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湊がみんなと奏でるストーリー  作者: 輝晒 正流
第二話 新米女子は新しい友達をつくる
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新米女子は新しい友達をつくる の 2

 始業式の日には、クラスの委員の選出が行われた。

 湊は身体の状態のために、委員があたることはなかった。

 この前一緒に帰った中では、理沙が保健委員に名乗りをあげていた。

 委員長は女子が水城聡美、男子は湊の隣、つまり廊下側から二列目の一番前の席の元木翔があたった。入学式の日に湊が通りやすいように机を動かしてくれた彼だ。

 「みんな! 学業はもちろん、学校生活をすばらしいものにして、いい思い出を作るために、一緒にがんばりましょう」

 他の人の「よろしく」とだけ言うのと違い、聡美の就任の挨拶がとても特徴的だった。


 全委員が決まった後、少しの自由時間があった。

 ほぼ全員が席を立ち、トイレに行ったり、友達との談笑を始める。

 千穂もトイレに行くのか、どうかは分からないが、湊の前を通り教室を出て行こうとする。

 通り過ぎざま湊に小声で声を掛ける。

 「スカート、乱れてるよ」

 湊が自分のスカートに目をやると、ずり上がってしまって、お尻の下でくしゃくしゃになっている。

 慌てて直して、お礼を言おうとすると、千穂はもういなかった。


 この日は、体育館の床に自由に座って見学というリラックスした状態で、各クラブの紹介が一斉に行われた。

 男子たちは胡坐をかいている者がほとんどだが、それに倣うわけにもいかず、湊は女子たちの多数派を占める三角座りをしようとしてやめた。どう考えてもパンツが丸見えだと思えたからだ。スカートを膝裏まで持ち上げたりとかの見られない方法を知っていたならそうしていたかもしれないが、女子初心者の湊は、そんな技は持ち合わせていなかった。仕方なく、横座りをすることにした。

 湊の隣には理沙たちがいる。理沙と恵は三角座りで、有紀は横座りだ。とくに恵は手を後ろについてリラックスした座り方をして、前から見ればパンツが丸見えだ。

 湊は女の子の仕草の先生として、有紀を選ぶことにした。

 ところで、この学校は必ずどこかのクラブか生徒会委員に所属しなければならない規則になっている。

 クラブ紹介の初っ端が、前期生徒会役員選挙の案内からと、まるでそれが一つのクラブ活動のような扱いになっているのを、湊はユニークだなと見ていた。

 司会進行は、生徒会事務員という選挙でなく自分で希望して入るという生徒会委員らしい。まさしくクラブ活動と同じだなと湊は感じた。

 各部の紹介は時間の関係で準備と撤収も含めて二分以内での発表に決められているようで、入れ替わりの手際のよさも、見所のひとつとなっている。

 まじめな活動内容発表のクラブや、活動とは関係ない寸劇で笑いをとるクラブ、単に仲のよさだけを強調するクラブといろいろだ。

 しかし、あまりに連続で見せられるから、途中どんなクラブがあったか、みんなよく分からなくなっていた。

 「どこか決めた?」

 恵が誰にともなく聞く。

 「やってみたいことが多すぎてまだ」

 有紀が答える。

 「実際の活動を見てみないと、決め手に欠けるわよね」

 「運動部はできそうにないし、読書部やパソコン部なんてじっとしているのはリハビリにならないし」

 「できることをするんじゃなくて、やりたいことをするのがクラブ活動じゃないかしら」

 割り込んできたのは、委員長水城聡美だ。

 「そ、そうですね」

 勢いに押されて湊はそう答える。が、確かにそうだなと思った。

 いずれ回復して、普通に動けるようになれば、つまらないクラブに入ったことを後悔するかもしれない。

 委員長のいう学校生活を素晴らしいものに、いい思い出を作るには、やりたいことを選ばなければと、そう思った。


 ホームルームが始まる前、担任の先生が来るのを待つ時間、湊は自分の席でクラスメイトを観察していた。

 時々、スカートが乱れていないか注意する。

 理沙と恵と数人の女子が有紀の席で話をしている。

 和田肇は教室の後ろの方で、男子たちのグループを作って騒がしいくらいにしている。

 元木翔は隣の席で、数人の男子たちと話をしている。湊も話に入ろうかと思うが、全く知らないバラエティ番組の話題で盛り上がっているので躊躇っていた。

 辰見千穂は、さっきまで女子のグループと話をしていたが、今は窓際の男子の二人組みと話をしている。

 湊が千穂の方を眺めていると、彼女と目が合った。

 男子二人との会話を切り上げると、千穂は湊のところへやってきた。

 「歳が違うっていうのは、やっぱ、話しかけにくいよね。三沢さんの方から話しかけないと、一人ぼっちになっちゃうよ」

 少し心配そうに声を掛ける。

 「そうだね」

 肩を落とす湊。

 「ところで、スカート気にしすぎ。そんなにしょっちゅう確かめなくても…… スカート嫌いで穿き慣れてないんでしょ」

 「そ、そんなところかな」

 「それから、窓際の男子二人ボクっ娘萌えだから気をつけて、って言おうと思ったけど、かわいくないから萌えないだって。オタク顔してほんと失礼なやつら」

 自分が男子からの値踏みの対象になって、へんな気分だった。

 かわいくないと言われて腹を立てるのは違う気がするし、見返してやろうとするのも違う気がした。

 「一応気をつけるよ」

 引きつった笑いを添えて、湊はそう返事をした。

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