Punishing
そろそろ話の内容がグダりそうですます。温かい目で見守ってあげてください。
アブラゼミかミンミンゼミか、なんかしらの鳴き声が朝からこだましている。
絶え間ないノイズに、侑李は寝ぼけたまま外へ出た。
「侑李くん」
美琴だ。最近は毎朝家の前まで来てくれるようになった。嬉しいことなのだが、2割ほど申し訳なさを感じる。
「ごめんな毎朝毎朝…」
まだ開ききらない目をこすりながら、侑李は謝罪を述べた。
「いいのいいの、さあ行こっ」
その時美琴は、不敵な笑みを浮かべたように見えた。
「お前ら仲良しすぎな」
ガリ勉らしいメガネをかけたこいつは代置綾眞。侑李のクラスメイト。
「おはよう綾眞、まあ実際仲はいいからな」
リア充を嫌という程目の敵にしている綾眞にとっては気に障ることばだ。
「あーうぜえうぜえ、先にクラス行ってるわ」
と言って、綾眞は駆け足で玄関を抜けていった。
「悪いことしちゃったなあ…」
「ふわぁ…」
窓からいつもと変わらない景色を眺める。
都会とも田舎とも言えない微妙な街並みが、視界を占めた。
見てもつまらない光景だ、と侑李は再度黒板に目を向けた。
「飯沼、ここ読んでみろ」
「ハイ、えーっと…」
少しすると、どこからかケータイの着信音が聞こえた。
一瞬だったため、教師は気づいていなかった。
「誰??」
「なんかそっちの方から聞こえたっぽくね?」
少しずつざわめいていく。そんな中で慌ててカバンを探っているのは久美子。
「あいつか…」
誰も驚いた顔はしなかった。なぜなら彼女は皆が認める、授業中携帯の電源切らない常習犯(?)なるものだからだ。
「ヤバっ、あっぶね」
と言いつつ遠目から見ると彼女はLINEの返信をし始めたらしい。肝が座っている。
そういえばいつの間にか、校内で起こった殺人事件については誰も触れなくなっていた。
侑李は不審に思っていた。そんな簡単に忘れる出来事でもない筈だ。
「うおっ」
そんなことを考えてぼーっとしていると、後ろから肩をたたかれた。
「魂がどっか飛んでってたぞ、しっかりしろ」
そういえばまだ授業は終わってなかった。
昼休み、侑李は久々に室浜に会った。最近体調を崩して学校に来ていなかったらしい。
「お久しぶりです、体調の方は大丈夫ですか?」
室浜は以前より明らかに痩せていた。ゴリゴリな体育教師の面影はもうなかった。
「良くなったよおかげさまで」
それだけ言って室浜は廊下を歩いて行った。
侑李にはわかったが、今は誰とも話したくないようだった。
「あんた誰よ!なんで知り合ってもない人にいきなり殴られなきゃいけないのよ!」
美琴の怒りの声が聞こえた。侑李はすぐ隣の教室に走って向かった。
「てめぇが悪いんだよ!自覚ねーならぶっ飛ばすぞ!」
目に入ったのは、美琴と、同じクラスの久美子だった。
侑李が見つけた時には、既に二人は殴り合いを始めようとしていた。
「おい美琴!どうしたんだ一体!?」
美琴は侑李に気づくと、少し微笑んだ。
「飯沼…」
それまで物凄い剣幕で怒っていた久美子の表情が、少し緩んだ。
「なにしてんだお前ら…俺はどっちにも傷ついて欲しくないから喧嘩はやめてくれ」
侑李の願いとは裏腹に、久美子の表情はまた怒りを露わにした。
「あたしは悪くない!こいつが悪い!こいつが…
飯沼と付き合ってるから!」
どうしたらいいか、侑李にはわからなかった。自分も責められているということが、侑李の心を締め付けた。美琴と付き合っている自分が久美子の怒りに触れ、結果的に久美子と美琴を傷つけた。
どうしたらいいか、侑李にはわからなかった。
美琴は無言でその場から逃げるように走って行った。廊下へ出て行った時、少しばかり涙が見えたような気がした。
5秒後くらいに、次の授業5分前を知らせるチャイムが鳴った。
侑李の耳には、そのチャイムの音が鋭く、痛く感じられた。
※この小説はフィクションです