プロローグ
2016年 夏 北海道札幌市 深夜
南区に住む青年、大市礼人のスマートフォンから大きな警告音が鳴り響いた。
明日も仕事だし、もう遅いから寝るか、と思って布団に入った直後である。
スマートフォンは充電のため専用デッキに設置したままである。ベッドからスマートフォンまでは少し距離がある。
(なんだろう?地震か?でも北海道だし、そんな大きなものじゃないだろう。)
いちいちスマートフォンを確認するために電気付け直して歩くのも億劫だし。そう思って警告を無視し、そのまま布団に潜り込もうとした瞬間。
大きな揺れが礼人と襲った。
(ま、マジかよ!なんだよこの揺れは!)
それは礼人がまだ体験もしていないような揺れだった。
その揺れは、本来の地震ならば数秒、長くても数十秒で収まるものの、今回の揺れは一分以上も揺れが続いた。
ようやく揺れが収まった、とすぐに礼人はテレビの電源を入れた。地震速報を確認するためである。
放送から流れてくる内容に礼人は耳を疑った。
地震の揺れの規模を表す震度は札幌市南区震度7。
だが、驚いたのはそれではない。
全国規模で震度7だと報じられていたのである。
「まじかよ・・・。」
礼人は一人暮らしであるにもかかわらず、思わず口にしてしまった。
津波の情報はまだ入ってきていない。これだけの規模だ。津波が発生していてもおかしくは無い。しかし、札幌市は海から離れた場所にある。ましては南区は山に囲まれた場所である。日本国民としては心配ではあるが、今すぐに自分に危険が及ぶわけではない。
(明日のニュースで確認すれば良いか。)
そう思って礼人は眠りに落ちた。
この地震が、全ての始まりであると言うことを知らずに。