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Believing  作者: いーやん
3/5

Moving

「侑李くん」

異性に下の名前で呼ばれるのは久々で、侑李にもちょいと恥ずかしさが感じられた。

「コンビニ?」

そう聞くと彼女は、うんうん、と二回頷いてみせた。

「いってらっしゃい」

コンビニへ駆け込んで行く彼女の背中は、とても輝いて見えた。これから明るい未来が待っている、とでも言うかのように。



告白されてから、1週間。

侑李は、美琴と付き合っている。


「よーし行こう」


手を繋いで登校なんて侑李にとっては初めての経験だった。それでも、抵抗はなかった。

「じゃあ放課後はいつもの場所で待ってるよ」

「わかった」

彼らは学校一有名なカップルとなり、二人の関係を知らない人はいなかった。しかしそんなことは、本人たちにはどうだってよかった。

幸せならなんでもいいだろ、そういう理論。名付けるなら、「とりあえず幸福理論」とでもいうべきだろうか。

「侑李が椎名と付き合うとはな…」

もう一週間も立ってるのに、彦介はずっとこの調子だ。そんなに信じられないことだろうか…。

「普通じゃない?」

真顔で侑李が返すと、彦介は驚いたような表情をしたのちに、平常運転になった。

「まあそうか、そういえば昨日の特番見た?」

毎日他愛もない会話を交わして、けれども大事な時には駆けつけてくれる、それこそ親友であると、侑李は考えていた。外にその考えを示すことはないが。


2時間目が終わり、次は移動教室で一階に行かねばならない。そのために、侑李は勉強道具を持って階段を降りた。


二階を通り過ぎようとした、その時だった。


頭に、いつかの光景が浮かんだ。それは、鮮明な記憶。

こだまする女の悲鳴。

苦痛にもがき、助けを求め教室のドアを中から叩く音。

そのメモリーが脳内SDカードを破壊しようとした瞬間、全てがブラックアウトした。




「おい侑李!!どうした!!」

聞き慣れた声が頭に響いて、侑李は目を思い切り開いた。

「ひっひひ彦介か…」

そこにはほぼ毎日のように見る顔があった。

侑李は我に返り、自分の置かれた状況を理解できずにいた。

「2階の階段の前で倒れてたから、めちゃくちゃ驚いたぞ」

彦介は必死な表情だった。それはなにか良くないことが起こったような、焦りの表情だった。

「なんでそんな顔してるんだ」

不意を突かれた顔で、彦介は答えた。

「…が、、、」

よく聞こえなかった侑李は聞き返す。

「なにそれもう一回言ってよ」

彦介は冷や汗をかきながら、震え声で言った。

「死体が、見つかったんだ」


侑李は、理解に苦しんだ。

学校から死体?そんな物騒なことが起きるなんて考えられない。そもそも殺すなんて教師の目があるのにできるわけがない。


「本当?」

侑李はどうしても、疑いを隠せなかった。

「本当だ、さっき回収されたよ」

保健室のフカフカなベッドから飛び起きて、侑李は2階へ走った。

その目で自分の疑いを晴らすために。

「2階の、1年C組の教室…!」

突き当たりの教室に、がむしゃらに走った。

そのフロアには、異様とも言える謎の空気が流れていた。

「着いた、、、!」

着くと同時に、今まで嗅いだことのない物凄い臭いが侑李を襲った。

「死臭…」

黒板に、小さな赤い斑点模様。


…血だった。

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