第1章~謎の奇病~
西暦20XX年、日本だけではなく世界中が奇妙な病に関心が持ち上がっている。その病気の患者は眠ったまま起きてこないのだ。どれだけ大きな声で呼びかけても体をゆすっても目を覚ますことはない。特に問題なのは一人暮らしの人々で眠ったまま衰弱死してしまう例も多数報告されている。世界中の科学者たちがこの奇病の正体を突き止めようとしているが正体は現在を持っても不明である。中には宇宙人による地球侵略説まで出てくる始末である。今までこの病気にかかって目を覚ました人は報告されておらず、人々は睡眠に恐怖を覚え慢性的な不眠も社会問題となっている。それは大人たちだけでなく子供たちにも影響を与えている。
「ふぁああ、ほんと、毎日眠くて眠くてしょうがねえ。」
高校2年生の平山隆は隣に座っている永山に愚痴をこぼす。
「平山、やっぱお前も目覚ましかけているのか?」
この奇病の対策として巷では1時間おきに目覚ましを鳴らすということが流行っている。
効果のほうは不明であるが睡眠を細切れにすることで奇病にかかるリスクを減らそうということらしい。平山たちもそれを行っているため熟睡することができず平山たちは慢性的な不眠に悩まされているのであった。
「ああ、母ちゃんがうるさくてさ、起きなくなるぐらいなら寝不足のほうがまだましだって。」
そういって平山はまた一つ大きな欠伸をする。
「俺は、毎晩彼女が眠らせてくれなくて」
「永山、嘘はばれない範囲でつけや」
平山はそういって永山を小突く。
「冗談、冗談。そういえば女つながりで思い出したけど噂のスーパーヒロインはこの頃出てこないけど、どうしたんだろうな」
噂のスーパーヒロインとは奇病とともに世間をにぎわしている話題である。奇病が発生したころとほぼ同時に謎の破壊現象が見られるようになった。見た目は影が立体化したような感じの正体不明の存在である。この正体不明の影はどことなく現れ、建物を破壊して回るのである。大きさは人間大から10メートルぐらいのものと定かではない。そのためこの奇病は宇宙人による仕業ではないかという説がまことしやかにささやかれるのである。政府は自衛隊に影の掃討を命令したが銃弾は影の体をすり抜けてしまい対処しようがなかった。そんな中、その影を倒しているのが噂のスーパーヒロインなのである。彼女は金髪でポニーテールであり、ピンクを基調としたコスチュームを身にまといフリルのついたミニスカートをはいている。腰の部分には大きなリボンをつけている。そしてその影と戦うのである。
影には現代兵器は通用しないが何故か彼女の攻撃は通じるようで、彼女は影を殴り飛ばし時には思いっきり地面にたたきつける。そして最後には必殺技を繰り出して影を消滅させてしまうのである。彼女が世間に注目されるのはその強さだけではなく、アイドル顔負けの可愛さである。そのキュートなルックスと強さのギャップが世の男性陣だけでなく女性陣もメロメロだった。平山達も同様だった。
「確かにこの頃見ないな。やっぱ一人じゃ大変なんじゃない。疲れて休んでんだよ、きっと」
平山は永山にそう答える。
「そうだよな、きっと今頃仲間を探しているのかもな」
永山はそういってからからと笑う。
「じゃあ、また明日な」
平山は永山にそう言って最寄りの駅を降りた。
「ただいま」
「お帰りなさい」
いつも通りのいつものあいさつで平山は帰宅についた。そしていつも通り、夕食を済ませ宿題を片付けると、いつも通りに一時間ごとになる目覚ましをセットする。
すると、自室のドア越しから
「たかし、ちゃんと目覚ましセットしたでしょうね!」
いつも通りの母親の小言がする。
「したよ、心配しすぎなんだよ!」
と少しいらいらしたように平山は答える。
「まったく、言い方ってものがあるでしょうに」
と、母親はぶつくさ言ってリビングに向かう。平山はベッドに入り眠りにつく。そして一時間後に目覚ましでたたき起こされるはずだった。