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湊がみんなと奏でるストーリー  作者: 輝晒 正流
第二話 新米女子は新しい友達をつくる
8/73

新米女子は新しい友達をつくる の 1

 駅まではそんなに遠くはなかった。事故に遭う前の浩太郎なら、歩いて十五分ほどの距離だ。

 でも今は三十分以上かかる。

 ゆっくり歩いてもらうみんなに、湊は申し訳ないという気持だった。

 楽しげに話す三人に、湊は相槌だけを繰り返していた。

 「三沢さんも、何か言ってよ」

 好きなテレビ番組の話だ。

 「えっ…… あまりテレビは見ないし。特にドラマなんて」

 「そうなの? 歌番組とかは?」

 驚いて尋ねたのは有紀だ。

 「わかったアニメ派でしょ」

 恵が茶化すように言う。

 「アニメも見ない…… 妹が見てるのをたまに一緒に見ることはあるかな」

 「妹のせいにするんだぁ。素直にアニメが好きって言ってもいいのよ」

 「ホントだって、自分からは見ないよ」

 「そういうことにしておいてあげるわ、それにしても三沢さんって、声が低くてかっこいい。わたしってちょっとアニメ声じゃない? だから低い声って憧れるのよ」

 恵の言葉にドキッとする湊。声変わりはまだだったときに事故に遭ったので、野太い男子の声ではない。しかし女子らしい声でないのも確かだった。

 「あ、ありがとう」

 ばれないか内心ドキドキしながら、少し高めの声で応えた声は、上ずったみたいな声になってしまった。

 「ところでさぁ。三沢さんてどうしてこの高校選んだの? 家から遠いし、その体じゃ通学が大変じゃない」

 恵が尋ねる。

 「え……」

 真面目に答えたなら、中学の同級生に女子になった姿を見られたくなかったからとなる。しかし、今の湊にとってはまだ知られたくないことだった。

 「あ、言いたくなかったら答えなくていいのよ。ねぇ恵」

 理沙が湊の表情を読み取る。

 言いたくない理由となると、だいたいがいじめだ。そんなふうには思われたくなかった。

 「あの、その……前の同級生が先輩っていうのがいやだったからかな」

 とは言ったものの、同学年のことは確認していたが、上級生の進学状況は確認していない。多くはないと想像はできるが、いないとはいえなかった。

 「そっかぁ。そうよね」

 「相手にもよるかもしれないけどね。ちなみにわたしは、大学への進学率かな。入学のときの偏差値の割に、進学率がいいっていうことはしっかり教えてくれるっと思って」

 「それって、授業の密度が高くてたいへんってことじゃないの?」

 恵の言葉に、湊が指摘をする。

 「そうだったのかぁ。だまされたぁ」

 「ちなみにあたしは家から近いから」

 「有紀の家ってどの辺?」

 「さっき過ぎた」

 「近っ!」

 「じゃあどうして、帰らずについてくるの?」

 「理沙っ! あたしだけ、仲間外れにする気? だいたい学校と家との間には寄り道するところが何もないのよ。朝が楽かなって思ってたけど、帰りの楽しみがないなんて、大誤算だったわ」

 「ハハ」

 「三沢さん笑った」

 と有紀。

 「ごめん。なんかおかしくて」

 笑ったことで気を悪くしたのではと思い謝る。

 「良かった」

 安心した表情で、理沙が言った。

 湊はそれで気付いた。

 自分が今日の今まで、暗い表情しかしていなかったと。

 人一倍の緊張と不安で、笑顔なんて作れる余裕はなかったとはいえ、身体の状態に加えて、そんな表情だったから、理沙たちは心配しくれていたのだと。

 その後、他愛もない内容だったけど湊は積極的に話すようにした。表情も強張らせないように気をつけて。

 まもなく駅に到着し、湊はみんなに見送られて改札を通った。

 急に寂しさを感じた。

 リハビリに行こうとしていたのは間違いない。

 けど予約をしていたわけでもない。休んでも構わなかったのだ。

 今度誘われたら、少しだけ行ってみようかな。湊はそう思った。


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