二胡奏者
「東洋の楽器? それは何というやつだ」
「二胡という楽器です。私は弾けませんが、それだけでも用意していただけると……音程が取りやすくなりますので」
「そうか」
「前に楽団で歌っていた時に、一緒にやっていた方をお呼びしてもよろしいでしょうか?」
おず、と控えめに問うてくる。
「他にあてがありませんので、」
「そうか、そうだな。それは仕方がない。新しく雇う者でも、今からでは音を合わせるのも難しいだろう。ムイの良いようにするがいい」
国王の元で演奏していた時の楽団となれば、リューンの心がざわりとざわつくのは仕方がない話だった。
(けれど、俺と結婚するのだから、もう連れ去ることはできないだろう)
自分に言い聞かせはしたが、ざわつく心をどうすることもできなかった。
数日後、ムイが使者を送って連れてきた二胡奏者は、ムイと同じくらいの歳の、女性だった。
「お初にお目にかかります。シバと申します」
目の前で膝を折って頭を下げたシバを、リューンはまじまじと見た。
髪は短く、前髪は伸ばして顔のラインに沿って、ピンで留めてある。けれど何より目を引くのは、その銀髪だった。
「髪の色が、珍しいですか?」
「あ、いや、すまない。じろじろと見てしまっていたか」
「生まれつきでございます」
「そうか」
隣で同様に膝を折っているムイが、シバを気にかけながら言う。
「楽団にいた頃には、シバさまにはとてもお世話になりました」
その言葉を受けて、お世話になりましたのは、私の方でございます、と言う。
「リューンさま、ムイさま。この度は、ご結婚おめでとうございます」
国王の楽団の一員の口からするりと出た言葉を意外に思いながら、リューンは礼を言った。
「音合わせなどをするなら、客間を使ってもいい。あそこは天井が高く、音も響くだろう。シバ、よろしく頼むぞ」
「わかりました。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
シバは丸みのある目を伏せて一礼すると、ムイと一緒にリューンの書斎を出た。
「不思議な雰囲気のある女だ」
リューンは、そのまま立ち上がると、開いていた窓を引き寄せて、閉めた。




