本当にありきたりな物だった。俺達は大学の同期で、ネットのアングラサイトの掲示板に書かれた噂に踊らされた結果、友人の一人が肝試しを企画し、それに乗っかった形だ。もうすぐ夏期講習が始まる。それまでに思い出の一つも作っておこうと、俺は単純にそう思った。まぁ、最近は温暖化の影響か、暑い日が続いているからな。涼しくなりたいというのも理由の一つだった。


 そんなわけで、俺は自分の車を使い、友人たちを乗せて都会を抜け、延々と人気のない山道を走り続けて……ここに辿り着いたのだった。


「うおぉ、すっげぇ雰囲気あるなぁ……」


 車から降りた俺が開口一番にそう言った。目の前に聳え立つ、木々に囲まれた三階建ての古い木造建築。入り口は錆と汚れが目立つフェンスに阻まれていて、誰から見ても立ち入り禁止だということがはっきりとわかった。同時に、足元の草やボロボロのフェンスから見て、長らく誰も訪れたことがないことがはっきりとわかる。


「うわぁ……見た目だけで震えてきちゃうなぁ」


 助手席からは、俺達三人の友人の紅一点、同時にこの肝試しの企画者である佐山香織さやまかおりが降りて俺の隣に並ぶ。震えてくるとか言っておきながら、顔からは好奇心が溢れているのが見て取れた。この企画を立案するくらいだし、オカルト系の話が大好きだと公言している時点で、もしかしたら三人の中で一番肝が据わっているんじゃないかと思う。


「…………」


 そして三人目の友人、木下卓きのしたたくが後部座席から降りてくる。物静かで、本ばかり読んでいるような奴だ。スポーツもしてるというわけでもないし、ぶっちゃけ俺と香織に振り回されている印象しかない。けれど、こいつは俺達には無い、ある物を持っているという。


 そう、それは超能力だ。


 自分で言っていておかしいと思われても仕方ない。かくいう俺も先日までは信じていなかった。けど、こいつは俺達の前で実践してみせたんだ。


 大学に入って間も無い頃、あいつはカミングアウトしたんだ。「俺は実は超能力者なんだ」って。笑ったよ、俺達は。超常現象を信じているはずの香織だって半信半疑だったんだ。俺なんて大笑いさ。


 それならばと、あいつは超能力を見せて証拠を見せると言った。「今からサイコキネシスで空中へ飛び上がって見せる」と。そして、あいつは見事にそれをやってのけた。


 サイコキネシスで飛び上がった通りすがりの田中教授のカツラは空の彼方へ消えていった。


 後日、アフリカのとある地域に黒いもじゃもじゃの物体が空から落下、現地民に『神の毛』として祭壇に祀られているというニュースが地上波で放送されていた。遠くから田中教授っぽい悲鳴がした気がした。


 それ以来、俺らは卓のことを本物のエスパーと認めた上で、友人を続けていた。後ついでに霊感体質らしい。超能力に比べるとインパクト薄くて「ふーん」で終わった。


今回の肝試しだって、俺と香織が危ない目に合って欲しくないと言って、本当は恐がりなのに付いてきてくれているし。卓から見ればどうかわからないけど、俺にとってはいい友人だと思っているよ


「……見た目からして間違い様はないだろうけど、ここで合ってるんだよな?」


「うん、間違いなし。ちゃんとひろしの車のナビにも目的地登録しておいたし」


 寛、というのは俺の名だ。高山寛たかやまひろし。三人でいつも俺が前に出て行動することが多い。


 まぁ、そんなことはどうでもいいか。何にせよ、ここが肝試しの舞台で間違いない。


「で? 何か感じるか、霊感体質さん?」


 言って、俺は少し笑いながら卓へと振り返った。


 そんな卓はというと……。




「待ってろ、あの建物に隕石落とすから」




 両手を掲げてなんか言ってた。


「……は? お前何言って」


「ひ、寛……上」


「んあ? 上?」


 香織に促されて見上げてみた。




 なんか降って来た。




 旧校舎に落ちてきた。




 音にするとチュドーーーンっていう感じだった。




視界が真っ赤に染まった。




 棒立ちの俺と香織に突風がぶち当たって、お互いの髪が後ろへ靡いた。周りの木とか土とか石とかが吹き飛んでいくのに何故か俺達は吹き飛ばなかった。ってか何が起こってんのかわからなかった。


 一分後……俺達が肝試しする予定だった旧校舎があった場所は、爆心地の如くクレーターになっていた。木っ端微塵どころか跡形もなくなった。それから周りの木がなぎ倒されてなんかもうしっちゃかめっちゃかになって収拾つかない状況になっていた。


「よし、排除完了! じゃ帰ろっか」


 あーいい運動したわー、みたいな感じの爽やかな笑顔で卓が車に乗り込んでいった。


「「……はい」」


俺と香織はオールバックになった髪をそのままに、ただ一言返事した。


 車に乗る直前、俺は空を見上げた。満天の星達が、地上で生きる俺達を見守るかのように輝く。そんな夜空の向こう、ふと俺は幻を見た。


 ゴワゴワした異様な長さをした黒い髪、顔の上部分の殆どを覆う程の殆ど黒目しかない大きな目、両端が裂けたかのような巨大な口、三日月のように歪められた真っ赤な唇をしたその口から黄色い歯と歯茎が露出されて醜悪に笑う化け物が、サムズアップしながら星の空の中へと溶けていくかのように消えていった。




 俺にはその醜悪な笑顔が、どこか爽やかに見えた。







次話、おまけ

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