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Believing  作者: いーやん
1/5

Starting

東京の山奥に立つ、花咲(はなさき)学園高等学校。風景に似合わない名称のこの高校は、創立20周年を迎えたばかりである。


飯沼(いいぬま)くんよ、今日もかっこいいわぁ〜」

「あんな完璧超人なかなかいねえよなあ」

「何したらあんな風になれるんだ」

校門をくぐるだけでこの反応。侑李(ゆうり)は特に考え込むことなく、「おはよう」と一言言って校舎に入って行く。

ベタ褒めされても決して舞い上がったりしない、性格まで良い男だ。

「よぉ侑李、昨日は何人に告白されたんだ?」

彼の親友である武都美(むつみ)彦介(ひこすけ)がニヤつきながら聞くと、侑李は営業スマイルの遥か上をいく笑顔で、コメントひとつなく去っていった。

「ほんとカッケェな、あいつは」


別に何を食べたから、何を飲んだから、完璧超人になれたわけではない。そもそも自覚すらない。自分が完璧であることは、本人が一番理解できないプロブレムである。

「あっ室浜(むろはま)先生、こんにちは」

「おう、飯沼か」

体育教師というものは少しばかり怖いイメージがあるが、室浜は怖いどころか優しすぎる。いつもにこやかに話し、生徒同士の喧嘩も平和的にお互いをなだめることができる。

もし体育教師になるのだったら、この人を見習うべきだというくらい、理想像をそのまま人間にしたようなものだ。

「次の体育って何やるんですか?」

走るのだけはやめてほしい。そう侑李は願った。

「サッカーさ、楽しみにしてなっ」

嬉しそうに答える室浜を見て、侑李もつられて嬉しくなった。

…と同時に、ほっとした。


ひそひそと話し声が聞こえる。通りかかった彦介は、どうせまた侑李へのヒガミやらなんやらだろうと気にしないでいた。

(そりゃ完璧超人なんだし妬まれもするわな、どうせ聞いても意味ないや)


彦介にとって、一つだけ不審なことがあった。それはひそひそ話しているメンバーの中に、クラスメイトの丸山(まるやま)久美子(くみこ)がいたことだ。

彼女は根っからの不良で、染髪禁止のこの学校において唯一の金髪。

さらに、室浜以外の教師を全員屈服させ奴隷扱いしている。

「あたしさ、…が…」

少し遠くにいた彦介には、耳を澄ましてもその内容は聞こえなかった。


4時間目が終わる。そして1時間の幸福、昼休みが始まる。

「どこで食べるー?学食?外のサイゼ?」

ちょいワル女子達の外食計画や、

「俺彼女と食べるから、ごめんな」

リア充男子が非リア充男子と差を見せつける場面。

「やっべえレポート忘れてたあ!!!!」

こちらでは必死の形相で教室を飛び出していく男子。


どれも日常で、平和的。


侑李は弁当を机に出して食べ始める。今日の弁当は、牛丼だ。侑李のお気に入り。

「飯沼くん、これ食べて!」

不意に机にクッキーを置いていったのは、クラスメイトの草野(くさの)万実(まみ)。侑李と仲はいいが、最近あまり話していなかった。

顔を赤らめながら自分の席に戻る万実を見て、鈍感な侑李は何も思わなかった。


これが飯沼侑李という高校2年生と、その周りで起きる些細な出来事を含めた日常。




6時間目の授業が終わった。帰り支度をさっさと済ませ彦介と帰ろうとした侑李は、教員室に寄る用事を見つけ校舎の1階に行こうとした。

そして、2階を通った時だった。




「やめて、、、嫌…それだけは…ヒギィィィィィィィィィァァゥェェェッ」


放課後のとある教室に、女の悲鳴が響いた。


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